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CR-Z、プリウスの話からガラっと変わりますが、クルマのデザインに関してブログネタを考えているうち、以前にNHKで再放送されたドキュメンタリーを思い出しました。
数年前、トリノはピニンファリーナ社のチーフディレクターだった奥山清行さんとそのデザインチームが、2005年3月のジュネーブモーターショーに向けて、これまでに無い斬新なスーパーカーを企画、デザインし、発表するまでの6ヶ月間を追ったもので、大変に感銘を受けました。
その時の作品が、画像の『Concept of Pininfalina, Birdcage 75th』です。ピニンファリーナ社の創業75周年を記念したコンセプトカーとして企画されました。
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この時は1名の募集に対して世界中から500名の錚々たるデザイナーが応募したそうです。奥山清行さんから選りすぐりの4名のデザイナーに提示されたテーマは、
①向こう3年のうちに発売されるようなどんな車にも似ていないもの、10年後にも夢を与え続けるような車。
②基本コンセプトは車の重心を低くタイヤを目一杯大きく見せること。
たくさんのスケッチを元に検討ミーティングが繰り返されます。デザイナーたちの渾身のアイディアも容赦なく切り捨てられ描き直しが続きます。『自分が感動して作らねば人に感動を与えることなんてできない。』
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最終的に採用されたデザインから、モックアップによる評価が繰り返され、デザイナーの意を受けて、モックアップを「モデリスタ」たちが最終完成型に仕上げて行きました。コンピュータも電動工具も使わず、全て手作業で削り、付け加え、また削り、磨き上げ、そうして苦労の後に発表されたこの『Concept of Pininfalina, Birdcage 75th』は、第75回目となるジュネーブモーターショー2005のなかで最も美しい車として表彰されました。
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この『Concept of Pininfalina, Birdcage 75th』は、マセラッティのレースカー用シャーシ『MC12』を採用、700馬力の6.0リットル65度V12エンジンを搭載しています。
SPECIFICATIONS
●全長4,656×車幅2,020×車高1,090(mm)
●ホイールベース2,800(mm)
●車両重量1,500(kg)
●エンジン5,998cc DOHC 65°V12(700hp)
●変速機5速MT
●駆動方式MR
●乗車定員2名
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ボディにドアはなく、ウィンドウ、ルーフ、フェンダーまでもが一体となった巨大なアクリル製フードが斜め前方に迫り上がります。ボディはCFRP製で、シャシーはCFRP製+Dupont社のメタ系アラミド繊維『ノーメックス紙』製ハニカム構造材の複合素材をフレームに使用し、リア・フロントのサブルレームはアルミ合金製です。
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通常、モーターショウに出展されるコンセプトモデルはモックアップ段階のものが多いのですが、この『Concept of Pininfalina, Birdcage 75th』プロジェクトはその後もマセラッティ社との間で熟成が進みます。
2005年3月のジュネーブモーターショーから約3ヶ月後、英サセックス州グッドウッドで6月24日から26日に開催された「2005年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」では、マセラティのコンセプトカーとして実際に初走行を披露してしまいます。
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英サセックス州「2005年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」にて初走行を披露。画像はコース上を走行中の『Concept of Pininfalina, Birdcage 75th』。
開発にあたってのテーマは、2005年度からその後3年のうちに発売されるようなどんな車にも似ていないもの、10年後にも夢を与え続けるような車、でした。
2010年の今年、ありきたりの3BOXカーでは無く、このデザインのクルマがもし発売され、日本の街中を走り出した姿を想像してみてください。これ、欲しいと思いませんか。
そりゃ現実的に考えれば、価格は1,000万を切るプロダクトモデルじゃないと一般庶民は手が届きませんが、クリーンエナジー・エコ・EV・HV・ダウンサイジングと、今の自動車業界全体の流れがこういうデザインのクルマを輩出する環境をも実現する方向に向かっているように思います。
車体を構成する各パーツの物理的サイズ、配置も、例えばEV駆動なら自在に考えられます。今からなら、何も6,000ccのV12レシプロを必要としない筈です。
ホンダさんのCR-Zを開発された方の意思、努力は凄かったんだろうなと思います。目前でプリウスが販売成績で一人勝ちしている状況で、MTのスポーツハイブリッドなんて普通躊躇するでしょう。でも結果は、買われた方には失礼ですが、あんなにコンパクトで、荷物も積めなそうだし後席はお世辞にも広いと言えない、つまりご家族用には考えていないクルマが、ガンガン予約されてます。
買ってみたいな、所有してみたいな、綺麗なカタチだな、格好良いじゃない・・・、お客さんの心に響いたんだと思います。おんなじような3BOXデザイン全盛の今だから、余計に新鮮に映るんだと思うんです。
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内装;巨大なヘッドアップディスプレイ
本来インストルメントパネルにあるはずの計器類は全てヘッドアップディスプレイを使用し、ダッシュボード中央に配された透明パネルに投影表示されます。マセラティ伝統のアナログ時計も同様に投影表示されます。
ステアリングホイール中央にはコントロールデバイスが集中配置されています。
また、モトローラ社設計の携帯電話用Bluetoothヘッドセットが装備され、搭載されているいくつかのカメラを通信機器を使い他者と走行データを共有出来る機能を盛り込んでいます。
⇒④に続く。
Posted at 2010/06/10 08:04:52 | |
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