
タイヤの「偏平率」には以前から違和感がありました。国内では、タイヤのゴム部分の高さの幅に対する比率(H/W・・・図のHをWで割った値)を「偏平率」と呼んでいます。H/Wの値が40~45%のように、タイヤの幅が広くゴム部分の高さが小さいものを「偏平タイヤ」と呼ぶのに疑問はなく、H/Wの値が(60~65%のように)大きなものより「偏平化している」と呼んでも違和感はありません。でも、
・H/Wが小さいタイヤは「低偏平」なのか?
・偏平の度合が増しているのだから、「高偏平」の方が素直ではないのか?
・それなのに、偏平の度合が増すと、「偏平率」は小さくなるのか??
Wikipediaには楕円や回転楕円体の「扁平率」が載っています。「
扁平率(へんぺいりつ、扁率、扁平度とも、flattening, oblateness)とは、楕円もしくは回転楕円体が、円もしくは球に比べてどれくらい扁平か(つぶれているか)を表す値である。円もしくは球では値が 0 である。つぶれるに従って値は 1 に近づく。」との説明があります。形がつぶれるほど値が大きくなるという点では、タイヤの「偏平率」とは真逆です。
私の感覚では、「へんぺい率」はつぶれている度合なので、楕円の「扁平率」の方がすんなり理解できます。タイヤよりも先に楕円や回転楕円体の「扁平率」を知っていたので、これと逆の表し方をするタイヤの「偏平率」に違和感を受けるのだろうと思いました。
ただ、「偏平」の度合が進むほど値が小さくなる量を「偏平率」と名付けるのは、量に対する感覚と逆行しています。このような命名は、用語や概念の定義に厳格な分野では、採用されることはないだろうと思います。
では、そもそもタイヤの「偏平率」を英語で何と呼ぶか? ネット上で探してみると、aspect ratioとのことでした。この語はいわゆる「縦横比」で、液晶画面の縦横の画素数の比率など、いろいろな場面で使われています。「偏平」のようなことばを使わず、単に縦横比と呼んでいます。
この「偏平率」は日本独自の命名であったようで、だからこそこのような迷名?(または珍名?)が生まれたものと想像されます。
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2021/10/24 23:01:48