ポルシェではオドメーター(およびトリップメーター)が作動しなくなるトラブルが定番である。

スピードメーター内にあるオドメーターは、距離パルスによるモーターで駆動されているが、メーター内部のギヤが破損して作動しなくなる。これは経年変化によりギヤが劣化するためで、材質の問題なのか、酷い場合は分解修理のときにギヤに触っただけでギヤがボロボロと崩れることもある。
幸いギヤのみを入手することができるのでギヤ交換の手順を整備手帳に記載した。ブログでは概略のみ記載する。
ここでは930型のメーターについて記載するが944,928も同様の手順で交換できる。多分他の車種でも同様に修理可能だと思う。
ポルシェの場合、壊れるのは不思議なことに初段のギヤだけであり、わざとこのギヤが壊れることで他のメーターギヤが破損しないためのヒューズのような作用を期待しているのかも知れない。
ややこしいのは、初段のギヤが下記の4種類あることで、分解しないで識別する方法は知らない。
外歯20-内歯23、外歯20-内歯29、外歯20-内歯30、外歯20-内歯32
メーターの分解
①取り外し
最初にメーターパネルからメーターを引き出す。
メーター端子4本と照明用ライト2個とハイビームライトを取り外す。端子毎にどこに差し込んであったか記録しておく。
①分解
メーター枠にテープを貼り傷を防止してからメーターの枠の端の部分に千枚通しか細いドライバーを入れてコジり、枠を少し浮かせる。少しずつこの作業を行い全周コジるとメーター枠が緩む。この状態でメーターからメーター外枠を外す。メーターのレンズを外すとメーターの内枠も外れる。
②針を引き抜く
シャフトは極めて細くニッパーなどで無理な力を加えるとシャフトや針が歪む恐れがあるので、指で針を摘まみ左に回すと、内部のストッパーに当たるのでそのまま左に回しながら引き抜くとよい。針を引き抜くのがメーター修理の最も重要な(難しい)部分であるので慎重に行う。
③メーターの文字盤を固定しているビスを2本外すと文字板が外れる。
この状態でオドメーターのメカニズムが見える。
オドメーターの四隅を固定しているマイナスのビス4本を取り外すとオドメーターユニットが外れる。
左上のビスは小さな鉄板片を共締めしている。これは照明ライトを散光させるためもので、組立時に忘れないように取り付ける必要がある。
④ギヤの交換
ユニットの裏側を見ると左上のギヤが破損しているのがわかる。
この破損したギヤはオドメーター側から順番に組み立てられており、分解しないで破損したギヤだけを交換することはできない。
オドメーターを駆動しているギヤを固定しているシャフトを抜き取る。細いドライバーか千枚通しでシャフトを押し出し、ラジオペンチでシャフトを引き抜く。
このギヤは2枚重ねになっており、分解するときに注意。
その上のギヤはスナップリングで固定されているので、スナップリングを取り外す。破損したギヤもスナップリングで固定されている。スナップリングが飛ばないように注意すること。
現在購入できるギヤは4種類あり、メーターの外観からどのギヤが装着されているか識別するのは困難であり、実際に分解して装備されているギヤの歯数を数える。
下記の4種類がある。
外歯20-内歯23、外歯20-内歯29、外歯20-内歯30、外歯20-内歯32
アメリカにOdometer Gearsという会社があり、その会社の資料を見ると下記のように記載されている。
911 US-MPH (Base, Carrera, SC, Turbo)
1975-1989
20x30
911 Euro-Km and Asian
(Base, Carrera, SC, Turbo)
1975-1989
20x22 or 20x32 (歯数を数えて確認するのが良い)
911 Middle East-Km
(Base, Carrera, SC, Turbo)
1975-1989
20x29
928 US-MPH (Base, GT, GTS, S4)
1978-1995
20x21
928 Euro-Km (Base, GT, GTS, S4)
1978-1991
20x21 or 20x29 (歯数を数えて確認するのが良い)
944 Euro-Km (Base, S, S2, Turbo)
1982-1985.1
20x23 or 20x30 (歯数を数えて確認するのが良い)
944 US-MPH (Base, S, S2, Turbo)
1985.2-1991
20x21 or 20x22 (歯数を数えて確認するのが良い)
944 Euro-Km
1985.2-1991
20x22 or 20x30
この会社に直接注文することも可能で、ここではほとんどすべての外車と日産とマツダのオドメーターギヤを販売している。
http://www.odometergears.com/index.php
2019年現在25ドル+送料4ドルで購入できる。
ヤフオクにオドメーターギヤを出品している人(zzz117abcさん)がある。
送料別で2800円だからアメリカのOdometer Gearsに注文するより手軽で安い。
ポルシェ911(964,993),968用のオドメーターギア(15歯)も在庫しているようだ。
ギヤを順番通りに組み込む。順番が正しいのに組み込めないときは歯数が違うギヤを組み込もうとしている場合があるので注意。
シリコングリスをほんの少しシャフトと歯面に塗っておくと良い。ギヤをスナップリングで固定する。
⑤メーターの組立
せっかくメーターを分解したこの機会にメーター内部の照明の明るさを改善するためにメーターハウジングの内側にアルミテープを張り込み照明灯の反射率を上げる。
オドメーターの四隅をマイナスのビス4本で固定する。
左上のビスは小さな鉄板片を共締めすることを忘れないようにする。
文字盤をビス2個で固定する。
針を指で摘まみ、ゼロよりやや上の位置で軸に載せる。やや左に捩じりながら押し込み、文字板のゼロ点と針が合うような位置にする。針がゼロより下になってしまった場合はそのまま左に捩じりながら針を引き抜き、再度挿入する。ゼロよりやや上の位置で押し込み、左に捩じって針と文字板のゼロの位置を合わせる。
内枠、レンズ、外枠の順で嵌め込む。
外枠をコジって外したために外枠がやや開いて大きくなっているが、太めのマイナスドライバーを当てて押え少しずつカシメを戻す。
この段階で車両に仮に装着して速度計とオドメーターが正常に作動することを確認する。
その後全周にわたって枠を押える。ポンチで軽く叩く方法もあるが、メーターに振動を与えるので腕の力だけで静かに押えて外枠を固定するのが良い。
なお、参考までにメーター専門店で修理を依頼すると15000円~である。