
昨今の北海道で、かなり問題になっているのが、野生動物、殊にエゾシカとの衝突事故の増加です。
道内のエゾシカ生息頭数は年々増加傾向にあり、現状での生息数は推定73万頭と言われており、人間だったらかなり大きな都市の人口に匹敵します。実際、走っていても明らかに見かける頭数が増えていますし、場所によってはそれこそ牧場か、とツッコミたくなる数が群れていることすらあります。
農業、林業への被害金額も深刻で、年間で実に51億円以上にのぼり、もはや災害レベルではないのかと、個人的には思います。
これ、明治期に乱獲や大雪による頭数の激減から、昭和中期までの過度(そして場当たり的)な保護政策の結果で、熊もそうですが、ここまで来るとなんでも駆除とは言わないまでも、保護すればいいってものでもないと、道民の多数は感じているのではないでしょうか。
もっとも、駆除しようにももはや増えすぎているのと、高齢化によるハンターの減少で、全く追いついていない状況です。
そして昨年10月末には長いクルマ人生の中で、とうとう鹿ミサイル攻撃を受けてしまい、大きな被害を被りました。
メンタルが豆腐どころかスライムレベルのかわねこなので、クルマはきれいになったものの、未だ精神的ダメージは大きく、半年近く経った今でも思い返すのは正直嫌なんですが、自戒を込めて当時の状況をかいつまんで説明します。
薄曇りの比較的明るい天候の朝、まだ降雪がなかったので、ものの見事に保護色で背景と同化しており、よく言われることですが、ぶつかるまで、いや、かわねこの場合はぶつかったという認識すらなく、なにか角材にでも乗り上げたのか、という印象でした。
しかしドラレコの映像を確認すると、それはまあ見事にハッキリ写っており、しかもガードロープの内側にそれはいました。不注意であったことは間違いないのですが、通過直前まで微動だにしていないことから、目視では背景に完全に溶け込んでおり、100mほど先を先行していたクルマも、まったく車線を変えることなく走行していたので、先行車のドライバーも気づいていなかったようです。
で。
通過のまさにその瞬間、そいつはこちらへ飛び込んで来たのです。
当然回避行動もなくノーブレーキで当たったので、被害はフロントバンパー、フロント左フェンダー、インナーライナー、エアダムスカート、ヘッドライト左、ウォッシャータンクの交換と、左フロントタイヤのアライメント狂いなど。
それでもシャシーにダメージがなく、外装だけで済んだのは、不幸中の幸いと言うべきなのか。
当然保険を使いましたが、ヘッドライトなど、一部パーツは中古品を使い、免責金額を抑えたりと、いつものお店にはかなり気を使っていただきましたが、それでも総額は60万円近くかかったとか。
余談ですが、ウチのエスクは12年落ちなのでそれでもこの程度でしたが、最近の安全装備満載のクルマだとバンパー近辺に多数のセンサーが付いていたりすることから、同程度の事故でも一気に修理金額が跳ね上がるため、保険に入っていないと悲惨なことになるそうです。
昨年は、降雪前の秋遅い時期に特に事故が多く、いつものお店に入庫の際にも「鹿祭り状態」と言われるほど。特に十勝は、年前の降雪がほとんどなかったことも影響しているのか、例年12月に入ると減少するはずの衝突事故も、祭りが長引いていた、と聞きました。
そして昨年末のことです。友人たちとの忘年会的な集まりの帰りでした。
日はとっぷり暮れた、山中の国道。2ヶ月前の記憶も新しく、そのあたりも「出る」場所なのを知っていたので、警戒はしていました。
と、暗闇の中、300mほど先を先行していた、大型トラックのブレーキランプが点灯するのが見え、これはと少し速度を落としてみると、やはり道端に2頭いるのがライトの灯りに浮かび上がりました。
しかも秋と同じ状況で、全く動かず。ヤバそうな雰囲気だったので、対向車線側へステアリングを切りつつ、ホーンを鳴らします。
蛇足ですが、エスクのホーンはPIAAの音程を選べるタイプのダブルホーンで、中音と高音を組み合わせています。ヨーロピアンな低音系の方が鳴らしてはカッコいいのですが、こちらでホーンを鳴らすシーンと言えば、街中などで鳴らすことはまずなく、いわゆる「バイバイホーン」か、鹿相手。そのため、動物用には高音域の方が良いと聞いて、この組み合わせにしています。
で、ホーンを鳴らしつつ、相変わらず微動だにしないそいつの横を通過しようとした、まさにその瞬間です。ヤツがいきなり「こっちへ向かって」動き始めたのです。
ステアリングを切り足し、対向車線へ入ると同時にフルブレーキング。しかし次の瞬間、これは間に合わない、と、とっさにアクセルを全開にしました。
鹿の姿が視界から左側に消えた時、もう、詰んだ、と思いました。
回避行動を取りながら、頭の中で「なんでこっちに向かって来るんだよせっかく直ったばかりなのにまた左かよこんどはドアもやられるなもういつものお店も年末で休みだ自走できなかったらどうしようメカさんの携帯に電話するしかないなそれよかここ電波入るんだっけ」と、まさに走馬灯の如く独白が流れたのでした。
これ本当に間一髪、でした。衝撃や音はなかったものの、タイミング的には完全に当たった、と思えるものだったので、しばらく走って街中の明るい駐車帯に入った時、念のためクルマを降りて確認したほど。
よく「鹿の多い地域を走行する時は、すぐ止まれるように速度を落としましょう」などというスローガンを目にしますが、あれ、あのままブレーキングを続けていたら、間違いなく当たっていました。
その前で停車できるよう、速度を落とせばいいだろうという意見もあろうかと思いますが、完全停車してもなお、動かない鹿に遭遇したことも数回あり、前述のように、なぜかヤツらは「通過直前」に「こちらへ向かって飛び込んで来る」ので、当たるか当たらないかは、ほぼほぼ運の世界なのです。
なのでこれ以降、怖くてそれらしい地帯を通り過ぎる時は、全神経を張り詰めるようになっています。
そんなわけで、年明け早々にポチってみました。
いわゆる鹿笛です。
本当は、
鹿ソニックを付けたほうが、効果は高いのもわかっていますが、これ以上あまり電装品を増やしたくなかったのと、まずはお試しで鹿笛の中でも安いパチモン的なもので、テストすることにしました。
笛であれば理屈はほぼ同じなはずで、効果にそんな差が出るのか、というのもありますが、そもそも鹿笛自体、劇的な効果があるものではありません。
もちろん、効果がないわけではなく、鹿笛を導入したレンタカー会社では、事故回数が激減したとの話もありますが、付ければ当たらない、のではなく、クルマの存在を早めに気づかせる保険的なもの、という捉え方だと思います。
もっとも、効果確認のために巣窟的な峠にわざわざ行くのも嫌なので、その効果がわかるのは、しばらく先になりそうですが。(笑