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第1章 刀を狩るモノ 7
天下五剣相スル時、互イノ刀ノ中ニ宿リシ刀神共鳴セリ
天下五剣について、歴史上の史書には具体的な明記はされていない。
五剣のうち4つは平安時代に作られたモノでもう1つが鎌倉時代に作られた刀である。
それぞれの刀が完成した経緯は違えど過去に1度だけこの五剣が一同に会した時があった。
それは戦国時代、とある著名人から五剣のうちの一剣を譲り受けたこれまた著名人がいた。
譲った本人は知らなかったのだが、譲られた側は五剣のうち四剣をすでに持っていた。
その時、天下五剣は1人の元に集約される! その人物とは…
徳川家康
そして譲った側の人物は…
豊臣秀吉
さて、刀が譲られたその経緯とは?
時は今から400年以上前の1582年に遡る。
この時、日本は言わずと知れた戦国時代、しかも織田信長が明智光秀の謀反で自害し
その明智光秀が豊臣秀吉に滅ぼされた年でもある。
この時から時代の中心は豊臣秀吉になるのだが、まだ戦国時代の世の中にあって豊臣秀吉を
主とするのを良しと思わない者も当然いた。
その1人「柴田勝家」が豊臣秀吉に歯向かった戦いが【賤ヶ岳の戦い】であった。
翌年、更に信長の次男・織田信雄の宣戦布告を機に起こった【小牧・長久手の戦い】が
起こるのだが、この時の豊臣秀吉の相手が実質徳川家康出会った事は歴史に詳しい方は
よくご存じだろう。
そして、この戦いは戦の元の張本人・織田信雄と豊臣秀吉の講和で大義名分がなくなるのだが
その気になれば戦況が優位だった徳川家康がその後も戦いを継続する事も可能だった。
だが、ここでは徳川家康はあっさり兵を引いた。
豊臣秀吉としても、その時の戦況は不利でも負ける気はしてなかったそうだ。
だが、戦いが長引く事は良しと思ってなかったので、信雄との講和を極秘裏で進めたのだった。
徳川家康が兵を引いてくれた事でこの戦いが終わる事が出来、その後豊臣秀吉が四国攻めや
紀州攻めの大義名分も出来た。将来強敵になるのは確かだが、一旦その身を下げてくれた
徳川家康に敬意と感謝の意をこめて送られた土産の中に『
鬼丸』があったと言われている。
徳川家康の元にはすでに五剣のうち四剣があった。そして、この時豊臣秀吉から贈答された
『鬼丸』を得る事で五剣すべてが揃う事になる。
そして、その五剣は将来徳川家が日本を統べる時、日本と徳川家を守るべく作られた
【
日光東照宮】の前身である
輪王寺に祀られ、徳川家を守る「守り刀」としても
成してすれる願いも込められていた。その祀られていた間に神が宿った、と言う伝説がある。
だが、その伝説は本物だったのだ!
実際、五剣には神が宿っていた。その姿を我々に見せてくれるかどうかは分からないが、
互いの剣が接近する時、刀同志が共鳴するのであった。
「共鳴する話を聞いていたが、我が身体に五剣のうちの一つがある為、身体が共鳴に反応して
影響を与えてるのか…。」
激痛に耐えながら、恭介は激痛の原因や刀の生い立ち等の考えをまとめていく。
幸い、その激痛は段々と収まっていく。
「この場面に都歌沙がいなくてよかったよ。」
心底そう思う恭介であった。
「おまたせ~、お兄ちゃん。♥」
「何か変な事とかしてないわよね?」
痛みがひと段落した頃、都歌沙と香織が一緒に応接室に戻ってきた。
「おい、こら。戻って早々変な事してないか?って、お前が変な事言ってるじゃないか。」
変な事って何だよ!?って気もしたが、とりあえず普通に返しを入れる。
「何言ってるのよ、変な事する人に変な事するなと言っても無駄だけど、変な事をしそうにない
人に変な事するな、と言えば言葉に意味があるでしょ?」
ん~と、いい事言うなぁ、って返しでいいのか?
「あははは、おもしろ~い。」
その2人のやりとりが香織にはバカウケなようだ。w
「都歌沙、妹に笑われてるぞ。」
「はぁ!? 三千里クンが笑われてるのよ。」
「いや、んな事はない。君が笑いの元だよ。この妹さんは人を見る目がある。うんうん。」
「ちょっと、何で私が笑われる元なのよ!?」
都歌沙が怒りで立ち上がる。
「まあまあ、お姉ちゃん。恭介さんも悪気があって言ってる訳じゃないんだから~」
(いや、妹さんよ。さっきの言葉に悪気が入ってた、すまん)
「…まあいいわ。」
血の気が高い都歌沙も、どうやら妹には甘いようだ。w
「じゃ、お茶にしましょう。」
妹の一言で、やっとお茶の時間を迎える。
「ねぇ、このお菓子売り物?」
恭介が都歌沙に尋ねる。
「いえ、妹が作ったお菓子よ。」
「へぇ、そうなんだ。ねえ、香織ちゃん、これ何てお菓子?ふわふわだけど…」
「ええ、これは『
ふわふわクイム』って言うパウンドケーキの一種よ。」
「ふ~ん、そうなんだ。香織ちゃん、上手だね~。」
「えへ、ありかとうお兄ちゃん。♥」
(う~ん、可愛いなぁ香織ちゃん)
そう思う恭介であったが、それにしても姉のおてんばっぷりと比べて姉妹なのに違いが
多いんだなぁ、っていう考えもあった。
その考えを確認すべく都歌沙に尋ねてみる。
「なあ、都歌沙?」
「何よ?」
「香織ちゃんって二卵性双生児?」
ガツン!
その返事は、都歌沙の豪快な右ストレートでの返事であった。
「あいたたた、何で殴るんだよ!?」
「三千里クンがその質問をするときの顔が不愉快だったから!」
「二卵性双生児か?って聞いただけで殴られる理由がわからん。」
「あんた、アホの子!? 二卵性双生児ってのは双子の時に使う言葉で姉妹に使う言葉じゃ
ないの。しかも、あんたのニヤけた顔から何でその質問に至ったかが想像出来たからよ!」
「え!?」
どうやら、恭介の下心入りの質問に都歌沙が気付いたようだ。w
「お兄ちゃん、おもしろ~い。」
「い、いや、そういう意味で言ったんじゃないんだけどなぁ…」
痛い思いはしたものの、その後は和気あいあいな雰囲気で時間が過ぎる。
そして、いつの間にか日が暮れようとしていた。
「あ、いかんいかん。もうこんな時間か。そろそろ帰んなきゃ。」
「そうなんだ。うちもそろそろお父さん帰ってくるし…」
「あ!?」
その瞬間、都歌沙がガバッと立ち上がる。
「ん、どうしたんだ都歌沙?」
「ヤバイ、お父さんが帰って来る前にとっとと帰って!」
「え、何で?」
「何でもいいから、さっさと帰って。」
「んもう、何だよ~。」
そそくさと玄関に押し返される恭介。
「な、なあ1つだけ聞いていいかい?」
「なによ、時間がないのに…さっさと言って。」
「応接室にあった刀って、誰の?」
恭介は天下五剣の1刀がなぜ都歌沙の家にあったかそれが気になっていたので
聞こうとしてたのだが、タイミングを逸していた。そこで、無理矢理だが、ここで質問したのだった。
だが、意外にも答えはあっさりだった。
「さあ、私知らない。」
「え、そうなの?」
「ええ、確かに応接室に刀があるのは知ってたわ。でもそれについてお父様から何か聞いたと
いう事がないから知らないの。」
「え、でも刀が家にあったら普通何か聞かない?」
「普通は聞かないわよ。それを聞くあんたの方がおかしいわよ。」
「…。」
都歌沙が刀について何も知らないのは、おそらく本当の事だろう。
(それにしても、なぜあの刀がこの家に…)
その疑問が頭をよぎってはいたが、どうやら今日はその問題が解決しそうにないなぁ、と
思わざるを得ないようだった。
(また来てみよう)
残念だが仕方ない結論であった。
都歌沙に押されて玄関にまでやってきた2人。
「さっさと靴履いて。」
「はいはい。」
せかされながら靴を履く恭介。
そして、靴を履き玄関を開けて外に出ようとした瞬間、おもむろに玄関が開く。
ガラガラガラッ
「ただいま~。」
戸が開いた先に中年らしき大人の人が立っていた。
「お、お父さん!?」
恭介と都歌沙のお父さんは見事鉢合わせとなった。
-つづく-