
どの世界でも、一般人が専門家、いわゆるプロフェッショナルが用いる道具を入手することは難しいのではないでしょうか?
販売ルートが限られていたり、たとえ出来ても非常に高価だったりして・・・・・・
そして、プロが使う道具ですから、設定が細かかったり調整が難しかったり、更には使いこなすための技能や技術が必要だったりして、たとえ何とか入手できたとしてもその多くが宝の持ち腐れ状態に・・・・・
結局、「
設定が簡単で使い易いアマチュア向けの製品が一番良かった」なんて話はよく聞きますよね!?
でも、如何でしょうか?
道具そのものは高性能
しかし、使用者の難しい設定や高度な技術は必要なく“見るだけ”
しかも、その“見るだけ”が他より見易い
更には、
“プロ仕様”では無く、実際プロが使っている“道具そのもの”
その上で、リーズナブルで普通に買える
この様な道具が有ったら、購入しない手はありませんよね?
いずれは足を踏み入れるだろうと思いつつ、踏み止まっていた世界がありました。
(過去形?)
懐中時計!
今の時代では懐かしの産物としてしか見られないと思いますが、意外と収集マニアや“使用者”は多いようです。
まぁ、収集マニアが多いと言っても絶対数が少ない時計マニア中の一部ですから高が知れていますが・・・・・
一般的に、収集対象は機械式のアンティーク物、宝飾系の豪華な物などになるのでしょうかね?
オープンフェイス・ハンターケース・ナポレオン・スケルトンなどの種別が有ります。
最近はファッションアイテムの一つとして購入している若者もいるようです。
逆に、退職や還暦の記念品として贈られることが多く、そこから使い始めた諸先輩方も多い様な・・・・・
残る“使用者”は、
腕時計より懐中時計が好きで使用している「物好き」や「変わり者」達だけ
と思われる方々が殆んどだと思います。
しかし、その「物好き」や「変わり者」達より、はるかに多い使用者がいる懐中時計の世界が有ることをご存知ですか?
逆に、その世界に憧れて使用したり集めたりしている「物好き」や「変わり者」達がいる位です。
この時代に懐中時計?
普通は想像できないですよね!
しかし、自分も購入するなら、“こちら”の懐中時計と決めていました!
鉄道時計!
「動力車操縦者運転免許」と呼ばれる国家資格は、いくつもの種類が存在します。
「甲種電気車免許」:普通・特急列車などの電車、貨物・客車列車をけん引する電気機関車を運転
「乙種電気車免許」:軌道を走る路面電車の運転が可能になる
「新幹線電気車免許」:文字通り新幹線が運転できる
「甲種蒸気車免許」:最も難易度が高いとされているのが蒸気機関車を運転できる
などなど・・・・
呼び名も変わるようですが、ここでは運転士に統一します。
運転士が使用する時計は今でも懐中時計であり、鉄道時計と呼ばれています。
懐中時計の中でも、視認性の高さと耐磁性能をアップしたモノになるのでしょうか。
通常は鉄道会社が貸与しているようです。
見つけた集計データですが、現在の運転士総数は27,230名とありました。
ちなみの鉄道時計と“両翼を成す業務用”懐中時計に“ナースウォッチ”が有ります。
時計を持ち上げて見ることが多いので、普通の懐中時計と違って6時位置(上下逆)にチェーンが付いていたり、文字盤に簡易脈拍計目盛が刻まれているものも多いようです。
ナースでは無く看護師になりますが、2012年統計で就業者数は約101万6千人とありました。
前文撤回です! 両翼にはなりませんね!? 3:100 では・・・・・・
でも、ナースウォッチに憧れる(時計)マニアはあまり居ませんよね?
どうせなら、“ウォッチ”より“ナース”そのものの方が良いですものね・・・・・
失礼しました!
ナースとナースごっこ、いや、ドクターごっこ?
(ちょっとピンときませんね? 素直に“お医者さん”と言った方が・・・・・)
大変失礼しました! 歳を取ると言葉だけで妄想が・・・・・
ここまで懐中時計(ポケットウオッチ)の一種として鉄道時計やナースウオッチを取り上げてきましたが、発売元セイコーのサイトでは鉄道時計が懐中時計とは別物として分類されています。
形は似ていても“懐中時計”とは呼ばない方が良さそうです。
さて、“鉄道時計”としてはスイス連邦鉄道と独占契約を結んでいるモンディーン(MONDAINE)社の時計が有名ですかね?
鉄道時計に興味ない方も、2012の出来事は知っているでしょう!?
iPadに加わった時計アプリのデザインがスイス連邦鉄道時計に似ているとして、スイス連邦鉄道がアップル社に損害賠償を訴え、両社協議の上ライセンス契約を結ぶことで合意しました。
そのライセンス料は非公式ですが約16億7000万円だったとか言われています・・・・・
こちらが比較写真。(左がアプリ)
20世紀の象徴的デザインとしてニューヨークやロンドンの近代美術館に認められている有名なデザイン(1944年設計)、堂々とパクりすぎですよね?
この有名なデザインの懐中時計も購入は可能です。
でも、一般受けするデザイン以外あまり評判は良くないようです。
一般的な5年電池を入れても1年位しか持たないとか、一秒の正しい時を刻まず若干早い時間で秒針は進み、毎分0秒の位置で一旦停止し、分を告げる信号を受け取ってから再び動き出すという「Stop To Go」という珍しい機能(一分のスタート時のみ正しい時刻を示す)が付いていたりして一般の時計としての使用でも問題があります。
後述する機能も付いていませんし・・・・・
さて、日本の鉄道開業年は1872年と言われていますのでその後50年ほどは外国製を使っていたようですが、1929年精工舎(現セイコー)製19型手巻き式懐中時計が国産初の鉄道時計に指定された以降は国産の“鉄道時計”が中心となって使われてきたようです。
当初の機械式からクオーツへの変更はありましたが、見やすく正確な時計としての質は一貫しています。
国鉄時代は全国共通でセイコー製だったと思いますが、JRになってからJR西日本の採用品はシチズン製に変わったみたいな情報もありますが詳しくは知りません。
2/24発売の「『トワイライトエクスプレス』引退記念の懐中時計」はシチズン製なのでまんざら間違いではないようです。(運行25周年の時はセイコー製でしたが・・・・)
ただ、“記念懐中時計”の表示だけで、“鉄道時計”とはどこにも謳っていません。
尚、限定300個は当日の早い時間に完売、そしてヤフオクでは倍以上で・・・・・・
一方、セイコーの方は、昨年11月「国産鉄道時計85周年記念限定モデル(限定850本)」と称してSVBR005を発売しました。
同時に、1998年の発売開始から16年間モデルチェンジもされずに運転現場で運転士に使用されてきたSVBR001の販売を終了し、後継モデルのSVBR003の販売を開始しました。
SVBR005は、コレクションが前提か、展示可能な専用ボックスをつけ、ブルーの時針・分針で高級感を増し、初期の文字盤に用いられたアラビア書体を復刻、お得意の研磨技術を用いたりして価値を高めた仕様です。(税抜き58,000円)
SVBR003は、長らく現場で使用されていたSVBR001のケース素材(真鍮+メッキ)をステンレス製に替えたもので、素材変更に伴い重量(86gから83g)が変わった位で、キャリバー7C21のムーブメント&平均月差±15秒の精度、10年の電池寿命など、違いはありませんでした。
(デザインを含め見た目での区別は、多分出来ないでしょう!)
ただし、価格は20,000円から28,000円に大幅UPですが・・・・・
自分が欲しかったのは、実際の現場で使われている“鉄道時計”です。
コレクション用の記念モデルではありませんでしたから、先ずSVBR005が脱落です。
市場からは無くなりつつありますが、探せば85年間使い続けられてきた真鍮+メッキ素材のSVBR001がまだ買えます。
そして、素材変更で軽くなった上にメッキが剥げることを気にせず気軽に使えるステンレス製になったSVBR003も買うことが出来ます。
どちらも選べる、又と無いタイミングです。
悩みま・・・・・・
せん! でした。
確かに、真鍮+メッキ素材のSVBR001を購入できる最後のチャンスかもしれません。
逆に、SVBR003の方はこの先いつでも買えると思います。
しかし、購入したら使いたいんです。使い勝手の良い方を選択です。
キズはキズ、キズを歴史とは思えない自分は、メッキが剥げていくことに愛着を持てないだろうと、自分の性格を読み切りました。
ということで、SVBR003 が仲間に加わっています。
「そんなモノ買ったって、本当に使うの?」
「どうせ、買っただけで満足してタンスの肥やしじゃないの?」
ご説ごもっともです!
自分でもちょっと不安がありましたので対策済です。
腕時計は1~2週間に1日(回)の勤務体系ですから使用しない残りの日は専用ケース内所定の位置で休息(待機)していますが、“鉄道時計”には休息無しの全日勤務で勤めてもらいます。
10年電池ですからスタミナも十分でしょう!?
(手巻き・自動巻きの腕時計は休息中に必ず止まっていますので、毎回の使用時には時刻合わせから始まります・・・・・)
JIS水準2種の強化耐磁ですから1cm離せば磁気の影響はないということで置き場所に困ることも無いでしょう。
手作りですが専用住居も与えましたので、持ち出さない日は“置時計”代わりに・・・・・
それにしても、鉄道時計の視認性の良さは素晴らしいですね!
大きい文字盤、大きいインデックス、インデックスまでしっかり届く針のお蔭で、視力が悪い自分でさえ、手元になく離れた状態でもはっきり時刻が分かります!
さて、ここまでお付き合い頂きました方々のモヤモヤを解消して終わりにしましょうかね!?
日本の鉄道は諸外国と比べると比較にならない正確さで運行されています。
「時間を正確に知らせる道具としての時計、今の時代なら当然『電波時計』でしょう!」
と思われるのが普通ですよね!
残念ながら、電波時計は電波を受信するために密閉構造にすることが難しいようです。
もちろん密閉の対象は防水では無く防磁になります。
一般的な時計は防磁機能が無いのが普通ですが、中には日常生活において磁界を発生する機器に5cmまで近づけても性能を維持できる水準を満たした1種耐磁時計があります。
耐磁性能の有無に関しては、両者は大きく違います。
鉄道時計はその1種耐磁時計を遥かにしのぐ「2種強化耐磁時計」の性能を有しています。
磁界を発生する機器に1cmまで近づけても性能を維持できる水準です。
これらは日本工業規格(JIS)で明確に分類されております。
1種耐磁時計:直流磁界4,800A/mに耐えられる水準、
2種強化耐磁時計:直流磁界16,000A/mに耐えられる水準
の

表示が重要です。
運転室にある各種計器から発生する可能性がある磁気に対しての対策の為でしょう。
リニア時代になれば更に対策が必要となる性能でしょう。
現在の電波時計では1種耐磁性能を持つ時計しか無いようです。(シチズン製?)
いずれ技術が進歩し「2種強化耐磁時計」の性能を有した電波時計をつくることは出来るでしょうが、限定的な用途の時計を作るでしょうかね?
時計としての精度は電波を拾わない時の電波時計と同じですし、公表精度の最悪でも一日0.5秒のズレですから秒単位での運行を行う鉄道でも支障の無いレベルでしょう!
その上で、実際の使用現場では、勤務前の点呼時に時間合わせをしているそうですから・・・・・
それよりも、心臓部の7C21キャリバーは飽和潜水用のダイバーウォッチにも使われているものだそうです。停止や秒単位でも狂いが生じれば生死に関わる潜水時にダイバーが身を任せられる堅牢性や信頼性を担保できるキャリバーはそう多くないでしょう。
10年電池も頼もしいですよね!
モニター電池表示はありますが、理論上は一回電池交換すれば20年持つことになります。
電池交換が面倒だからとソーラーに進む必要性を感じませんよね。
更に、残念ながら実際の確認が出来るのは随分先になりそうですが、電池切れの前には2秒ごとに秒針が動き、電池切れを教えてくれる機能も付いているようです。
これらを超える“電波鉄道時計”が登場したら、新し物好きの自分ですから直ちに飛びつきたいと思います!