
廃炉作業が進む福島第一原子力発電所を訪問する機会を得ました。
【現地見学の概要】
現地見学の拠点は
東京電力廃炉資料館(冒頭の写真)です。初めに「ひたすら全面的に懺悔」と言えるビデオが上映され、次いでイントロと注意事項です。配布資料がたくさんありましたが、大半は「後でお読み下さい」。詳細資料は「無断複製・転載禁止」です。身分証明書の写しをとられ、スマホや貴重品を含む荷物はここに残し、持参可能なのは小さなメモくらいでした。
専用大型バスで20分ほど移動し、原発の敷地に入りました。下車すると、整列して順に顔写真照合、入構証受領、金属探知機による検査、機械による入構手続き、専用の上着着用と線量計装着、係員による最終確認と、国際空港以上の関門でした。

所内では別の専用バスで移動し、2箇所で下車しました(図は
経産省パンフレットから拝借し、矢印を追加)。
まずは原子炉建屋の前(青色の矢印)で、1~4号機の現状などについて説明を受けました。「事故の当日はここがこうなって、その後何がどのように進み、今は何をやっていて・・・」などと細かな説明を次々としてくれましたが、手元に資料もないのでとても把握しきれず、「そうですか、大変ですね」と聞き流すしかありません。
続いてALPS処理水が通る経路を辿りながらバスで進み、緑色の矢印付近で下車して、放流口があるという海を眺めました。諸成分は十分取り除けるものの、トリチウム(三重水素)は除去する方法がないので、海水で単純に希釈するとのことです。放流口は海底なので、当然見えません。
見学が終わって線量計の返却です。数値は覚えていませんが、個人差が大きく、私の値は高めでした。「原子炉建屋前で1号機に近い位置にいた人は、大きめの値になります」との解説があり、案内の方はだいぶ離れたところで説明していたことを思い出しました。事前にわかっていたら、立つ位置を考えたのですが。
時間が限られていたため、帰りの車内で質疑応答があり、廃炉資料館で荷物を急いで回収しました。資料館の見学は全くできなかったので、後日改めて寄りました。
【訪問の印象】
まずは廃炉資料館で上映された全面的な懺悔のビデオに圧倒されました。事故の甚大さを考えると相応しいとも言えますが、「懺悔すべきは東電だけなのか?」と素朴な疑問を抱きました。
廃炉資料館では、事故の状況、その後の対応の経過、廃炉に向けたロードマップなど、とても詳しく解説していました。一方で、いかにも贅沢そうな施設に違和感を抱きました。外観は控えめな建物ながら内部がとても立派に見えるのは、元は原発PR施設だったという成り立ちによるかもしれませんが、もう少し地味でいいと思いました。
福島第一原発の現地見学が大規模でシステム化されていたのに驚きました。案内用の大型バスが複数台あり、見学コースは定番化され、システマチックに運営されていました。必要に迫られた対応なのだと想像されますが、いかにも定常業務化した運営に見えました。
現地を見学すると、廃炉に向けてさまざまな作業があるようで、多くの方々が従事していました。廃炉に向けた中長期ロードマップが描かれていますが、細かなスケジュールや段取りは未定のようです。諸費用は青天井のように思えましたが、それらを結果的に負担するのは電力消費者と納税者ということになるでしょうか。
見学会の配布資料と資料館見学で入手した資料に、後ほど目を通しました。廃炉の進捗を解説し、ALPS処理水の安全性を主張するもので、作成者は東京電力のほか、電気事業連合会、経済産業省などでした。安全対策のレベルを超えた災害の発生が原発事故の原因と言えますが、その背景には東電自身のほか、業界団体である電事連、所管官庁でありながら原子力安全・保安院を傘下に抱えていた経産省、原発運営に参加する諸事業者、おそらくそこに政治サイドも加わった広く大きな意思としての原発推進策があったはずです。このような関係者の情報ばかり並べて安全性を主張しても、説得力に欠ける印象でした。
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2025/12/06 21:00:15