トヨタの本当の凋落はこれからである
昨年3月にプリウスの値下げが決まって以来、週刊誌やマネー誌などで述べてきたことですが、シェア争いに身を投じたトヨタにとって、明るい未来はとても想像できません。
当時を振り返ると、プリウスはホンダのインサイトに対抗して、30万円も値下げがされました。このトヨタの決定からは、国内のハイブリッドカー市場において、利益を減らしてでもシェアを獲得しようという強い意思が感じられました。つまり、その時からトヨタはホンダと同じ低価格路線に踏み込んだわけです。
結果、プリウスはエコカー減税の追い風にも乗り、空前の受注を得ていますが、この戦略は間違っていると思われます。目先1年、2年だけを考えれば良い結果を出せるでしょうが、長期的な戦略として見た場合、トヨタを凋落させる原因になると容易に推測できるからです。
人口が減少していく日本では、車を買う人の数が限られてくる以上、「薄く広く」という戦略ではどう考えても将来が苦しくなっていきます。プリウスが売れれば売れるほど、トヨタは自らの首を絞めていることを、将来の成長を捨て去ってしまっていることを理解しているのでしょうか。
価格戦略の基本は「富裕層には高いものを売る」ことですが、トヨタはマークXやクラウンハイブリッドなど上級車でも値下げをしました。レクサスでも廉価車であるHSを出しましたが、他のレクサス車から乗り換えられたら、それだけでも1台当たりの利益が大きく減ることを意味します。
深刻な問題は、プリウスが「地球に優しい車」の代名詞になりすぎて、富裕層の意識が変わってきている点です。富裕層によるハイブリッド車の人気調査でも、プリウスがレクサスLSハイブリッドを大きく引き離してダントツの1位をキープしています。
豊田章男社長は就任以来、低価格路線を推し進めてきましたが、ブランド価値を棄損してまでシェア争いに身を投じて行くことにトヨタの未来がないことを、私はずっと指摘してきました。最近のリコール問題に関して、対応の遅さや説明不足ばかりが批判されていますが、トヨタの本当の凋落は低価格路線の先にこそあるのです。
価格を下げることで、熟練工の中にはプライドが傷つけられ、モチベーションが下がる人がいるかもしれません。値下げ圧力は下請け会社や部品会社にもかかるので、品質管理に問題が出るかもしれないし、不良部品が出てくる可能性も高まってくるでしょう。
トヨタの社長自身が「トヨタの強み」を理解していないのは、トヨタの不幸といえるでしょう。ホンダはカジュアルなブランドですから、低価格化を売りにしても良いでしょう。スズキはそもそも高級車とは縁遠く、低価格路線でインドへ進出して大成功しました。ホンダもスズキも「自社の強み」を生かす選択をしています。
トヨタの強みは「品質」と「ブランド」であったはずです。それを捨ててまで低価格路線に進む先には、今回のリコール問題の比にはならない本当の凋落が待っているように思えてなりません。
次回は、メディアでは語られていないリコール問題の真実について述べる予定です。
フォレスト出版からレアメタル業界の第一人者・中村繁夫氏との対談CDが発売されます。中村氏は「現代の山師」として、「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」にも出演されています。
中原圭介
2月27日(土)13時08分配信
サーチナ
エコノミストから見たトヨタです。
シェア確保に注力するがために、自らブランドを押し下げるトヨタを嘆いています。日本経済を牽引し、日本の株価動向を予測するにはトヨタを見ていればいい。とも言われています。
日本本国での生産が成り立たず、輸出主要産業が生産拠点を海外に移して久しいわけですが、日本のお家芸であったはずの「職人技」までもがその他のノウハウとともに海外へ流出していることは、円高という重しがある以上仕方のないことかも知れません。いや、もしかして現地生産では「職人技」をあえて忌避しているために、いろんな問題が生じているのかもしれません。
またホンダの中国生産拠点では、現地の部品供給がストライキで止まっているといった弊害も出てきています。
世界は、ギリシヤ・ショック、ヨーロッパの経済危機にいま目を向けています。リーマン・ショックは100年に一度であるなら、ギリシヤ・ショックに端を発したヨーロッパ・ショックは200年に一度の世界恐慌の始まりかもしれません。
だからこそ、ホンダファンでありながらトヨタには至高の位置にいてもらいたいのです。
Posted at 2010/05/27 23:06:04 | |
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