
これまで安易に使ってきた「ギア比が高い(or低い)」について、改めて考えました。
「ギア比が高い」という言い方を初めて認識したのは1977年でした。その年に発売された4代目ファミリア(FRのハッチバック)は、旧ファミリアプレストより最終減速比が小さくなり(4.111→3.909あたり?)、「ギア比が高くなった」という記事を目にしました。その数年後に発売されたある車種のカタログでは、「ローギアード・クロスレシオにした」のような主張をしていました。これまでに目にした自動車ジャーナリズムの記事から、MTの軽自動車のように高回転で使わせるものを「ギア比が低い」と言い、デミオディーゼル6MTのように低回転で使わせる(100km/hでもたった1600rpm!)ものを「ギア比が高い」と言うものと理解してきました。
その一方で、「ギア比とは一体何??」という疑問を当時から抱いていました。諸元表に記載されるのは変速比や(最終)減速比であり、「ギア比」ではありません。変速比や減速比はいずれも値が大きいほど高回転型になるので、低回転で使わせるものをなぜ「ギア比が高い」とか「ハイギアード」というのか、ずっと疑問でした。「ギア比とは、変速比や減速比の逆数の概念なのだろうか?」とも思いました。
改めてネット検索しました。モーターファンの「大車林」には、
ローギヤード low gearedの項目があり、「
変速機や終減速機の変速比を標準的な値よりも、低速側(大きな値)に設定した場合のことをいい、ローギヤリングとも呼ぶ。」と、上記と整合する説明をしています。英語(low geared)で検索すると、これと矛盾しない説明もいくつか見つけられたので、low-gearedやhigh-gearedという言い方はあるのだろうと思いました。
これに対し、「ギア比」に関する歯車を用いた説明は、これらとは逆のものばかりでした。Pei's Labの
ギア設計の基礎知識 | 初心者の為の機械設計サイトには、

とギア比を表す式があり、ほかのサイトでも歯車を用いた説明では同様でした。これらによれば、エンジンの高回転を減速させて出力側に伝える前提の下では、その減速度合(総合減速比と名付けたケースもあり)が大きいものを「ギア比が大きい」と呼ぶことになるようで、これは理解しやすい説明です。ただ、定義された工学的な概念というよりは、一般的な説明で使う用語であると思われました。
自動車ジャーナリズムが「ギヤ比が高い」と称してきたのはこれとは真逆ですが、その場合の「ギア比」に関するまともな説明は、まだ見出しておりません。
半ば邪推ですが、「ギア比」という値の定義をきちんと考えないまま、英語のlow-gearedやhigh-gearedに引っ張られ、さらに変速機の段数が大きい方を「高いギア」と呼ぶという一般的な認識にひきずられて、低回転で使わせるケース(high-geared)を「ギア比が高い」と呼ぶようになったのではないかと想像しました。これはあくまで想像であり、確証はありません。
これらを踏まえ、安易に「ギア比が高い(or低い)」と称するのは適切でないと判断しました。今後は
・ローギアード:加速重視型のギア設定
・ハイギアード:回転を抑えて使わせるギア設定
のような呼び方を使うこととして、これまでのブログ等の記述もこれに沿って順次修正するのがいいだろうと思いました。
自動車に関する用語には、
タイヤの偏平率や
燃費など、違和感を感じるものがありますが、「ギア比の高低」もおかしなものだと改めて思いました。
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Posted at
2024/06/03 23:18:17