
先日、新型「フィールダー」を試乗してきました。
そのときの感覚的な印象とカタログ上の客観的な数値を照らし合わせながら「カリブ」との比較をしてみました。忘れないうちに、ということで。
まず、全長、全幅、全高はほぼ同じでなので、車自体のサイズはまったく同じと言っていいでしょう。
しかし、ホイールベースが+135mmと大きく変化しました。これが「リヤシート~サイドミラー間」の寸法に影響し、室内が+85mm広がっています。
室内高はどちらも1200mmと全く同じなので、室内が+85mm広がった「フィールダー」が優位です。
またフロントガラスをボンネット方向へ傾斜させているので、さらに広く感じます。
「フィールダー」の運転席の室内面積が広くなったことは上の寸法図の比較でもよく分ります。
しかし実際に試乗してみると、室内空間が広くなったという実感はほとんどありませんでした。
理由を考えてみると、座席の高さそのものが上がったため、足元のスペースは広がりましたが、相対的に「ヘッドクリアランス」はそのままなので、視覚的には直接広いという感覚が生じないのでしょう。ボンネットも高くなりましたし、フロントガラスは前方に伸びても効果はさほどでもないようです。
座席が上がったことで視点が高くなり、前方の視界が見やすくなったのかもしれませんが、「カリブ」のヘッドクリアランスが大きくてボンネットが低いというのも未だに魅力的なのです。
ここは「カリブ」ならではのハイルーフがしっかりと生きています。
運転席に関しては、ほぼ同じような室内の広さで、視点・座席の高さは好みで、頭上が広いか、足元が広いかの違いだと感じました。
室内の広さという部分に関しては、乗り換えるメリットは特に感じませんでした。
「フィールダー」はボディサイズがダウンサイジングし、「カリブ」と同じ大きさに戻った形になりましたが、個人的には元々サイズ的にはこれぐらいが丁度いいと思っています。
トヨタも「5ナンバーサイズの車としての意味」を再認識したのでしょうか。
現在「カリブ」に乗っていて特に気に入っているのが「バックドア」を中心とした荷室の使いやすさなのですが、残念ながら「フィールダー」の荷室とバックドアは「カリブ」ほどの魅力はありませんでした。
まず、開口部の最大高「e」が「カリブ」より-80mm低い。しかも荷室床がフラットではなく傾斜しています。当然、「カリブ」の荷室高880㎜は満たしていないでしょう。
荷室の総面積よりも、「開口部の広さ」「荷室の高さ」「フラットな床」を重視しますので、個人的にはここが致命的な弱点です。
「ワンタッチでシートが倒せる」メリットよりも、「床がフラットにならず傾斜し、荷室が狭くなる」デメリットの方が圧倒的に大きいと感じるのですが。
荷室というのは「ワゴン」としての存在意義に関わる重要な場所に思えるのですが・・・
一般のニーズは「フラットな荷室」より「ワンタッチなシート」なのでしょうか?
「レガシー」も「ゴルフワゴン」も新型はワンタッチ&傾斜のフラットにならない荷室なので、これが主流になっているようですね。
この「フィールダー」の荷室はカタログで見るとこんな感じで目立ちませんが↑
実は、傾斜が目立たないように後部を上げた「尻上がり」の状態写真なのですよ。
よく見ると分かりますが、「カタログ」の写真は“本当に見せるのが上手”だと感心します。
この荷室の傾斜が分かりやすい写真がこれです↓(アクセサリー&カスタマイズ カタログ)
実際のカタログにも傾斜のことが記載してありました。
「若干」というにはやや気になりますし、「フラット」という表現にも“抵抗”があります。
個人差もあるので、フラットの傾斜がどれくらいかは実際に見てみるのが一番でしょう。
ただ、「カリブ」の広い開口部と完全フラットな広い荷室に慣れてしまい、同等の荷室を自然と期待していたので本当にがっかりしました。
荷室を見終わった時点で、「フィールダー」が欲しいという気持ちはほとんど無くなりました。
ワゴンに乗るからには、荷室は「カリブ」と同等以上を期待しますので、正直「フィールダー」には魅力を感じません。
ズバリ理想的な荷室は「プロボックス」や「サクシード」です。ボディデザインも好きなのですが、やはりビジネスカーのバンなので、乗用車としては満足できそうもないのが残念です。
基本的に営業車なのでしかたがないですが、「パッケージング」はとても理想的な車ですね。
それ以外の不満、「4WDがAWDではない」、「4WDに1.8Lエンジンがない」「CVT」「電動パワステ」、これらは妥協できる可能性も十分あったのですが、荷室に関しては全く譲れない部分なのです。
新型「フィールダー」には新型車ならではの「燃費の良さ」「安全装備の充実」「洗練された流行のデザイン」「新車の気持ちよさ」など魅力的な部分があります。しかし自分のとってこれらはあまり重要な要素ではなく、総合的に比較・検討すると、乗り換えるメリットはあまり感じないのですよ。
「『カリブ』の方が使い勝手がよさそう」「ローン組んでも欲しいという魅力に乏しい」
というのが本音です。
しばらくは「AT」「油圧パワステ」は高級車に乗らない限り使う機会は少ないのかもしれません。
「CVT」「電動パワステ」の普及率は予想以上に早く、「スバル」でさえ「油圧パワステ」は「STI」のみという現状には驚きました。
「AT」「油圧パワステ」「AWD」が今では本当に貴重になりつつあり、「カリブ」に限らず、“この時代”の車を修理して乗り続ける意味は十分あるのかもしれません。
※参考資料 トヨタ 新型「フィールダー」カタログ トヨタ 「スプリンターカリブ」カタログ