2023年08月23日
下積みメタラーの闇 その1 【前編】
お盆も過ぎ、夏の甲子園も決勝を迎え、そしてツクツクボウシの鳴き声が聞こえ始めたここ最近。
それでも、未だ残暑厳しく、寝苦しい夜が続いておりますので、この場を借りて暑気払いを兼ねた昔語りを少々。
え~、拙ブログ、いつもどおり長文&虚実ない交ぜにしておりますので、そのあたり予めご了承ください。
さて、今をさかのぼることウン十年前、主神メタルゴッドに大学の単位を全て捧げ、卒業を生贄にし、仕送りを止められるのも厭わずに、全人生を掛けたバンド活動。
インディーズでCDは作るも、メジャーデビューまであと一つのところまで来て、教授のありがたくない心遣いにより本人の知らないところで大学を勝手に卒業させられ、そのまま地元への強制送還を受け、今に至るわけですが、以前のブログ『牛丼怖い』やらで何度か書いたとおり、とにかく、バンド、特にビジュアル系メタルバンドは機材だけでなく、衣装やらメイクやらで身銭を丸ごと吸い上げられ、レコーディング費用もプロ仕様なものですから、ライブのノルマと相まって、野獣先輩と一緒にビデオに出るか、臓器売ろうかレベルの困窮は日常茶飯事。
その上、留年して教授に「お客様」と呼ばれて以来、仕送りが止まって進退極まったメタラーは、学費&生きる糧も稼がなくてはならず、掛け持ちバイトは当たり前、当時の節約生活のバイブル『青春の食卓』のメニューすら贅沢に感じるほどの食生活を送り、魚肉ソーセージをふやかして何回かに分けて食べ、米農家のツレの下宿に上がり込んで白米にありつき、バイトの賄いや廃棄食材はこっそりと持ち帰り、何も食べるものがない時には白い恋人『クリープ』をちびちび舐めて空腹を紛らわせていたのでした。
家庭教師先で、たまに御相伴に預かるのがありがたく、銀河鉄道999の終着駅とも、自我の墓標とも名高い、ヤマ〇キパンの深夜バイトやら、ここではとても書けない短期バイトをこなしつつ糊口をしのぎ、プラチナ・ディスクを夢見ておりますと、時々、音楽関係のバイトもあったりもしたのです。
その中から、ちょっとした『闇』を今回ご紹介。
当時、人気絶頂だった某男性アイドルグループの一人、アイドルAとしておきましょうか。その彼がドラムを習っておりまして、ライブをやりたいのでメンバーを探していると、当時、別の芸能事務所に所属していた友人が耳にし、「どうする?」と聞かれたため、「やる、絶対に!!」と食い気味に返事をしたところ、ギタリストとして私に白羽の矢が立ったのでした。
早速、オーディションを受け、結果、合格。
秘密を守るよう云々の誓約書に署名させられた後に、ギャラ、セットリスト、衣装、立ち位置、音色などなど、一方的に決められ、スタジオでリハを重ねること数回。
正直、ドラムの腕は素人に毛の生えたレベルながら、脇を固めるサポートメンバーがそこそこ凄腕だったこともあり、アイドルAの先生がバックステージのドラムセットでスタンバっていたため、パフォーマンスに不安なし。
ちなみに、ベースは当時、私とバンドを組んでいた、ジャコ・パストリアスばりの独特なスラップに加え、特殊な性癖も界隈では良く知られた変態さん。
それにしても、いつもスタジオには、どこかの雑誌で見たようなグラビアアイドルみたいなおにゃのこが代わる代わる遊びに来ており、終わった後、そのアイドルAとマネージャーにどこかに連れて行かれてたっけなぁ。多分、夜遅いので、お家に送っていったのでしょう(白目)
迎えた本番、会場は、今までやったことがないような、地方の公会堂レベルの大箱。
機材も一流どころ、PAも外タレかとおもうような布陣。
ギターは自分のものが許されたのですが、音色はとにかくシビアで、アンプやエフェクターの切り替えも完全にPA任せ。
ビビりまくったまま、最後のリハが終わり、本番までの間、
我々とは違い、当然、そのアイドルAには個室の楽屋があてがわれ、そこに出入りするのは、スタジオで目にしたグラビアアイドル達の他、見たこともあるタレントたちの姿。
そして外には、入場を待つ沢山の女性ファン達。
「やべぇぇぇぇ」と目が泳ぎ、自分の股間をぎゅっと握りしめ、絵に描いたような内股のままキョどるベースに、
「しっかりしろよ、ここで認められればメジャーデビューだってすぐだ、俺たちは絶対にやるんだ!!」
と言ってみたものの、言った傍から唇が震えてしまう。
その様子に、ゴリゴリのサポートミュージシャンで鳴らすキーボードが、
「いくら上手くやったとしても、それが当然なんだから、誰も俺たちのことなんて気にしないって。それよりもよぉ、アドリブとか、絶対に勝手なことをするなよ。特に今回のライブはな。」と少し険のある言い方をして、煙草に火をつけたのでした。
そんなこんなで2DAYSライブが始まり、会場は満員御礼、それぞれの立ち位置に先にスタンバって、ドラムが出てきたと同時に、地の底から湧き上がる様な黄色い歓声が押し寄せ、1曲目がスタート。
そもそも歌でもダンスでもリズム感のないアイドルAのドラムが、あまりにとっちらかって、それつられて演奏はボロボロ。
それでも、ファンは大盛り上がり。
2曲目以降はドラムが何とか立ち直り、ドラムの先生のバックアップもあって、まあまあ聴けるレベルにまで復活。
ちなみに、セットリストは、アイドルAの好きなものをただ演っているだけで、アニソン、80~90年代の洋楽ロック、プログレ、流行のバンドブームのヒットソングと脈絡なし。
このライブの主役は、アイドルAで我々は添え物。
ひたすら黒子に徹し、3曲目が終わろうとした時、団扇やら蛍光棒やらを振っている私の足元のステージのすぐ下付近の、ちょいとお年を召したお姉さま達の異様な雰囲気に気が付いたのでした。
特に向かって左手のB〇A、、、いや妙齢の方々が、私に向かって何やら大きな声で叫んでいらっしゃる。
最初、アイドルAの名前を連呼し、愛してるだのなんだの、キャーキャー楽しげだったのが、何故か殺気立った雰囲気に。
曲が終了し、次はアイドルAのMCへと移行する、その間際、ドスの効いた声で、
「おい、そこのお前!!!」とこちらに飛んでくる怒声。
さっきまであんなに乙女の嬌声が響いていたのに、空耳かと思って、キョロキョロしていると、
「そこ、ギターの、、、お前だよ。」
「そこに立ってたらよぁ、見えねえんだよ、どけ、ゴルァ!!」と巻き舌で怒鳴りつけられたじゃありませんか。
「〇すぞ、ボケ」
「さっさと消えろや。」
「わざわざ遠くから金払って、てめえ見に来たんじゃねえぞ。」などなど、その左側の列のお姉さま方から浴びせられる罵詈雑言の数々。
薄暗いライトの中、浮かびあがったお姉さま方の愛くるしいご尊顔は、地獄先生ぬ~べ~も裸足で逃げ出すバーサーカーのそれ。
どうしていいか分からず、思わず、キーボードの方を振り返ると、首を横に振るばかり。
それならと、4曲目が始まった同時に立ち位置から右側にずれてみると、今度は別のBB〇、、、ではなくお姉さまたちから、
「そこに立つな、戻れって。〇ね、バカ」と清々しいほど罵られ、じゃあと元に戻ると、先ほどのお姉さまたちから、
「ホント邪魔。」「埋められたいの?」「ゾンビみたいな顔してソロ弾いちゃって。」などなど、悪口の大絶唱。
結局、元の立ち位置のまま、曲の合間に何度か罵られながら、初日のライブは終了。
人生10回やり直しても余るぐらいのHateと殺人予告を頂戴したのでした。
ライブが終わった後、アイドルAは御満悦だったものの、彼のマネージャーから立ち位置を動いたことでめちゃくちゃ怒られ、キーボードからは、「な、言っただろ。」と吐き捨てるように言われる始末。
ちなみに、ベースも同じような目に遭って涙目になっておりました。
二日目も連荘で来ているファンも多くいたのか、超満員。
初日ほどではないものの、同じようにアイドルAへの愛に発熱狂したお姉さまたちから邪魔だどけだの厳しいお叱りを受け、講演は無事終了。
楽屋で帰り支度をする憔悴しきった私とベースに、件のキーボードは、「俺もさ、こういう家業を始めた時には、最初はチャンスだと思ったけど、夢なんてないんだよ。」と諭すように、70スープラの鍵をヒラつかせて出て行ったのでした。
え?これが闇なのかって??
いやいや、こんなのは闇でもなんでもございません。
本当の闇はここからなのです。
後編に続く。
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メタルギター | 日記
Posted at
2023/08/23 11:55:26
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