
公益財団法人 交通事故総合分析センター(略称:ITARDA)が一般会員(年会費無料)等に、webで提供する資料 “
イタルダインフォメーション 交通事故分析レポート” があります。
ダウンロードした資料は営利目的ではなく、交通事故の低減に資する目的であれば、出典元を明示して引用することが許可されています。
前回同様これらの資料から入手した情報を引用し、記事にすることにします。図表はすべて画像です。表示サイズのままでは見づらいですが、クリックすれば拡大します。
=======================<引用ここから>========================
【 はじめに 】
交通事故件数は年々減少していますが、高齢者が事故の第1当事者として関与する割合は増加傾向で推移しています。加齢による心身機能の低下は、運転にも重大な影響を及ぼす恐れがあり、高齢者がいつまで安全に運転を続けることが出来るかについて考えることも必要です。
高齢者の中には、日頃の運転を通じて、あるいは家族等から指摘を受けることにより、自己の運転免許の保有について考える者も多くいるのではないでしょうか。このような者に対して、運転免許を保有し続けた人と保有を止めた人の交通事故特性等のデータを提供することで、高齢者が今後の運転免許の保有について判断する材料の1つになればと思います。
高齢者の車両利用目的は、性別、地域あるいは公共交通の発達状況により差異はありますが、今回は、全国の男性高齢者を対象に分析します。
【 75歳、78歳、81歳は運転免許の保有について考える時期 】
■ 免許保有者数と保有者減少率の推移(1928年誕生の男性)
(図をクリックすると拡大します)
高齢者の免許保有者数の減少には、人口の減少も影響していると思われますが、人口の減少には保有者減少率のように3年毎にピークを迎えるような傾向はみられず、加齢に伴い免許更新時期に更新しない者等の割合が増加したと考えられます。
■ 高齢者の運転免許有効期間
(表をクリックすると拡大します)
このように、運転免許の更新時期に自己の運転免許保有について考えてみることも必要なのではないでしょうか。
【 事故・違反特性を表す指標 】
■ 準道路交通暴露率
運転頻度の指標として一般的には走行台キロが使われいています。しかし、多種多様な運転者グループについてのデータが収集されていないこともあり、過去の調査研究等で使われている交通事故データから導いた指標(Quasi-induced Exposure)、ここでは対象となる運転者グループの中で1年間に無過失の車両相互事故第2当事者となった者の割合(準道路交通暴露率)を使います。数字が大きくなるほど運転頻度が高いことをしまします。
■ 事故当事者率
対象となる運転者グループの中で、1年間に事故の第1当事者となった者の割合(事故当事者率)を使います。
■ 相対事故率
同じような運転方法であっても運転頻度の多寡によって1年間に事故を起こす率は変わります。そこで、運転方法そのものの事故危険性を論じるために、運転頻度当りの事故率として、ここでは前述の無過失の車両相互事故第2当事者数に対する事故の第1当事者の比(相対事故率)を使います。この指標は、走行台キロ当り事故率に相当するものです。
■ 違反者率
対象となる運転者グループの中で、1年間に交通違反で検挙された者の割合(事故当事者率)を使います。
なお、事故に関する3つの指標の間には、以下の関係があります。
事故当事者率 = 準道路交通暴露率 × 相対事故率
■ 2011年中の事故率(原付以上運転中)
(表をクリックすると拡大します)
「65〜69歳」と「45〜49歳」の男性が、2011年中に事故を起こす割合(事故当事者率)はいずれも0.84%で同じです。
しかし、「65〜69歳」の運転頻度(準道路交通暴露率)は、「45〜49歳」の6割程度(0.28/0.49)と低いので、運転頻度当りの事故率(相対事故率)は「45〜49歳」の1.7倍(2.99/1.73)と高くなります。
つまり、高齢の男性は、運転頻度は少ないが、心身機能の低下や運転技術等の衰えにより運転頻度当りの事故率(相対事故率)が高いことがわかります。
【 運転免許更新者の割合が高いのは事故経験なしで違反経験ありの者 】
■ 年齢別・事故-違反の有無別運転免許更新者の割合
(図をクリックすると拡大します)
【 自主返納者は2012年から急増、75歳超では事故経験者の自主返納割合が上昇 】
■ 年齢層別 運転免許自主返納件数の推移(男女計、警察庁公表資料)
(図をクリックすると拡大します)
■ 年齢別・事故-違反の有無別運転免許の自主返納者の割合
(図をクリックすると拡大します)
【 運転免許更新者の運転頻度は高いが加齢とともに低下 】
■ 年齢別の免許更新者及び免許失効者の準道路交通暴露率(2012年末:男性運転者)
(図をクリックすると拡大します)
【 75歳超では自主返納者の事故当事者率が高い 】
■
年齢別 免許更新者等の事故当事者率(2012年末:男性運転者)
(図をクリックすると拡大します)
■
年齢別 免許更新者等の相対事故率(2012年末:男性運転者)
(図をクリックすると拡大します)
■
年齢別 免許更新者等の違反者率(2012年末:男性運転者)
(図をクリックすると拡大します)
【 加齢とともに更新後の自主返納者の割合が上昇 】
■ 免許更新後2年以内の免許返納状況(2010年更新:男性運転者)
(図をクリックすると拡大します)
高齢者が運転免許を更新する際には、心身能力や運転頻度を考慮すると考えられますが、免許更新するか否かの判断に迷う者も少なくないのではないでしょうか。免許更新した後でも、次の更新時機を待たずに2年以内に自主返納する者はおり、この割合は加齢とともに上昇しています。
■ 免許更新後1年以内の事故経験者の割合(2010年に75歳で免許更新した男性)
(図をクリックすると拡大します)
数は少ないですが更新後2年以内に自主返納した者(B: 371人)の中で更新後1年以内に事故経験をした者(D: 20人)の割合は5.4%で、更新者全体に占める事故経験者の割合(C/A: 0.9%)よりも高くなっています。
更新時期を迎える高齢者に対して事故リスクについて十分な情報を提供することで、免許更新をしないという選択肢を与え、更新後に悲惨な事故を経験せずにすむ運転者を増やすことができるかもしれません。
出典:イタルダインフォメーション No.109(平成27年1月)男性高齢者の運転免許保有について考える
=======================<引用ここまで>========================
【 最後にちょっと 】
グラフをじっくり読み解かないと分かり難い、専門家向けの内容だったかもしれません。
私がこのレポートで注目したのは以下の4点です。
・交通事故件数は年々減少しているが、高齢者が事故の第1当事者として関与する割合は増加傾向にある。
・高齢の男性は若い年齢層の男性より運転頻度は少なくても運転頻度当りの事故率(相対事故率)が高い。
・2012年4月1日施行の道交法改正により、運転免許経歴証明書の有効期間は永久となった。
・75歳を超えると運転免許の自主返納者の事故当事者率が高い。
75歳以上の高齢ドライバーには法律で “認知機能検査” が義務付けられています。しかし、この “認知機能検査” が有効に機能しているかどうかは疑問が残るところです。
さらに言えば、記憶に新しい福岡・原三信病院のタクシー暴走事故。運転手の年齢は64歳でした。私には何らかの健康障害あるいは認知機能の低下が突発的に起きたように思えてしかたありません。
次回の記事では本人(あるいは家族)が加齢による心身機能の低下の兆候を察知する手立てについて考えてみる予定です。
Posted at 2016/12/29 18:48:24 | |
トラックバック(0) |
事故の加害者にも被害者にもならないために | 日記