
十勝港でいせとすおう、留萌港でくまたかを見学した、かわねこ的艦船ウィークでしたが、それを締めくくるべく、実はさらに翌週もお出かけしたのでした。
今回の目的は、海上保安庁の巡視船「そうや」。1978年建造なので、実に船齢47年の海保最古参にして、唯一の砕氷船です。巡視任務のほかに、その砕氷能力から冬季、流氷群に閉じ込められた船舶の救出などに活躍しているのは、広く知られているとおり。
そのそうやの停泊地が、釧路港だと偶然に知ったのが2年前でした。
2010年に近代化改修を行って、就航期間を伸ばしていましたが、2022年に代替船建造予算が降りたことで、そうやは2025年で退役と言われており、その姿を見られるのも今年が最後かも、と、一般公開の機会を伺っていたのです。
任務の関係もあり、一般公開の情報は直前まで公表されないことが多く、過去の実績から、8月初旬に行われる「くしろ港まつり」での公開が、唯一の機会のようです。そこで港まつりの情報をチェックしていると、開催一週間前に発表されたスケジュール表に「巡視船そうや一般公開」の文字を発見。これは行かなくてはいけません。(笑
ほんとうは、前日に釧路の近くまで移動して1泊幕営を目論んでいました。しかし先週同様、無常にも明け方の雨予報に、幕営は断念。
一般公開は午前と午後の部があるので、午後の部を目指してのんびりドライブで向かうことにしたのです。
せっかくの夏なら、やっぱり海です。いや、釧路へ行く際には夏じゃなくても海が見えるこのルートを選ぶことが多いのです…と思ったらば。道東の夏ならではとも言えますが、やっぱり海霧が出ています。
結局、釧路市内に入るまでずっとどんにょりしており、これは幕営していたら、たとえ雨が降らなくてもテント干しが必要になったことでしょう。涼しくてこれも良し、と窓を開けて走っていたら、気温はともかく湿度がものすごいので、エアコン嫌いのかわねこも、さすがに窓を閉めてスイッチを入れました。
さて、かわねこ的に釧路と言えば、お昼はやっぱり蕎麦です。今回は会場の手前にある、老舗らしい蕎麦屋さんに行ってみました。
オーダーは、そうです。
「ざると抜きで」。1回これ言ってみたかった。(笑
かしわ抜きは、ひと口目は、もうちょっと塩味が濃くてもいいかなという感じでしたが、そばつゆとの対比で、これくらいの方がしょっぱくなくていいのだ、と、食べながら気づきました。蕎麦もいい味で、堪能できました。
写真はしっかり撮り忘れましたが。(ぇ
のんびりドライブでしたが、意外と早く着いたので、市場近くの港を散策。知人に釧路出身の方がおり、事前に港まつりの情報を訊いたところ「駐車場は争奪戦ですよ」と聞いていたので、早めに現地へ行って状況を見たかったのです。
港には、いつものように、大型の漁業船が停泊しています。
これ、2年前にも見た、まき網漁船ですね。探索船を収納できる構造なのがかっこいい。これらの船は北海道ではなく、茨城県や鳥取県から来ているようです。
船体色が明灰色なので、なにか艦船っぽいかんじがぐっと来ます。
レタリングもそれっぽいし。(笑
実は、そうやはいつもこの奥の岸壁に停泊しているのですが、今日は展示のために、すぐ近くの旅客ターミナルへ移動しているのです。
ここでちょっと違和感を感じたのが、港付近は混雑しているのかと思っていたら、まったくいつもと変わらず、釣人がいる程度。
あちこち空き地っぽいところも多く、釣人がクルマを停めているもよう。駐車場難を予想して事前に手筈は整えていましたが、どうも近くの港湾関係らしい敷地に、地元のみなさんが駐車しているようで、しかもがら空きだったのでそこへ停めさせてもらい、祭り会場へ行きました。
旅客船ターミナルとあって、広い敷地にそうやが停泊しています。
まだ公開まで時間があったので、まずは会場を散策してみました。
ステージがあって、踊りを披露していたり。
露店の数がずいぶんと多いです。数十軒はあるでしょうか。
しかも昭和感あふれる、なんとも懐かしい露店が多いのです。
浴衣を着た女性や子供もあちこちにいて「お小遣いまだある?」なんて会話をしていたり。子供の頃にタイムスリップしたみたい。
くしろ港まつりは、戦後すぐから行われて、今年で実に77回目。たぶん昭和の時代から、この風景は変わっていないのでしょう。
まだ時間があるので、そうやの外観をじっくり観察できました。
PLHは「Patrol vessel Large with Helicopter」の意。
すおうもそうでしたが、ブリッジなど前部構造物のゴツさと後部がフラットデッキになっているデザインは、個人的にかなりソソります。(笑
公開時間が近づくと、人が並び始めました。最終日の午後なので、大した人数は来ないだろうと高をくくっていたのですが、意外や50名ほどが並んでいます。
そしてタラップを上って乗船。
前甲板から見学スタートです。
ブリッジ下には、60口径40㎜機関砲が据え付けられています。
意外と大口径の機関砲を積んでいるんだなと思ったのですが、海自の艦船だったらもっと大口径の速射砲とかを積むはずで、武装した不審船の対応をすることを考えると、これでも防衛装備としてはちいさい方かもしれません。
上甲板に移動すると、機関砲を見下ろせます。
資料を見たら、この機関砲も建造時からのものらしいですが、当初はこのほかに20㎜砲も積んでいて後に降ろされたので、写真の円形構造物が、20㎜砲架台の跡のようです。
ブリッジも公開されていました。
人が居すぎて写真は撮れませんでしたが。(泣
海図台が、航海の年月を物語っているように見えます。
昭和デザインの時計、味があるなあ。
ブリッジ下の船内通路が順路になっていて移動しましたが、造りがいかにも昭和の船の雰囲気で、なにか懐かしいかんじもしました。
このあと通信室も見学はさせてくれましたが、ここだけは撮影禁止。
通信設備は、任務上機密事項が多いからだと想像できます。
ちなみに通信室脇にあったので撮影しませんでしたが、通路にやっぱり神棚がありました。官船の伝統なんですね。
サロンは乗組員の憩いの場ですが、スペースの都合上、あまり広くありません。
隅に置いてある電気ストーブが、冬の過酷な任務を思わせます。
壁にはそうやの絵が飾られていました。いい絵ですね。
隣の休憩スペースらしきところには、艦船マガジンが並んでいます。
ちなみに、若い女性乗組員もいたので、訊いてみると現在36名の乗組員のうち、女性はたった3名とか。いせで女性は総員の1割と聞いたのと一致するのに気づきました。
海保も転勤が多く、3年ほどで乗り組む船が変わるそうです。
ここから後部甲板へ出ます。ここは、ヘリ用上甲板の真下に位置します。初めてそうやを見た時、その独特の甲板構造に、なんで二重甲板なのだろうと思いましたが、上甲板はヘリ着艦のために広く開ける必要があるため、停泊用の巻き上げ機等の設備を下甲板に収めた構造なのだ、と気づいたことを思い出しました。
その後部上甲板は、イベント会場になっていました。なおヘリは常時搭載しているのではなく、任務に応じて搭載するそうです。
ちいさな子供向けの、手作り感満載のアトラクション。「巡視船そうやお兄さん」だそうです。海保職員さんも大変だなあ。でも、ノリノリで楽しそう。(笑
ヘリ格納庫は、意外とこぢんまりしており、必要最小限なよう。見た感じ「ここにS-76C入るの?」という印象です。
ちなみに子どもの相手をしているのは、海保のマスコットキャラクター、うみまるくん。ウェットスーツを来ているので、海猿か。あれ?うみまるくんって猿ではなくアザラシなのでは。(違
やはり船齢が船齢だけに、日常はサビとの戦いなのだそう。しかし、ところどころこういう、船齢を感じさせる部分はあるものの、ぜんたいはとてもきれいで47年も経っているようには見えません。
乗組員のみなさんの日頃の手入れならでは、ですね。
満艦飾に彩られたそうやは、最後の勇姿なのかもしれません。いや、船って女性に例えられるので、晴れ姿か。でも艦船なのでやっぱり勇姿、かな。
乗組員に「来年でいよいよ退役ですね」と伺うと「よくご存知ですね」と言われました。(笑
「退役の予定なんですけど、まだわからないんですよ」と、ちょっと濁した回答が多かったのも、おそらくは新船もまだ建造中で、交代次期が公表されていないためでしょう。
ちなみに海保の任務も機密事項が多いため、やはり航海日数などは海自同様、家族にも言えないのだそうです。
で、甲板のテントでグッズを売っていたので、買わずにはおれません。
これと、バックプリントタイプの2種類があり、迷った末にこちらにしたのですが、いっそのこと両方買ってくれば良かったと、ちょっと後悔。(笑
来年のいまごろは、新造船が公開されるのか、あるいは本当にそうやの最後の公開となるのかわかりませんが、もし一般公開があるのなら、また来てみたいものです。
そうやの姿をじっくり見られて、いい機会でした。