
3月中旬に完成・装着して、一月半程経ったミニカのエナペタル製ビルシュタインダンパー。
他車種用ストラットの外筒だけを流用するという、当初は考えもしなかった手法で作製に成功しましたが、果たしてその乗り味はどうだったのか。
結論から書くと、良い部分・悪い部分がかなりはっきりした足でした。
まず良い部分としては、操縦性がこれまでとはまるで別物。
ブレーキング時の安定感、ターンインでの操舵からヨー発生のタイミングの自然さ、旋回中の終始安定したステアリングインフォメーションと適度なロール感、立ち上がりのトラクション等々、ことごとくがNew SR Specialとは比較にならない程良くなってます。
ターンインでステアリングの手応えも無く真っ直ぐ行ってしまうかと思えば、旋回中に舵角を切り足せなくなるほどの強烈なステアリング反力に見舞われるとか、今までが明らかに普通じゃなかったのですが…
それらがきれいさっぱり消えたので安心して突っ込めるようになったし、全体的に小さな舵角で素直に曲がるようになったので、3年前に装着したディレッツァDZ101がやっと有効に使える、そして何より、やっと車として信用できる動きをするようになったと感じます。
またこのテスト走行の一環として、現在諸事情により長距離走行を自粛しているビートの代走で箱根~山梨~奥秩父の山越えツーリングもこなしているので、その走りはワインディングでも確認済み。

NA1、Z33、S660、ビートの軍団に混入した一般車(推定40馬力未満)
…ムリムリムリムリかたつむり😱
あくまで公道上なので見かけ上のスピードは同じ程度でも、やはりこのメンツの中でのミニカは異色すぎて余裕が全く無く、気合いだけではどうにもならない差が要所要所で浮き彫りになる訳ですが…
それでも下りだけならどうにか食いついて行けたとなれば、この車としては上出来です。
また、ノーマルのストローク量を維持しているだけあって、ちょっとやそっとの速度では底付き(と言うかバンプタッチ)なんてまずしないのですが、リバンプからバンプに移行するような大ストローク時にはリアアクスルが左右に振られて車体後部が不穏な動きをするため、ダンパー以外の部分での限界を感じる所。


アクスルビーム式故のスカッフィングか、トレーリングアームブッシュの劣化か、調べるべき部分はあるでしょうが、走らせ方としても別にこれ以上は求めていないので、正直この辺が落とし所な気がします。
そして、悪い部分がこれまたかなりはっきりしています。
ある一定以上のギャップでの突き上げがキツい。
まず、このダンパーは普段意識しない程度の細かい振動はかなり良く吸収していて、綺麗な路面の街乗りをしているだけならノーマルダンパーよりも乗り心地が良いくらいです。
それでいてフワフワしている訳ではなく操縦性は上記の通りで、ここまでなら下手なサスキットなんて目じゃない、コンフォート指向とスポーツ指向の良いとこ取りのような足なのです。
ところが、道路工事跡のアスファルトの継ぎ目や橋の継ぎ目、路面のひび割れ、カーブの赤色ゼブラ舗装(段差舗装)等のちょっとしたギャップで、それも30~60㎞/h程度の速度ですら突き上げてくる場面がちょくちょくあります。

画像引用元:MOBY
全てのギャップで突き上げてくる訳ではなく、突き上げない程度のギャップでは気持ち悪いくらい滑らかにいなしているのに、です。
そしてある一定以上と言っても、そのボーダーラインがアスファルトの継ぎ目程度の、普通なら気にも留めないような高さの付近にあるので、「この見た目の段差でこんなに突き上げるのか!?」という印象が強く残ってしまいます。
これが荒れた路面や段差舗装が多い峠に持ち込むとより顕著で、特に段差舗装がバリモンのコーナーでは減速しても跳ねて走るどころではなくなってしまい、折角の操縦性の良さが活かせないような場面も多発します。
???「アスファルトの継ぎ目がバンピーで跳ねまくる!!」
…段差舗装の目的からすれば役目をこの上なくしっかり果たしていると言えるのでしょうが、それにしてもこれではダンパーが固すぎます。
かと思えば、アスファルト剥離のようなあからさまな穴や、下り勾配から上り勾配に切り替わるV字谷に高速で突っ込んでも意外と普段の突き上げ感には比例せず、「あれ?こんなもん?」で済む事が多かったりもするので、いろいろと感覚とのズレを感じずにはいられません。
…加減速時の安定性や、コーナーをはじめとする操縦性の良さは本当にイメージ通りか、それ以上の仕上がり。
それに通常時の乗り心地は快適そのものなのに、視覚イメージと一致しない変な突き上げ感…

画像引用元:チューニングを楽しむための動的感性工学概論 §10
上記リンク先の内容を参考にすると、ピストンスピード0.1m/sec以下はコーナリングの乗り味として感じる領域、0.3m/sec以上は穴に落ちるような状況の領域とされています。
これに現状を当てはめると、恐らく0.1m/sec以下の減衰力は自分にドンピシャに合っていて、そこから上の、小さなギャップ越え程度のピストンスピード領域、恐らく0.1~0.3m/secの過渡域の、比較的低速寄りの部分からの減衰力が高すぎるのかなと思えます。
更に穴に落ちるレベルの0.3m/sec以上では逆に、ギャップ越えの突き上げ感からイメージする程は衝撃が強くない事が多いので、減衰比としては案外低くなっているのかも知れません。
(実際には、このピストンスピードはバネ下重量の慣性によって加速度に影響を受けているはずで、ホイール&タイヤが重い程、且つ車速が乗っている程、ダンパーが動く前にギャップを通過してしまっているだけの可能性もあるので何とも言えませんが。)
で、このダンパーのセッティングは、New SR Specialをベースにノーズダイブとスクワット対策をしてもらったのは前述の通りで、送付した実物の減衰力を測定してもらった上でセッティングしてもらった物です。
(今となっては、減衰力変更のイメージがノーズダイブとスクワットに対する物だけだったのは、あまりにもざっくりしすぎだったのかも知れないとも思えますが…)

なので、この減衰力特性の元はNew SR Special由来の可能性も有り得るので、ノーマルの減衰力特性ベースだったらまた違った物になったのかも知れません。
もちろんこんな素人が、ある不満を持つダンパーの動きを「○m/sec時の減衰力が柔い/固い…」なんて感じ方・表し方は出来ないので、【不満な部分】と【変えたくない部分】をシチュエーション毎に分けて洗い出しておくのが、イメージの伝え方としては良かったのかなと思います。知らんけど。
それが最初から分かっていたとしても、理想の足を一発で作るのは無理だろうな…というのが率直な感想ですが。
そんな訳で今回のミニカのダンパーは、綺麗な路面ならば個人的な理想そのもので100点と言っても良いくらいでしたが、突き上げに関して日常使いでもまあまあ感じる場面があるので…街乗りで70点といった所でしょうか。
峠やワインディングは正直かなり場所を選びます。
路面状況さえ良ければ、かなり走れる足なのは間違いないのですが…。
…いずれオーバーホールする機会があるならば、間違いなく仕様変更ですね。