
ここ数日間の私のブログは、タイヤに関する記事が続いています。
本年タイヤ業界では、ビッグニュースが二つ流れました。ひとつは「中国化工集団(ケムチャイナ)がピレリを71億ユーロ(約9,300億円)で買収」、二つめは「住友ゴム工業(SRI)とグッドイヤーのアライアンス契約および合弁事業の解消」です。
タイトル画像は
米Tire Business誌から拝借しました。
【欧州市場での各ブランドの格付け】
欧州市場でプレミアムブランドと呼ばれているのは、Bridgestone、Continental、Dunlop、Goodyear、Michelin、Pirelli の6つ(アルファベット順)です。
一方で、BFGoodrich、Falken、Firestone、Hankook、Kumho、Nexen、Toyo、Uniroyal、Yokohama 等はミッドレンジブランドという格付けです。ブリヂストン以外の日系3社及び韓国の3社はこのポジションです。
さらに、Achilles、Federal、Maxxis、Nankang、Nitto 等はエコノミーブランドという格付けです。
【ブリヂストンと住友ゴム工業 ー 明暗を分けたのは】
ブリヂストンが業界トップの売上高を誇ることはよく知られていても、米国発祥の Firestone を掌中に収めていることを知る方は少ないかもしれません。余談ですが、BFGoodrich と Uniroyal はミシュランの傘下です。
業界通の方の話では、「ブリヂストンによる 米FIRESTONE の買収は1984年の住友ゴム工業の DUNLOP 買収に刺激を受け、危機意識から生じた。ブリヂストンは危機感をバネに1988年に買収に乗り出し、買収後におきた数々の苦難を乗り越えた末、業界トップの座をつかんだ」というのです。
一方「住友ゴム工業がDUNLOPを買収した数年後には、工場等への投資負担等によって財務状況の悪化を招いていた。この苦難を乗り越えていれば、欧州での主導権をグッドイヤーに渡すこともなく、業界地図は塗り変わっていたかもしれない」というのです。
【欧州市場での FALKEN ブランド】
私がタイヤについての情報を知るのに役立てているのは英国の
www.tyrereviews.co.uk です。
ここから欧州市場で流通する FALKEN ブランドのラインアップを知ることができます。
※ 上記画像はラインアップの一部です。
日本市場での現行ラインアップにみられる銘柄も見つかります。
Max Performance Summer
FK453
Premium Touring Summer
ZE914
※ “ZE914” は “ADAC 2015 European Tyre Test 205/55 R16” で11位の評価を得ています。ちなみにこのテストでの他の日系及びアジア系ブランドでは“Bridgestone Turanza T001”が6位、“Hankook Ventus Prime2”が8位、“Bridgestone Ecopia EP001S”が13位、“Hankook K425 Kinergy Eco”が16位、“Kumho Solus HS51 Harmony Sports”が17位、“Nankang Green Sport Eco 2”が19位でした。
住友ゴム工業は2010年にドイツのオッフェンバッハに Falken Tyre Europe GmbH を設立し、補修タイヤ市場へのマーケティング及び販売を行っています。
【日本での FALKEN ブランドの舵取りが変わる。その裏にあるのは・・・】
2015年7月23日の CarWatch の記事によれば、7月22日に開催された新生「ファルケン」ブランド発表会で、取締役常務執行役員 タイヤ国内リプレイス営業本部長は次のように述べています。
「欧州市場で要求される、高い機能と品質を有する商品ラインアップを整えて、品質
基準の厳しい欧州車メーカーへの新車用タイヤの納入、ヨーロッパ最大の自動車連盟
“ADAC(ドイツ自動車連盟)” での高い性能評価など、海外で磨かれて着実に実績
を積み上げてきている」
「2015 ニュルブルクリンク24時間耐久レースではFALKEN Motorsports
チームの“ポルシェ 911 GT3 R”(SP9 GT3クラス)が総合3位に入賞した。この成績
はサーキットという過酷なフィールドを開発の現場として捉え、ファルケンタイヤの開
発力を磨き、技術力を鍛えてきた結果だと思っている」
「こうして欧米市場で鍛えてきたファルケンを8月に日本にも上陸させ、満を持して日
本での展開をスタートさせる」
※上記画像は CarWatch からお借りしたものです。
上記の発言の中でキーになる言葉は『
欧米市場で鍛えてきた』です。これまでは『
欧米市場で鍛えてきた』と呼べる銘柄がDULOP ブランドにも存在しましたが、アライアンス解消後はなくなってしまうわけです。タイヤ国内リプレイス営業本部長としては、DULOP ブランドから離れてしまうユーザーを何とかFALKENブランドで引き止めたいという思いが強いのだ思います。
【最後にちょっと】
現行の日本市場向け FALKENブランドのラインアップをみると、ニッチなクルマのユーザー層を狙いすぎで、Cセグファミリーカーのユーザー層のニーズまで目を向けているとは思えません。
一例をあげれば、“ZE914 205/55R16” には 欧州でラインアップされる "91V" や "91W" がありません。日本では "94W" のみの展開です。重量級のクルマには向いても比較的軽量なクルマにはオーバースペックです。日本のメーカーのブランドなのに日本市場で選べるサイズが少ないとは・・・。
先の発表会では『20インチ以上』、『オールシーズン』、『4 × 4』が強調されていました。
※上記画像は CarWatch からお借りしたものです。
日本市場で FALKEN ブランドが一般化するのは10年くらい先になるのかもしれません。長い目で見守りたいと思います。
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エキップメンツ ■ タイヤ | 日記
Posted at
2015/12/06 23:58:00