
区議会議員選挙の投票を済ませた後、買い物がてら近場のVWディーラーを覗いてきた。先日、
ちょこ&めいさんやkahan氏とむしゅ氏の自宅に押しかけた折に話題に出て以来、是非とも乗ってみたいと思っていた1400cc過給器2個つきゴルフが目当てだ。
割と小さめな排気量のエンジンに、ルーツ式+ターボ式の二つのスーパー・チャージャー(過給器)をくっつけた量産市販車と言うとバブル期の日産マーチ・スーパーターボなんかをつい連想してしまうのだけれど、そちらが一種の際物であったのに対してゴルフGT TSIは今後のラインナップ展開を踏まえた、ずっと地に足の着いたモデルである。
まずは店舗入り口の車寄せに置かれた横浜ナンバーの試乗車を、停めたままで矯めつ眇めつ見物する。おお、このご時勢にちゃんと灰皿が純正で用意されてる!などと喫煙者として軽い感動を覚えたり、ドア内張りの取っ手周りのプラスチック部品がツルツルのテカテカで些か興醒めだと思ったり、パッケージングはほとんど完璧としか言いようがないなあなんて感心したりする。いやはや、伊達に不動の輸入車ナンバーワンを張っている訳ではない。
レバー一つで上下動と長さ方向のロックが両方まとめて外れるハンドルの調整機構は、唯一僕の趣味に合わない部分(まるきりブランブランになっちゃうので微調整がしにくいのだ)だったけれど、これってほぼ完璧な自動車なんじゃねーの?とか思ってしまう。これと売価抜きの真っ向勝負で比較したら、先年欧州カーオブザイヤーを2位で分け合ったと言ってもマツダのアクセラじゃあ絶対に敵わない気がする。
実際に走り出す前からひしひしと大作の予感がしていたのだけれど、エンジンをかけて動き出すと、果たせるかなやっぱりこいつは大作だ。「このトランスミッションが欲しくてお求めになるお客さんも少なくないですよ」と営業マンが胸を張るDSGとか名づけられた自動変速装置がまず凄い。いわばクラッチ・ペダルのないマニュアル・トランスミッションみたいなものなんだけれど、変速が滅法早くてスムーズだ。セールスマン氏に拠れば「変速ショックを減らすために6段にして、なおかつギア比をクロースさせた」らしいのだが、本当に言葉通り。
そのためにクラッチを(他製品のようにシングル・プレートではなく)わざわざツイン・プレートにしているという。なんだか髭剃りの二枚刃みたいだ。
ギアの操作はセレクタ・レバーでも、ステアリング裏に設置されたパドルでも任意に変速できるようになっている。そのレバーのパターンが「引いてダウン、押してアップ」の配置になっているのが僕には嬉しい。
このDSGってやつは滅法賢くて、ダウン・シフトをすると一瞬エンジンを煽ってドンピシャの回転数まで上げて変速する。お陰で変速ショックが少しも出やがらないのだ。機械のくせして生意気な。感動的なくらいよくできている。ただ、この設定は僕の運転のリズムには少し合わない部分がある。DSGの仕掛けだと回転がドンピシャに合っちゃってるもんで、期待しているよりも減速開始が一拍遅れる―― 一瞬、空走しているように感じる(数準倶楽部さんの記述に拠ると、実際に空走させているのかもしれない)―― のだ。エンジン・ブレーキでの速度調節目当てで減速シフトを結構やる僕には、この空走はちょっといただけない。
DSGもさることながら、エンジンもこれまた大作だ。助手席の営業マン氏が繰り返し繰り返し「1400ccのエンジン」云々を力説するのが少々くどいけれども、確かに意識しなければ2リッターと言われても信じてしまいそうだ。1.5トン前後とかいう重量に、これはもう必要十分以上。ただ信号待ちからの出足で僅かに「飛び出してくれない」って場面もあった。アクセルをもうチョイ踏み込んだら違うのかもしれないけど、試してないのでそこは判らない。
それにしても静かだ。僕の知ってる欧州車はおしなべて、車内では静かでも外から聞くと結構ガラガラ音を立ててエンジンが回っていたりする。ところがこのゴルフ、少なくとも車の中にいる限り、日本車はだしの静かさだ。窓を開けていても気になるような音は聞こえない。ひょいとスピード・メーターを見て、もうこんなに出てたのかとビックリするくらい静かにスイスイ加速する。お陰で警邏中のパトカーをぶち抜きそうになって、ちょっと冷や汗をかいた。
二種類の過給器を組み合わせるやり方、マーチも昔やったんだし、もっと前からあってもよさそうなものなのになぁとチラッと思ったが、多分ここまでスムーズに仕上げるには電子制御関係の助力が不可欠だったのだろう。だとすると、ようやっと「やりたいこと」に技術が追いついて「できること」になって来たと言うことかも知れない。
以前、マツダのCX-7やMPVに試乗したときにも静かさと加速と旋回挙動のよさに感心した一方で、正直なところ幾許かの違和感があったことも確かだ。その辺の理由が、今度のゴルフで何となくわかったような気がする。
上手い喩えかどうか自信はないが、いわばアチラは「かつお
風味だし」。対するこちらは「かつおだし」のホンモノ。チューニングで調整したものと、基からそういう風に作られているものとの違いとでも言えばいいのだろうか。結果は同じ筈なのに、何かどこか風味が違う。マツダのような判りやすいZoom-Zoomな味付けはないかもしれないけども、ゴルフにはしみじみしたZoom-Zoomはちゃんとある。それも、芯までキチンと実の詰まったZoom-Zoomが。全然、退屈じゃない。
いやぁ、コレ凄いわぁと心底感心してしまったが、そう感じるのは何も一人僕だけではないようで、TSIのゴルフはいま、大量のバックオーダーを抱えているのだそうだ。オプションや車体色の選び方にも因るけれども、仮に今すぐ商談が成立したとしても納車は9月くらいになるとはセールスマン氏の弁。それでも買ってもいいな~なんて思ってしまうくらい、TSIのゴルフはいい。あ、でも値段を聞き忘れた。
4気筒のゴルフの試乗を終えてV6エンジンのわが車に戻り、ディーラーを後にするとき改めて気づいた。TSIエンジンって滅茶苦茶スムーズだったじゃん、と。体感的には、ユーノス500のV6が粗雑でガサツに感じられてしまうくらいだ。どっちが4気筒エンジン搭載車なのかわかったもんじゃない。
ことスタイリングに限って言えば、今もってユーノス500以上に魅力的な乗り換え候補を見つけ出すことは困難だけれども、しかし自動車としての総合点で判断するならばユーノス500の「次」として納得できる車が見つかるようになって来た。これ、多分500だけしか所有していなかったら感じないことだったんだろうなあ。運転することの楽しさや気持ちよさが、スタイリング上での「ユーノス500には敵わない」って否定的感覚を凌駕することがある。
尤も、その運転の楽しさ一辺倒の「もう一台」があるお陰で中々真面目に「ユーノス500の次」を考える気にならないのも確かなのだけれど。
Posted at 2007/04/23 14:01:25 | |
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