プリロードとかイニシャルとかって言うのは、車高が変わるだけでバネが硬くなる訳ではない。私はそう思うのですが、プリロードやイニシャルでバネが硬くなると言う理屈や、サグだしで体重を補正すると言う理屈がまかり通っている様なので、その理屈へのアンチテーゼをしてみたいと思います。
スイングアームやリアサス周りに働く力にアンチスクワットがあります。
アンチスクワット力(アンチスコート)とは、
①、タイヤが回ると路面を押す力が発生する。
② 、①の反力がリアアクスルシャフトを押してスイングアームを押す。
③、スイングアームがフレームを押して車体が前進する。
コレはスイングアームが水平の場合。アンチスクワット力は発生していません。
次にスイングアームに垂れ角がある場合。
①、タイヤが回ると路面を押す力が発生する。
② 、①の反力がリアアクスルシャフトを通じてスイングアームを押す。
③、スイングアームがフレームを押して車体が前進する。
④、
リアアクスルシャフトとピボットシャフトの高さの違いから、④の上向きの力が発生する。
この駆動力が車体を持ち上げる力、言い直すと駆動力がサスを伸ばす力がアンチスクワットの基本的な考え方に成ります。 駆動力がある時にサスをアシストして沈ませない、サスが硬くなる様な力を発生させます。
(SUZUKIのスクーターはアンチスクワットが強過ぎて、アクセルを開けるとホッピングする機種もありますね)
次にチェーンの張力がどの様に作用するか?ですが
①、タイヤが回ると路面を押す力が発生する。
② 、①の反力がリアアクスルシャフトを通じてスイングアームを押す。
③、スイングアームがフレームを押して車体が前進する。
④、リアアクスルシャフトとピボットシャフトの高さの違いから、④の上向きの力が発生する。
⑤、
チェーン張力がスイングアームを持ち上げる力(サスを縮める力)を発生させる。
なのでアンチスクワット力は、④と⑤のバランスで決まるって事ですね。普通のセッティングの状態だと
さじ加減的には④のスイングアームの垂れ角の方が支配的だそうです。ホイールスピンをするバイクのリアサスが突っ張るのはそのせいかな?
次は車高を下げて垂れ角が減った場合
④のアンチスクワット力は減少して、ピボットとチェーンの距離が大きくなるので⑤のサスを縮める力は増加する。
※アクセルを開けた時にサスが弱く感じるって事になる。
次は車高を上げて垂れ角が増えた場合
④のアンチスクワット力が増大する。⑤のサスを縮める力はチェーンとピボットが近くなった事で弱くなる。
※アクセルを開けた時にサスが強く感じるって事になる。
(絵が下手なのでピボットシャフトの位置が動いている様な表現に成ってしまっていますが、車高とピボットシャフトとスプロケットの位置関係は間違ってないので、脳内補完をお願いします。因みにDUCATIには実際にピボット位置が調整式の車両が有るそうです。)
アクセルオフの時にはエンジンブレーキが掛かり下側のチェーンに張力が発生します。リアタイヤは引きずられるのでスイングアームには後方に引かれる力が発生します。リアブレーキを掛けた場合も然りですね。その際のアンチスクワットはどの様に作用するのか? 考えてみると面白いかもしれません。実際に街中でリアブレーキを強めに掛けるだけで動作も体験出来るので、答え合わせも簡単です。
※車高が下がるとアンチスクワットが減少し、チェーン張力によるサスを縮める力は増加する。
=車高が低いとサスが縮みやすい。
※車高が上がるとアンチスクワットが増加し、チェーン張力によるサスを縮める力は減少する。
=車高が高いとサスが縮み難い。
車高によりこの様な作用(特性)がリアサス周りに発生する。
この様に車高を変化させる(プリロードを弄る)と、スイングアームの垂れ角とチェーンとピボットシャフトの距離が同時に変化するので、アンチスクワット力の発現が変化します。
ノーマルサスでもイニシャルを変化させるとバネが硬くなったり柔らかくなったり感じるのは、車高の変化によるアンチスクワット力を感じているって事になります。
「イニシャルを弄っても車高は変わるがバネの硬さに変化は起こらない。」
「プリロードやサグを弄っても車高は変わるがバネの硬さに変化は起こらない。」
「車高を変化させるとアンチスクワット力の発現に変化が起きるので、バネを硬くしたり柔らかくするのに似たサスセッティングが出来る。」
そんな事を言う私の理屈ですが
どぉでしょうか?
何となくツタナイ絵でサス周りのイメージが付いていると思うので、再度ツタナイ絵でプリロードを掛けた時の動作を考えて見ます。
装着されているサスペンションに5mmのプリロードを掛けます。サスペンションには50kgの軸重が掛かっていると仮定します。
プリロードを5mm掛けた後もオートバイが重たくなる訳ではないので軸重の50kgに変化は起こりません。そうするとバネの縮み量に変化は起きないので、結果車高が5mm上昇します。(大事な所で絵が間違えていますが簡単な理屈なのでそのままにします。)
“プリロードを掛けると軸重が増加する” = “バイクが重くなる” が成立すれば軸重が増えた分だけバネは縮み反力が増加しますが、その様な要素は見当たりませんね。
とても簡単なバネの理屈です。荷重が変わらないから縮み量に変化は起きず、位置が移動するだけ。
プリロードは上から掛けても下から掛けても同じ理屈ですね。
(私はこの考え方が単純明快で簡単過ぎて、逆にサグ出しが全然理解出来ません。。)
因みにシングルレートの2.5kg/mmのバネに50kgの荷重をかけた場合の縮み量は、50kg÷2.5kg/mm=20mmと計算が出来ます。(実際のバイクはモット重たいですが、) 100kgであれば4cmの縮み量です。逆に言うと2.5kg/cmのバネは4cm縮めると100kgの反力を発生させます。
リアサスは「サグ」で考えるより「アンチスクワット」で考えた方が正しく楽しめると思います。
乗車1Gはサスペンションバネの硬さとアンチスクワットの効果と体重のバランスで走って決めれば良いのではないのでしょうか? 駆動力が掛からない時はアンチスクワットは発生しない事だけ意識すれば良いんじゃないかな? 言い換えるとプリロードでは体重や荷物を支える根本的な解決策には成らないと言う事に成りますね。サグ出しで体重を補正とか本当ですか? 「ちゃんとサグ出してる」ってどう言う意味なんでしょうかね?(私がサグを理解出来てないので。))
サスセットのバネレートが高いなと感じている時には車高を落として見たり、体重が重いのをコンプレックスに感じている時(私の事)や荷物を積む時等には車高を上げて見たり。そんな感じの調整で良いんでないかな?そして空車1Gはバイクが暴れた時用に伸び切りにさせずに少し余裕を持たせた方が良いそうです。ソコから先はフロントとの擦り合わせですね。
因みに「瞬間中心」と言う考え方もあって、実際のスイングアームの動きとは別に、走行中に作用する仮想のピボットシャフト位置を求める考え方があります。
ドライブスプロケットとドリブンスプロケットの接線を延長した線。
スイングアームを延長した線。
その2本の線の交点が「瞬間中心」となり実際に作用する仮想のピボットシャフトの位置となるそうです。
A、実スイングアーム長
B、有効スイングアーム長
C、仮想スイングアーム長
となり、仮想スイングアーム長が長い方がリアサスペンションに落ち着きが出るそうで、仮想スイングアーム長が短いとアンチスクワットなどの特性変化が大きくなり、プログレッシブなサスペンション(意味は分かっていませんf^_^;)に成るそうです。
上記の理屈からスプロケットの交換でも瞬間中心が移動する為、サスペンションセッティングに影響が出ると言う事になります。
瞬間中心はセッティングが出ている大体の車種で、クランクシャフトの少し上前方に収まるそうですが、近年では段々と前出しにして仮想スイングアーム長を長くとる傾向だそうです。
どうでしょうかリアサスペンション。
お金を掛けずしても楽しめますね♪
あとは2本サスの弱点はリンクが無いのでリンク比が効かない事ですね。リンク比が効かないので奥での踏ん張りが出ない。レイダウンなどの何かの特性を弄る手法もありますがリンク比を考えるとどうなんでしょうか?コレも罠がありそうです。理解しないままの導入は気をつけるべき機構です。
こう言う所に気を使えるのも構造が単純で出来の悪い?SRのいい所なのでは無いでしょうか?
初めて知った方もこんな考えでイニシャルを弄って見たら楽しめるのではないかな?
面白いですね。
こちらの記事は珍しく良記事ですのでご参考まで
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.webike.net/magazine/bargain/bargain-undercarriage/45292/%3Famp%3D1%26usqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D