
※画像はイメージです。^^;
すっかりと冷え込んで、夜はストーブのぬくもりなしにはいられない、この季節になると思い出すことがあります。
それは、わたしがこの町にやって来て最初の、冬のはじめのことでした。
最初に言っておくと、わたしは世間で言ういわゆる「霊感」ってヤツがまったくない人間でして、いつぞや自分で撮った写真が俗に言う心霊写真だったことがあるのですが、本人にはまったくわからず、友人から「どう見ても顔だろっ!」と突っ込まれても「見えねーよ。煙じゃないの・・・?」というありさま。
なので「金縛り」にも、それまであったことがありませんでした。・・・あの時までは。
北海道の、とある辺鄙な町に流れ着いたわたしが当時住んでいたのは、国道沿いにある旧い長屋でした。壁ひとつ向こうに大家さん一家が住んでいて、国道の反対側がわたしの部屋。1階に6畳ほどのひと部屋とトイレ、台所があるだけ。さらに2階があり、6畳と3畳ほどの二間になっていました。
もちろん風呂はなく、築40年近い建物の上、わたしが入居するまで何年も人が住んでいなかったので、まさに廃屋のようになっていました。
当時は公営住宅に空きもなく、それまでのつなぎに住み始めて、3ヶ月ほど経った今頃の寒い夜のことでした。
公営住宅が空けば、すぐ引っ越す予定だったので、家財(と言ってもハイエース1台分程度のものでしたが)のほとんどは段ボールに詰めたままで、必要最小限のものだけ開けて使っている状態。そのため1階は狭いので、寝る時は2階に布団を敷いて休んでいました。
その2階には暖房がなく、そろそろここで寝るのもつらいなあ、と思い始めながらその夜も床についたのですが。
どれくらい眠ったでしょうか。ふと、目が覚めたのです。いや、ふと、ではなく、おなかのあたりに違和感を感じて、でした。
なにか乗られているような重量感。それとともに、ひどくくすぐったいのです。そのくすぐったさで、目が覚めたのかもしれません。
なんだろう、と思って起きようとすると、身体ぜんたいが重くて動きません。いわゆる心霊現象でよくある恐怖感をまったく感じなかったので、のんきに「おっ、これが金縛りってやつかあ」などと考えていました。
手足もまったく動かないのですが、どうやら首が少しと目だけは動くようです。おなかの違和感はなにかと、わずかに動く部分で、布団の上に視線をやったところ・・・・・・!
布団の上になにか「白い影」のかたまりのようなものが見えました。
わたしは強度の近視なので、メガネをかけないとものはろくに見えません。なんだろうと目をこらすと、不思議なことにそのかたまりが次第にはっきり見えてきました。
猫です。それも1匹ではありません。おなかのうえに2匹。さらに布団のまわりにも数匹が見えます。
しかも布団の上の2匹は、おなかを出して、猫が甘える時によくやる「ごろごろ」転がっている状態。
布団の回りの何匹かも、のんびり歩くもの、丸くなって寝ているものなどさまざま。
「どこから入ってきたのだろう?」と思いつつ、
「おまえたち、くすぐったいじゃないか」と声をかけようとしましたが、口がほとんど動きません。「アア・・オオウ・・・・・・」と声にならない声になり、それははっきり自分の耳にも届きました。
その間も、相変わらず猫たちはくつろいでいます。気付くと、その猫たちは虎模様だったり、三毛だったりするのですが、その身体を素通りして、布団の柄が薄く見える、つまりこの猫たちのからだは半透明なのです。
ということは、この世のものではないのだな、と気付いても恐怖心はわきません。猫たちがあまりにもくつろいでいるから。
そのうち、1匹が起きあがってふとんの上を、わたしの顔の方に向かってきました。
「なんだ、どうしたんたい?」と、声をかけようとしましたが、相変わらず声にならず。
そしてその1匹が、近づきかけたとき。
ふうっ、とその猫の姿が消えました。見ると、他の猫たちも同じようにふうっ、と消えていきます。
気が付いたら、金縛りはとけて、ふとんの上に起きあがっていました。
思わず、猫たちがいた辺りをさわってみましたが、冷たくなった畳の感触があるばかりです。
ただ、おなかの重量感とくすぐったい感じだけが残っています。
「なんだったんだろう、あれ・・・」
まあ、気持ちが悪い思いではなかったので、そのまま寝てしまいました。
で、翌日夜もまた同じことが。
でもそれっきりでした。
霊感はありませんが、霊魂そのものの存在は否定しないので、もしかすると、かつてこの家や近くに住んでいる猫たちの霊が、人恋しくて現れたのかも知れません。
「金縛り」はイヤだけど、あの「猫縛り」ならもういちど、いや毎晩なってもいいんだけどなあ。^^
て、よく考えたら・・・「怪談」ではないですね?コレ。
Posted at 2005/11/18 22:19:59 | |
トラックバック(0) |
戯れ言 | 日記