SR500のヘッドガスケットとベースガスケットを買って見ました。
SR500の腰下は縦に割れて分割に成っているのでシリンダーの底面に対して腰下の割れ目が接する事に成りますが、結構な段差があるのでエンジンを組み直す時にはシリンダーが載る面の面研とかするのかなぁ?とボケボケ思っていたのですが、段差を吸収するだけの対策はベースガスケットで行なっているようです。正確にはシリンダーが若干斜めになったりするのでしょうから良くないのでしょうけど、まぁ問題ないみたいですね。ベースガスケットの構造はメタルガスケットに紙ガスケットが貼ってあるような3層構造。重ねて圧縮の調整をする場合があると思いますが紙だけだと重ねても潰れてしまいそうですが、メタルベースなので大丈夫可能そうです。ノギスで厚さを計ってみた所1mmでした。
ヘッドガスケットはメタルの3層構造。厚さは0.8mm。特に特徴無し。
ベースガスケットは1,254円。ヘッドガスケットは2,200円なので、重ねるならばベースガスケットかな?
ここからが本題ですがSR500のエンジンをオーバーホールする場合、使用するピストンやボアによって色々な選択肢があると思いますが、圧縮比は「このピストンを使用すると幾つ。」と語られることが多くて、ガスケットでの圧縮比調整にあまり触れられてないようなので纏めてみたいと思います。
EXCELでざっと計算した結果です。
SR500を前提に、ボアの摩耗に目をつむるのと圧縮比は余り上げたくない所で言うと、
輸出SR500(XT500)ピストンを使う場合は、ベースガスケット2枚。
SR400ピストンを使う場合はベースガスケットを3枚。まぁ400ピストンを使って圧縮を上げないって言う選択肢はないと思うので2枚かな?そうすると輸出用ピストン+αくらいの圧縮比に収まります。
と、ベースガスケットを調整すると良い感じに成るようです。まるでガスケットでの調整を前提に設計されているようにも見えてしまいます。でもベースガスケットは潰れる量が多そうだから、と思う人が居ると思うので、ヘッドガスケットで調整を行う場合の計算結果も
良い感じですね。
実際ヘッドガスケットの方が潰れる方向の剛性が高いので、重ねる場合の心配要素も減らす事も出来ますし。重ねて大丈夫?なんて思う人もいるかと思いますが、4輪エンジンでは良くあった手法です(と言うかもっとエグい分厚いガスケットもあり)。
公表されている数字ベースの計算なので端数が切られていたり正確では無い部分も含まれますが、ざっとこんな感じでした。
簡単な話ですが纏めてみると少し面白い???
ガスケットで調整すると400のピストンも全然使えそうです。海外の9.0のSR500のピストンの部番や構造もSR400と同一の2J2ピストンだし、ピストンピンは国内400と海外500は共通です。強度が弱いなんて事は無いと思うんですが、使えないという意見の多くは強度とは関係は無く溶損させてるんじゃないでしょうかね?
・圧縮を上げる→燃焼速度が速くなる→点火時期ノーマルを前提にすると燃焼圧が上がる。言い換えるとノッキングとデトネーションへの余裕が減少する。→燃焼圧と同時に燃焼温度が上昇しすぎる。→ノッキング・デトネーションを誘発 →ピストンとプラグを溶かす。
本来の理屈で言うと、燃調でのガソリン冷却(燃調を濃く)と相談しながら点火時期をリタード(遅らせる)させないと燃焼温度(燃焼圧力)が過大になってしまいます。無論プラグの番手も上げるべき。リタードの手法を使うと今度は排気温度の問題も。さすがに9を超える圧縮比はハイカムと組み合わせてオーバーラップを大きく取り、実圧縮比を下げないと成立しないでしょう。オーバーラップと圧縮比が直接関連している事も忘れてはいけませんね。無論点火時期は一番大事です。輸出仕様のCDIの点火時期が知りたいところです。
F i化で耐熱処理されていてしかも安価な現行400のピストンとガスケットの追加とハイカム仕様はビュンビュン系&コスパの人には良いかも。
SR500の圧縮比の8.3や9.0ってそんなに低い値ではないんですよね。現代では12を超える圧縮比が普通なので麻痺してしまいますが、例えば90年代のPS13シルビアの1気筒500cc4気筒のSR20DEエンジンの圧縮比が9.5です。ノックセンサーを用いたノック制御など電子制御満載でこの値です。電子制御のないSR500に9.0の圧縮ってどういう状況か分かりますよね?
ハイオク高出力仕様のプリメーラのSR20DEで10.0。ツインカム&ペントルーフでしっかり燃える燃焼室や自動車の電子制御技術を持ってです。ナトリウム封入バルブも使ってるかも知れません。
ペントルーフ型の燃焼室も電子制御も持たない70年代のSR500のエンジンに、8.3や9の圧縮比が低く無い値だと相場から判断出来るのではないでしょうか?と言うかSR500に9.0はだいぶ攻めた値だと思います。SR500の燃焼室にはウォータージャケットやスキッシュエリアすら無いですから… 空冷は鞭撃たないのが基本ですよね。
圧縮比の調整にヘッドガスケットの追加は如何ですか?
因みにSR500の85〜87年の1JNから始まる部番のカムシャフトは、それ以降と比較してハイカムになっているそうです。ハイカムはオーバーラップで実圧縮比が下がるので9くらいの圧縮比とマッチするのかな?仕様選びには情報も必要ですね。
輸出ピストンはそんなに圧縮比は高くないなんて情報もあります。XTとSRではバルブの大きさが違うそうなのでSRの方が燃焼室容積が大きいのかな?
https://www.presto-c-c.jp/p/archives/8691
(ピストンはアルミ製ですが表面はハードアルマイトで硬度が上げてあります。WPCを行うとハードアルマイトが痛むと思うんですけど、、ピストンにWPCって出来るんですね)
圧縮比は上げずともノーマルで6500rpm33°位で止まってしまう進角を、7000rpm35°くらいまで進めればトルクフルで伸びやかな回転フィールのエンジンになるんじゃ無いかな?
点火時期、圧縮圧力、燃焼速度、燃焼温度(圧力)、ガソリン冷却、ノッキングとデトネーション。今度この辺りをまとめて書いてみたいと思います。
ー追記2023/6/28―
圧縮比の計算が少し間違っていたので修正しました。
Posted at 2022/06/03 22:27:57 | |
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