
10年以上使っているモチュール300Vで初めて並行品を掴まされました。
これまで正規品を扱っていた店からのリピート購入で、まさかこれが送られてくるとは…
現物が見えない通販ならではのリスクを再認識させられますね。
かつては日本向け正規品とは明確な価格差があって判別出来たらしいですが、少なくとも今回は前回との価格差はありませんでしたし、相場からかけ離れていた訳でもありません。
しかし毎年着実に値上がりしている購入履歴を見ていると、従来の販売価格を維持するために並行品に切り替えた可能性もあるかと思いますが…これじゃ信用なんてあったもんじゃないです。
以前見掛けた情報では、300Vはどうやら仕向地毎に気候(湿度)の違いによる水分混入への耐性を変えているらしいので、この並行品がどこ向けかは知りませんが、走行距離が少なく比較的長いスパンで使うウチの使い方では一応気にしておいた方が良いのかも知れません。
さて、今回のオイル交換対象はミニカ。
昨年4月、10年以上前から徐々に症状が出始めていたマフラーからの白煙対策として安物オイルキャッチタンクを付けたところ、想像以上にブローバイホースからオイルを吹いていた実態が分かりました。

しかしこれまでの経験上、慢性的にオイルを吹いている訳ではないと感じていた事から、前回の交換後からキャッチタンクのチェック間隔を細かくし、どのようにオイルが溜まっていくのかを観察してみました。
すると…

2023年10月1日に258,824kmでのオイル交換で一旦キャッチタンクを空にし、年が明けた2024年1月7日の260,227km、約1,400km走行した時点まではほとんどオイルは溜まっていませんでした。
が、そこからわずか470km走行後の3月3日のチェック時(260,698km)には大量のオイル溜まりが現れます。
これはこのチェックの数日前、夜間に7,000rpm付近まで回した所でマフラーから白煙を吹いたように見えたので、その時に吹き出た物と見て間違い無いです。
その後は4月28日の交換時(261,330km)まで白煙を吹く事は無く、タンクのオイル量が激増する事もありませんでした。
やはりこれまで感じていた通り、このオイルは突発的に吹き出ている物でした。
この慢性的でなく、ある特定の運転条件でのみブローバイとして吹き出し、あるいは吸気側にはリターンせずにオイル上がりのようにマフラーから白煙を吹く症状。
当初これらは別々の原因かと思っていたのですが…
これ、実は両方ともピストンリングのフラッタリングが原因なんじゃなかろうか?
出典:林 義正「乗用車用ガソリンエンジン入門」
何らかの原因でピストンリングがピストンの溝の中で浮いてしまい、瞬間的に燃焼室の気密が保てなくなるこの状態。
林氏の著書の中では、圧縮工程中頃から上死点に向けてピストンが減速していく際、または膨張行程初期に起きる事があるとされており、これは燃焼室からクランクケースへの吹き抜けが起きるタイミングの事を指していると思われます。
一方、中村正明氏の「
ピストンスカートの潤滑メカニズムとピストンリング部へのオイル供給に関する研究(2007)」では、膨張行程後半にピストンのランド間圧力差によりトップリングが浮く現象が起きリバースブローバイが増える、と触れられており、またその他の項からもフラッタリングによってオイル上がりも起きうる事が読み取れます。
フラッタリングが起きる原因や発生工程は一旦置くとして、大量のブローバイガス吹き出しとオイル上がりという全く逆方向の事象が同じ原因で起きうる事が分かり、これが今ミニカに起きている現象と辻褄が合う気がするのです。
そして仮にフラッタリングが原因であるとすれば、H22系ミニカのキャブ仕様DOHC3G83のカタログスペックは46ps/7,000rpmなので、7,000rpm付近で白煙を吹く現象は間違いなくピストンリングの仕様によるものではありません。
…そういやファイバースコープ持っていたのを思い出したので、この機会にシリンダー内部を覗いてみましょうか…

な ん で す か こ れ
便宜的に1番シリンダーの4方向のみ掲載していますが…3気筒全部縦傷だらけです。
中には爪も引っかかるんじゃ無いかと思えるレベルの傷まで。
186,087kmでリビルトエンジンに積み替えてから走行約7.5万km。
ざっと見た感じ全体にハッキリと残っているホーニングのクロスハッチに対して大半の縦傷はかなり薄く、何なら縦傷の上に研磨痕が付いているという事は…ほとんどホーニング前から付いてた傷じゃん。
…これ多分、終わっているのはピストンリングではなくシリンダーの方って事でしょうね。
ここから推察するに、ある程度以上の高負荷になると特に深い傷の部分からピストンのセカンドランドへのガス漏れが顕著となり圧力が上がり、トップリングがフラッタリングを起こす→
→堰を切ったようにセカンドランドへの吹き抜けが起き、セカンドリングでガスが止まればシリンダー面で掻上げられたオイルが燃焼室側に吹き出し、止められなければ大量のブローバイガスがクランクケースからヘッド内のオイルを吹き飛ばしながら吸気側へ→
→どっちにしろマフラーから白煙が出る。
…事になるのでしょうか。
シリンダーのコンプレッションとはまた別の話でしょうし、検証する術が分からないのであくまで仮説に過ぎませんが。
いずれにせよノーマルの最高出力回転数すら満足に回せないようでは、わざわざ流用したMPIエンジン純正ハイカムの真価なんて望むべくもない現状。
白煙上等で回した所で、ひとたび吹き抜けてしまえばバックプレッシャーとのダブルパンチでパワーなんて出るわけありません。
ただ、通常の街乗り使用の範疇であればレベルゲージを見て分かるようなオイル食いも無いので、実用上大きな問題にはなっていないのだけは救いです。
思えば17年前にエンジンを積み替えた当時はまさかこんなに長く乗っているなんて考えてもみなかったですし、当時既にオリジナルのエンジンから異音が出ていた事も踏まえれば、これは十分現実的な判断でした。
今でこそ、前オーナーがどんな扱いをしていたか分からない中古車や中古・リビルトエンジンなんて欲しいとは思いませんが、まさか17年経った今更になって答え合わせをされるとは。
…何か新品の3G83ブロック欲しくなるなぁ。