2016年05月31日
MM思想〜本田宗一郎氏のものづくり〜
壮大なタイトルですが、中身に期待しないで下さい。ただ単に気づいてこれかな?何て感じただけです。
何せ現体制を引っ張った張本人サマは退かれた訳で。
プレジデントでも叩かれた、魂を失った体制。
一度崩れると立て直すのは困難。しばらくは傍観でしょう。
とは言え、その前社長が反対したS660の現状を見れば、最早道を誤りはしないと。
色々あるようですけどね。
さてそれは壮大なタイトルの為に記事を引っ張って来た無駄な前置きでして。
宗一郎氏最後のクルマ、ビートを良く見て見たのですよ。
通説を抜きにして、所謂エンジンクーリングと吸排気レイアウトについて。
これはビートよりS660を先に見てるので、そちらとの比較なんですけどね。
S660ではエンジンルーム上面を覆うようなパイプレイアウトで、蓋を開けたらプラスチックと言う驚きにまず出会えますね。
エンジンも普通に直立。
形状的には、下面整流による負圧を、上面取り入れを利用して上手く抜くための構造。
積極的に空気の流れを作る今風の作りである事が解ります。
そして、運転席側から導入した空気を元に、運転席側のバルクヘッドそばにあるエアクリで吸気です。それをぐるっとまわして助手席側の導入によるきわめて小さなインタークーラーで冷却し、さらに後ろに回してインマニへという感じですよね?
エンジンの吸気・排気レイアウトだけはビートと同等ながら、エアクリが運転席側にあり、複雑な吸気回りをしてるのは前方排気の部分にあるタービンのせいなんでしょうねぇ。
さて、ビートはどうでしょうか。
助手席側のダクトからほぼまっすぐ真後ろのエアクリに向けてインダクションボックスが伸び、エアクリの後ろには巨大なボックスに隠れたマルチスロットル。
その後ろは短いインマニがエンジンにまっすぐ伸びています。きわめてレイアウトとしては単純で、効率が悪いとは思えません。
その上、わざわざ前方に倒したエンジンから伸びるエキマニは、まさに真下に向けて伸びているわけで。
やや干渉はあるものの、熱源になるエキマニはできる限り下面整流の流れで冷却されるような位置に持ってきています。
んまあ遮熱板を含め、実はエキマニは冷やしちゃいけないんですけどね。
いけないんですけど、あえて冷えるほうに持ってきます。
S660はエンジンを『倒せない』レイアウトになっているようにも思えますが、実はビートの場合はエンジンを倒さなければならなかった、のが本当なのではないかと。
エンジンを倒すことで、エキマニをできる限り走行風にさらし、キャビンへの熱害を低下させたかった……まあ、想像の範疇に過ぎません。
でも結果的にはほぼ直線的に吸気系を構築し、排気も無理のないレイアウトができるというきわめて合理的な構造。これはエンジンを前方に傾斜させることで生まれるのです。
もうひとつ。
この時代の車は、上からの空気の流入を考えていません。
EG6に代表されるグリルレスデザインの車が横行したのは、下面を流れる空気の流れで下に向かって空気をきれいに抜いてやろうという考えのものです。
当然ビートも下に向けて抜くつもりでデザインされています。
左右や下から無理に上に空気の流れを押し込むことはないのです。なくてもとりあえずどうにかなる設計だというべきでしょうか。必ずここはいじり始めると問題になるはず。
うちらみたいなただ乗る人にとっては、これは念頭におきたいところ。
で、なぜこんな話なのかというと、S660における構成はMM思想とはいえないのではないかと思ったためなのです。
人中心の考え方、マンマキシマム・メカミニマム思想、略してMM思想なのですが、『機械はきわめて効率よく。人は、最大限無理なく』というとこが本筋だと考えてまして、機械のエリアを小さくするために効率化を徹底するのは当然、人のための空間を無理なく無駄なく配置することも重要、といった時に、どうもS660は機械のための空間を使いすぎ、人に与えていないのではないかと。
翻ってビートは、先ほどのエンジン前方傾斜については、「重量を低重心化」するためではなく、「熱害をできる限りキャビンから離すため」であり、それが機械的に不利であってもそうしたのはこのMM思想からであろうと。
結果的にエンジン真上に当たる部分は、ティッシュの箱程度の深さではありますがかばん程度は置けるスペースを構築し、リアは本来なければいろいろできるはずなのに、あえて申し訳程度にトランクが設けられているのです。
設けなくてもいいんですよ。だって小型のスポーツカーなんですから。S660を見れば分かるとおりです。
いえ。そこをあえて設けたのです。設けなければならなかったのです。
そのための努力は惜しまなかった。
ビートはこの一台で、できる限り効率化された乗り物としてこの世に生まれ、ABCファミリーでは最も台数が生産され生き残っている数も圧倒的に多いのです。
愛されるには理由がある。
「あんた、いい仕事をしたね」
本田宗一郎氏がこんな言葉を残したには理由がある。
おそらく、軽自動車で間違いなくMM思想を、無理なレイアウトに見える車ながら、達成していたからこその言葉なのではないかと。
「なんで……」と思う場所の細やかな思いやりが、たぶんですが彼はきっと気に入ったのではないかと。
私はエンジンの前方傾斜は、重心を下げるためではなく、キャビン周辺の熱源を下に逃がしたかったから、と信じています。
最もまったくその意図は達成できていない気もするのですが(爆)まあそれはともかく。
もし垂直に立てていたら、もっと上まで熱が伝わるような状況になっていたでしょうね。
あとエキマニの遮熱板でもですが、やはりヒートバンテージは必須でしょうね。で、キャビン側にはビリオンのスーパーサーモヒートシールド、遮熱板はスーパーサーモクロスあたりで遮熱して、直接熱があたらないようにするのを考えたいところですかねぇ。
ちょっと思いついただけなんですが、長くなっちゃいました。
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Posted at
2016/05/31 22:17:22
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