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2023年01月25日 イイね!

エンジンのパワーアップを考える。9

エンジンのパワーアップを考える。9今回はSRエンジンのDry Sumpについてです。

SRをパワーアップする場合には、潤滑的にも冷却的にもオイルの循環は適切に確保しなければなりません。カスタムをするにあたりノーマルの仕組みをキチンと理解していないと成らないので、今回はSRエンジンのオイル回りを見ていきたいと思います。

※SRのオイル廻りは諸説考え方が有りますので一つの理解としてご覧下さい。


先ずはドライサンプを理解する為、普通のバイクや車のエンジンで使用されている「Wet Sump」を見てみましょう。


今回は分かり易いようにエンジンを集合住宅として考えて、オイルの循環を水道水の供給ルートに例えて考えてみました。
Wet Sumpには集合住宅の下(地下?)にオイルを溜めて置くプールが有ります。これが「オイルパン」と言う部分になります。実際のエンジンだと


https://www.goobike.com/after/work/19796

こんな感じにエンジンの下部にオイルを溜める為の場所が有ります。
ココに溜まっているオイルをオイルポンプで汲み上げると同時に加圧して、フィルターを通して綺麗にしたオイルを各階のエンジンパーツに供給します。後述するDry Sumpに比べてポンプが一つで済むのでシンプルで効率的ですね。
使い終わったオイルはエンジン内を自由落下して再度オイルパンに戻り循環します。


対して「Dry Sump」 です。


地下にあるオイルパンを極小さな物にして、代わりに集合住宅に高架水槽の様なの外付けのタンクが付きました。SRではフレーム内臓のオイルタンクになります。その外付けタンクまで汲み上げる為の "スカベンジャーポンプ” が追加装備されて、オイルパンに落ちて来た使用済みオイルが浅いオイルパンから溢れない様に、ぐんぐんとタンクに汲み上げます。
汲み上げのイメージは、無くなってしまったマックのジュースとかバキュームカーです。空気と一緒にジュルジュルと勢い良く吸い上げます。



SRのエンジンはこれによりオイルパンの出っ張りが殆ど無い形状にする事が出来ました。これによってエンジンの重心位置を変える事無く最低地上高を稼ぐ事が出来ます。なのでドライサンプはオフロードバイクに導入される事が多いみたいですね。

導入の目的はさて置いて、SRエンジンの "Dry Sump化” で特異な事?と言うか理解がややこしくなる部分として、Mission と Clutch へのオイル供給がフレームタンクへ汲み上げる為のルートから分岐して供給するように変更になっている所です。
「Wet Sump」の時は集合住宅内に住んでいた管理人さんの家(Mission Clutch)が、Dry Sump化の工事のついでで隣に一戸建てを立てて引っ越したけれど、水道配管が上手く行かず? 近くのスカベンジャーポンプから取った感じ。と理解すると良いかも知れません。(上図参照)

Mission と Clutch の潤滑に空気の混ざったオイルを使って大丈夫なのか?ですが、潤滑の方式がエンジンの部品とは違い、境界潤滑なのでエア混じりでも大丈夫なんだと思われます。




ここまでで何となく?エンジンオイルの流れが分かったかと思います。
オイルパンを下に出っ張らせたくなかったので、オイルタンクを別に作ってポンプで汲み上げているんですね。管理人さんの家は特殊対応です。

2つのポンプの各容量ですが、サービスマニュアルからの抜粋で、



フィードポンプ:4.3 L/min /6500rpmrpm
スカベンジャーポンプ: 19.4 L/min /6500rpmrpm


の容量が与えられています。
では次に、ポンプの容量を含めてオイルがエンジンを一周する迄を考えてみたいと思います。 (管理人さんの家の分はややこしくなるので後で別に考える事にします。)


番号を振ったので順番に見ていきましょう。
①ではフィードポンプの容量の4.3L/min のオイルがオイルタンクからポンプに入り加圧されてエンジンの各部に供給されます。
エンジン各部で使用されたオイルは②のオイルパンに落ちて行きます。落ちる量は①のオイルの供給量と "イコール" となりますので、4.3L/min のオイルが落ちる事になります。
そして③のスカベンジャーポンプで吸い上げますが、ポンプ容量が 19.4L/minと相対的に大きいので ②の4.3L/min のオイルと残りの容量の15.1L/min の空気(ブローバイ)を吸う事になります。④でフレームタンクの空気室に吐き出された空気はエンジン内部を通りオイルパンまで繋がっているので、Scavenger Pumpで吸った空気は加圧される事が無く④’のようにグルグル循環される事になります。なのでオイルと空気をタンクまで汲み上げるだけなので、オイル経路に高低差以上の圧力が掛からない となります。

これで大きな全体の流れをザックリ理解できたと思います。次に管理人さんの家の流れを考えると


①で4.3LのオイルとMission/Clutchからの戻りが合流して4.3+α となりスカベンジャーポンプが吸い上げます。
②では Mission/Clutchからの戻り量と同じだけの α分のオイルが Mission/Clutchに分割して供給されますので、タンクに行く分は4.3+α -α でフィードポンプの容量の4.3L/minとなります。
③はスカベンジャーポンプを通ったオイル量が α分だけ増えたので、空気の量は -α となります。

簡単に言えば、オイルパン ~ スカベンポンプ後の分岐点 までは Feed Pomp容量+α分 のオイルが流れるだけですね。 のなで α分 のオイルが増加したとしても、オイルタンクに行くエアーの量がその分減るだけだという事が分かります。
油圧が掛からないスカベン系のオイル通路ですが、管理人さんの家にはオイルタンクの油面との高低差の分だけ油圧が掛かる事が分かりますね。


管理人さんの家に流れるオイルにはエアーが混入しているので計算しても正確なオイル量は分かりませんし、実際どの程度の流量が流れているのか分かりませんが、大体でOKです。

ここ迄で SRのドライサンプに流れるオイルの全体像が理解できたと思います。


※正確には分からないスカベン系から分岐を取った分の流量を「α分」として定義しておきます。




SRのオイル循環の全体像を正確にザックリと言うと、
1,大きな流れとして Feed Pump容量でぐるっとエンジン全体を循環するループ経路と、
2,スカベン系でタンクに行く手前で分岐する α容量のループ経路と、
3,スカベン系のオイルの大半(77%)は空気(ブローバイ)である事と、
4,スカベン系を循環する空気のループが有る。
という事が分かれば完璧です。


ではサービスマニュアルの「オイル潤滑系統図」です。



もう完璧に理解出来ましたね。Scavenger Pumpで吸われた空気は、オイルタンクへ入った後に空気用のリターン配管でエンジンに戻されて再度Scavenger Pumpで循環される。と言うのがミソになります。

ココで一つ裏技?の紹介です。Feed Pump の流量の増加は強化オイルポンプの装着で叶いますが、Scavenger Pump 側の α分 の流量の増加を簡単に行う方法も有ります。
オイルタンクからオイルパンに繋がるエアーの戻し配管にオリフィスを入れて、少し絞って通りを悪くすると、Scavenger Pump 以降のリターン配管に微圧を掛ける事が出来ます。オイルタンクからエアーを抜け難くする事で、スカベンジャーポンプから送られて来るオイルと空気がオイルタンクに入り難くなります。そうなると相対的に流れ易くなったMissionやClutch方向に流れが傾く事に成り、α分の流量が増える結果と成ります。


絵で言うとココになります。


詳しくは こちら をご覧下さい。
特にクラッチのプッシュロッドの摩耗防止に効果を感じられますのでお勧めです。




ではここからはカスタムを行った場合に何が起きるのか?を見ていきます。

■先ずは、Daytona KEDOの 強化オイルポンプから




これは Feed Pump の容量が+50% になるアイテムです。ノーマルのFeed Pumpが4.3Lなので、4.3+50% = 6.45L になる計算です。
何故だか強化オイルポンプの導入に否定的な向きもあるようですが? 実際に何が起きるのかを見てみたいと思います。



左がノーマルの状態で、右が強化オイルポンプです。当然強化オイルポンプの Feed Pump の流量が150%になったのでオイルの循環量が50%増えています。それに伴ってスカベンジャーポンプのエアーを吸う量も減少します。なのでスカベン系に流れるオイルの気泡率は77%から →66%に減少し、ミッションやクラッチに行く αのオイル量は約15%増量される事になります。
(前出の α分のオイル流量は考慮しない計算結果ですが誤差は小さいと思います。計算してみるとスカベン系の空気の割合はかなり多いですね。)

一見上手く行っているようですが一点だけ注意点が有ります。



ヘッドに行くオイルラインにボトルネックが有って、ヘッドへのオイル流量が規制されてしまい腰下のオイルが増えすぎてしまう問題です。



対処方法はこちら こちら が参考になると思いますのでご覧下さい。
(ノーマル状態でも400では流量を規制し過ぎてると思いますので、ノーマルポンプでもボルトネックは解消しておくのが良いと思います。)


他に起きる事としては Scavenger Pump の汲み上げるオイル量も増加するので、オイルクーラーを装着している際にはオイルクーラーを流れるオイル量も増加するのでクーリングの効率も上がります。これも150%になるのかな?


実際、強化オイルポンプでオイル流量が上がって何が良いのか?ですが、私が思う所、高回転時の最高流量にはあまり意味を感じず、逆に低回転の低流量時に真価を発揮すると思います。オイルポンプはエンジン回転に比例した回転になるので、渋滞などトロトロ走っている場合には少量のオイルしか循環しなくなります。アイドリング回転を1000rpmとするとその時の流量は0.66Lとなります。渋滞路などで発熱が多くなる場面でオイルの流量は減少してしまうのです。そう言う場面でオイル流量を150%確保してくれるのが強化オイルポンプの良い所です。低回転でもソレなりのオイル流量を確保してオイルが切れ易いと思われるロッカーアム周りにオイルを廻したり、ヘッド周りに過剰に貯まったエンジン内の熱をオイルを媒体にエンジン外に持ち出したり全体に散らして希釈します。例えオイルクーラーを付けていたとしても走行風以前の問題でオイルの循環がなければ意味が無いですからね。そう言う意味でも効果が期待出来ます。当然高回転の高流量時にはエンジンの発熱も大きくなっているので、多量のオイルでエンジン内の熱を多く運搬するのに貢献します。

強化オイルポンプはサーキットなどの高速走行向けと言うよりも、ストリート走行での熱負荷が高い状況に向けて効果を発揮します!

逆にサーキットなど高回転を多用する場合には、強化オイルポンプは不要です。高回転で回っていれば十分な油量が確保出来るのがノーマルポンプです。パリダカールラリーを走ったTT500のレースエンジンの末裔ですからね。そう言うのが得意な体質です。SRも。
逆にトロトロした走行は、昔のレーサーエンジンの末裔なので体質に合いません。。



“高回転志向のエンジンをストリート対応する。”


そんな感じだと思います。強化オイルポンプの意味。





■次に、スカベンポンプのオイルをヘッドに廻す方式を考えます。



早々に集合住宅の絵にしてみました。
一見問題は無いように見えますが、3点ほど疑問点が有ります。

まず1点目。


スカベン系のリターンオイルには、前述の通りポンプで発生する油圧は掛かりません。なので高低差で発生する油圧で潤滑通路にオイルを送る必要が有りますが、ヘッドの位置はミッションに比べて大分高くなるのでオイルを送る力が弱いのではないのか?



実寸で見てみても、クラッチ周りに掛かる高低差の油圧と、ヘッドに掛けられる高低差での油圧は、半分以下になってしまいます。

2点目
ヘッド内のオイル通路で2つのロッカーアームは繋がっています。油圧の無いスカベン系の油路と、油圧のある Feed Pump 側の油路が繋がる事になるので、Feed Pump 側のオイルがスカベン系に流れ出て逆流してしまうのではないか?


3点目は、そもそも気泡率が77%のスカベン系のオイルを注入して、オイル量が確保できるのか? 空気はヘッドに入れてしまっても大丈夫なのか?です。



これらは α分のオイルを増量・増圧する為にオイルのリターン配管や前述のエアー配管を絞る事で幾分かのオイルの流れを改善する事が出来るかと思います。α分のオイルを増加させてもオイルタンクに昇るオイルの量は Feed Pumpの容量と等しくなる事は前述の通りで問題は発生しません。ですが「 ロッカーアームのIN・EXHの油路の繋がりは断絶する事が望ましい」と思いますが、どうなのでしょうか??

また、スカベン系オイルの導入時のオイルホースの交換と同時に、オイル経路のボルトネックになっているバンジョーボルトが共に変更になります。そのFeed Pump側の流れの改善効果とスカベン系オイルの導入での効果が混同されている様にも感じます。

と少しネガティブな面を羅列しましたが、冒頭にもある様に「SRのオイル廻りは諸説考え方が有りますので、一つの理解としてご覧下さい。」




以上、今回はSRエンジンのオイル潤滑系統を追ってみました。


結論。
オイルの流量と分配は、車両の使用目的に合わせて変更する必要がある。

ストリートでの熱問題と潤滑には、「強化オイルポンプ」を選択し、
サーキットユースなど高回転でのパフォーマンスには逆に「ノーマルオイルポンプ」で良い。

どちらにしてもヘッドへの油量がバンジョーボルトの穴径で絞られているので、バンジョーボルトの穴径拡大は重要で効果が大きい。



オイルポンプのオイルシールのメクレにも注意が必要です。



SRのサーキットガチ勢が縦型のオイルクーラーを使用する理由も考えると面白いと思います。横型のオイルクーラーも下からオイルを入れるのと、上から入れるのではオイルと空気の挙動はどう変わるでしょうか?


最後までお付き合い有難うございましたw


Posted at 2023/01/26 00:48:17 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2023年01月22日 イイね!

【寒波】軽油の耐寒性。。

【寒波】軽油の耐寒性。。どうやら来週にどえらい寒波が来るらしいですね。

ディーゼルの燃料になる軽油ですが、寒さで凍ってしまわないか?チョットだけ調べてみました。
軽油には潤滑性向上の為パラフィンが入っているそうです。パラフィンって簡単に言うと「蝋」かな。ソレが低温に成ると析出してしまう様です。

で先ずは軽油の種類ですが、特1〜特3号までの5つのグレードが設定されていて、年間を通じて違う種類が販売されている様です。勿論凍結防止の為でしょうね。



関東だと今の時期は2号軽油が販売されている様です。
では2号軽油の凍結温度は何度なのか?ですが、



−7.5度以下で流動しなくなりますが、−5度の目詰まり点という項目も見受けられます。フィルターで詰まっちゃうのかな?

なので来週の寒波はギリギリな感じかな?

朝一は 「勝負!」 かも知れないですね。



https://www.amazon.co.jp/s?k=軽油+凍結防止剤&crid=BU31IH5000EZ&sprefix=軽油+凍結防止剤%2Caps%2C202&ref=nb_sb_noss_1





軽油凍結防止剤という商品もある様ですが、チョット高値ですね。

Posted at 2023/01/22 20:23:42 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2023年01月15日 イイね!

エンジンのパワーアップを考える。8

エンジンのパワーアップを考える。8今回のパワーアップを考えるは「慣性による吸排気の効率向上」の予定でしたが、YoutuberのSRGarageさんの今週の動画を見て完全に感化された、「エンジンの高回転化」を考えるです。

SR400(2型)に乗ると、エンジンのスペックや車両のキャラクターに似合わず?意外と高回転が回るんですね。ただパンチが有る高回転と言うよりは回転に合わせて車速が上がって行くような感じで、もう少しパンチが有れば昔よく使われた表現で「胸のすく加速」が得られるような。かつレブリミットまでトルクの落ち込みが割と無いしエンジンが回転上昇を嫌がる感じも無いので、7000rpmを超える様な回転数でもトルクが得られるんじゃないかな?と感じます。
一転SR500(2型)に乗ると、7000rpmを回すと「エンヂンガンバッテマース」「イヤ〜ン。」と言う様な振動が発生して、それ以上回しては良くない感じを受けます。
なのでパワーアップを考えると400はレブリミットを超える高回転化を目指し、500は7000rpmまでのトルクを稼ぐのがフィーリングを含めて良いのかと思います。

では、その回転フィーリングの個性は一体何処から来ているのか?と言う話になるのですが、これはエンジンのスペックで1番重要と言っても過言ではない項目の「平均ピストンスピード(m/s)」が関係してきます(←Wikipediaへのリンク)。ピストンがどれだけの速さで移動しているのか?という項目ですが、

平均ピストンスピード(m/s) = (エンジン回転数÷60) × (ストロークmm÷1000) × 2

の式で求められます。求める単位がm/sなので、エンジン回転数を秒に変換する為60で割り、ストロークの単位をmに変換し往復なので2を掛けるとなります。ピストンスピードの相場は昔読んだ本では、レース用エンジンで20m/s。市販車では15m/s位と紹介されていました。現代ではレース用で25m/s?。市販車で20m/s位が相場と言ったところでしょうか。



SR400、SR500とその他のエンジンのピストンスピードを計算してみました。ピストンは上死点と下死点では一旦停止しているので、平均ピストンスピードと最高速度では違う値になります。最高速度はクランクピンの周速と粗イコールなので回転数×ストローク×π で求まります。
平均スピードはSR500では一般で言う上限の20m/sに届いてしまっています。古いエンジンなので15m/sでもおかしく無いのですが流石レーサーエンジンの末裔ですね(寿命もレーシングでしょうけど)。1秒で20mもピストンを引き摺ったら摩擦熱だけでも相当なモノになりそうです。最高速度は秒速約32mです。分速にすると1900m。時速だと115kmに達します。時速だとイメージがつき易いですね。
一方ショートストロークのSR400では500に比べればかなりの余裕がある事が分かります。このピストンスピードの違いが要因となって排気量違いでフィーリングに差が生まれるんですね。

~余談~
これはどんなエンジンでも割と同じで、ピストンスピードが速いエンジンだとゆっくり乗っていても「元気あるエンジンだなぁ~」なんて感想を持つ事になります。過去乗った大好きなエンジンに、4G63 88mm。KA24DE 96mm。今乗っている車YD25 92mm。SR500 84mm。どれも高回転を回すとあまり聞いた事のない「ぞぉー」って、実ストロークの長いロングストロークエンジン特有の低音が響くんです。私はそんなロングストロークエンジンが大好きです。w
一般にロングストロークと言われる250TRも乗りましたが、66×73mmなのでボアスト比としては凄くロングストロークなのですが絶対量がまだまだでした。絶対的な長さが重要です♬ 欲を言うと90mm/6500rpmで20m/sくらいが基準になって満足行く感じかな?ボアと気筒数は構いません。当然コンロッドは長い方が好ましいです。 GB350の設計はそんなロングストロークオタクの人が行ったのかな?なんて思ったりします。
でもピストンが高速に動くだけに全般的に痛みは早いみたいです💀
ロングストローク好きにとってこのピストンスピードと回転数の話は、一番 ハァハァするお話なんです。
~余談終わり~

なのでSR400のピストンスピードをSR500と同等まで持っていき、9000rpmまで回せるな?という計算が成り立ちます。
500ccで7000rpm=一分間に500ccを3500回燃焼させる。=1,750Lの混合気を燃焼。
400ccで9000rpm=400cc×4500回 = 1,800Lの混合気を燃焼。500cc/7000rpmエンジンのポテンシャルを超えましたね。そんな計算も成り立つのかな?
同じ平均ピストンスピードであれば、ショートストロークにして回転数を稼いだ方が方が高出力エンジンとなると言う事ですね。
高回転化のSpecialエンジンとして参考にクオーターマルチ250cc4気筒で18500rpm回るFZR250Rのエンジンを見てみると、SR500と比べて特にピストンスピードが速いと言う事は無いようです。回転数で言うと3倍近い差が有るのに不思議に感じますね。1気筒60cc程なのでピストンもコンロッドも軽いので余裕でしょう。計算すると2,312Lの混合気を燃焼出来るようです。なので45ps出せるんですね。
SRX600に関しては変態エンジンの部類ですね。R1のそれよりも高速になっています。この辺はマニアが寄り付く魅力になっているのかも知れません。SRXのエンジンはYAMAHAの開発では無くて、外国のエンジン開発・生産メーカーへ委託して開発したのでコンセプトや技術面で普通と違う所があるのかも知れません。

ショートストロークとかロングストロークと言うのがボア・ストローク比で語られる事が多いのですが、本質的には実ストロークの長さが重要となります。
なのでエンジンのレブリミットは平均ピストンスピードによって大体決まってくると言うのと、「高回転型エンジン=高性能」と言うよりも「高ピストンスピードエンジン=高性能」と言う感じが分かるかと思います。


いやー、エンジンって本当〜に面白いですね。



それに付随して大事な項目になるのが「連桿比」と言って(←Wikipediaへのリンク)、クランクの回転によりコンロッドがどれだけ傾くのか?に関連する値が有ります。クランクシャフトのピンが横90°にある時にコンロッドが一番傾く事になりますが、この傾きがピストンが燃焼圧力を受けて下向きに発生した力を、ピストンをシリンダー壁に強く擦り付ける力に変換してしまいます。コンロッドが一切傾かずに下に移動してクランクを回転させることが出来ればピストンがシリンダー壁に押し当てられることが無いのでそれが一番なのですが、現実には不可能ですね。なのでコンロッドを長く取って傾きが緩く成るように設定しますが、その分エンジンに高さが出てしまうので自由には伸ばせないようです。(オフセットクランクなんていう技術もこのあたりに関連する話です。)
しかもコンロッドの傾きが一番大きくなるクランクが横90°に来た時がピストンスピードが最高速度を迎える瞬間となっているので影響は小さくありません(と思われます)。なので昔のチューニングでは連桿比を稼ぐためにシリンダーに下駄をはかせてロングコンロッドを装着することもあったようです。

 リンクはこちら


参考までに他車種のサービスマニュアルの謳い文句です。

SR500をストロークアップして高回転を多用すると、速過ぎるピストンスピードと悪化した連桿比でピストンの負担は増大してブロックの破損へと繋がる。と言う事がロジカルに説明が付く事になります。サーキットで一発を狙うエンジンや、ちょくちょくエンジンを開ける人であればいいのですが、一度エンジンを積んだら5万キロは走らないととなると厳しい選択になると思います。ピストンスピードが速くなる場合は特に連桿比を上げて対策する必要が有ると言う事になります。
時速115km/hで動くピストンをシリンダーに押し付ける力ですから、全く無視は出来ません。
一方SR400はSR500をストロークダウンする形でコンロッドを長くしてピストンの高さを合わせているので、4.56と言うレーシングエンジンの様な連桿比が与えられています。高回転まで回すポテンシャルはレーシングエンジン並です。前にも何処かに書きましたがSR400の最大の個性はココだと思います。
(SR500は3.37位かな? WEB上を検索しても出てきませんでした)

エンジンのハイトを抑えたり、ストロークを長く取ったエンジンでは連桿比が小さくなりがちですが、コンロッドが左右に傾く振動がエンジンの回転フィーリングにプラスされる事になるので雑味が出てくる事になります。SR400は連関比がすごく大きいのであんなにマイルドで雑味が無い振動が出るのだと思います。


ここまで腰下の高回転化を考える。でした。バルブ周りも別途高回転化の対策は必要なのでそれはまた次回以降に。

ー追記ー
忘れてました。振動の件ですが単気筒ではオーバーバランス率を調整してエンジンの振動が出る「方向」が調整されています。特にバランサーを持たないSRのエンジンは振動を減衰する事が出来ないので、振動を出す方向は神経質に設定されている筈です。ピストン他、部品を交換する場合はオーバーバランス率をノーマルと同じに設定する事が賢明だと思います。
参考 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/エンジンの振動
ー追記終わりー



もう一つピストン周りで面白い記事を見つけましたので紹介です。
エンジンオイルの話では高温になる空冷エンジンでは添加剤の劣化が早いので良質な鉱物油が良い。なんて話もありますが、エンジンの部位別による潤滑方式により鉱物油では苦手な部分が有るそうです。写真では油膜で浮くことが無い方式の境界潤滑で特に添加剤が必要だと言う表現になっています。ピストンスピードが上昇した場合にはやはり良質なエンジンオイルが必要になる様です。
https://car.motor-fan.jp/tech/10016132

安いオイルを頻度良く交換では賄えない部分もあると言えそうです。



まとめ
SR400の高回転化によるSR500超えって、ロマンがあって良いですね。




今回はFiではフルコンの導入などをしないと成らないネタで縁遠くてつまらないと思うので、Fi車限定で一つ情報です(既に知っている方が大半だと思います)。

Fiの燃調を行う方法としては色々な方法や商品が有るようですが、大別して排気センサーの信号を修正して燃料を調整する「急速二輪車簡単」みたいな商品と、ノーマルのコントロールユニットの設定を変更して燃調を調整する「YAMAHAFI ダイアグノステイツク ツール」の2種類に分かれると思います。

前者は排気センサーや負圧の信号を使いますがノーマルのコントロールユニットがセンサーでのフィードバック制御を行うのは中回転中負荷程度までで、高負荷や高回転はフィードバックを受け入れていません(maybe)。なので燃調の変更もその運転範囲に留まります。後者はコントロルユニットに一旦接続してユニット内の設定を直接書き換え出来るので広い範囲(全域?)での燃調の変更になりますし、サブコンの様にノーマルコンピューターの動作の邪魔をする可能性も有りません。燃調は表現的にCoの調整という事で出来るそうです。データを書き換えるだけなので仲間内で1台あれば何台でも設定変更が出来るのでコスパも良いですね。部品番号は90890-03182です。効果は憶測ですがw自己責任でお試しあれ(私はやった事はありません)。併用なんて手も有るかもですね。
Posted at 2023/01/15 23:32:58 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記
2023年01月10日 イイね!

エンジンのパワーアップを考える。7

エンジンのパワーアップを考える。7今回はみんな大好き、吸排気です。

前回の掲載ではリフト量の考え方に間違いがあったので、再編集して再掲載します。

4ストロークエンジンの吸排気系の要であり、基本である吸気排気工程の司令塔、「カムシャフト」について考えてみたいと思います。
4ストロークと言う呼称は正確にエンジンの特徴を示さないので4サイクルが正しいなんて言う専門書もありますが、ここは4ストロークで行きたいと思います。

4ストロークエンジンは知っての通り の4工程から成り、吸気工程では吸気弁、排気工程では排気弁を開いて燃焼室のガスの入れ替えを行っているのは承知の通りですね。

ではサービスマニュアルからスペックを読み取ってみます。



〇吸気
開き BTDC40° 閉じ ABDC64° 最大リフト 6.69mm
□排気
開き BBDC72° 閉じ ATDC32° 最大リフト 6.68mm

簡単な事しか書いて無いんですけどね。何か難しく思っちゃいますよネ。今日はココを攻めてみたいと思います。

どう表現したら分かり易いのかしばらく考えたのですが、吸排気を考えるときには「膨張(燃焼)」→「排気」→「吸気」→「圧縮」と始まりのサイクルを変えると分かり易いみたいです。



ATDC: アフター トップ デス センター
BTDC: ビフォアー トップ デス センター
ABDC: アフター ボトム デス センター
BBDC: ビフォアー ボトム デス センター

これは大丈夫ですかね。BDCは下死点。TDCは上死点。頭文字のAは Afterなので後。Bは Beforeなので前。
サービスマニュアルの数値を図上に展開してみました。エンジンの回転をイメージしてみて下さい。 想像していたバルブが開くタイミングとは違うのでは無いでしょうか? 排気工程は膨張行程に72°と大分食い込んでいるし、吸気工程は圧縮工程に64°と大分食い込んでいます。圧縮なんて点火するまでに90°分位しか行われて無いんですね。

ちょっと蛇足ですが前回までで確認した点火タイミングも図に入れてみました。33°での点火って圧縮工程の中盤? 結構早いタイミングで行われています。ウオタニさんのHPとか他でもありましたが、ATDC10°位で最大燃焼圧を迎えるように点火すると最大の熱効率(燃焼効率)に成るって紹介も見られます。ですが基本はP-V線図得られる圧力の面積を最大化する事です。


おまけでP-V線図を展開した筒内圧の変動を一緒にしてみました。何となくイメージ出来ればと。


チョット脱線しちゃいましたが気を取り直して。4ストロークエンジンって2ストロークエンジンに比べてしっかりとした吸排気のタイミングが有るイメージですが、実際には大袈裟に言うと2ストロークとそんなには変わらない、他の工程に入り込んで切れ目がぼやぼやした感じが掴めれば目的達成です。十分にイメトレしてみて下さい。




特にここ、排気弁と吸気弁が同時に空いている期間は4サイクルで表現される吸気,圧縮,膨張,排気には表現されていない、存在しない事にされてしまっている「掃気工程」となっています。
ざっくりでピストンの上下運動で出来る容積(排気量)を500ccとして、燃焼室の容積を50ccとすると計550ccの容積が有りますが、ピストンの上下で吸排気出来る容積は500ccなので、全部の排気ガスを排出する事が出来ません。なので上死点でのピストンがほぼ動きが止まり燃焼室に排気ガスが残った状態の時に、エキパイを勢い良く流れていた排気ガスに急ブレーキが掛かり慣性力で発生するエキゾーストポート付近の「負圧」で燃焼室内の排気ガスを吸い出す「掃気工程」が高出力を目指す4ストエンジンに必要で存在しています。
550ccの容積を持つ排気量500ccのエンジンは、掃気を全く行わなければ1度に500ccの混合気を吸い込み燃焼させますが、掃気を積極的に行うエンジンであれば混合気を550cc吸い込んで燃焼させる事が可能になります。
こう言うのを普段 「燃焼効率の向上」とか言うのかな? 充填効率ですね。w



簡単に表現するとここはオーバーラップですね。エキゾーストバルブもインテークバルブも開いているけれどピストンが急減速してほぼ止まるので、エキパイ内の排気ガスに急ブレーキがかかり負圧が発生。その負圧で燃焼室が吸われる形になり開いている吸気弁から混合気が流れ込む。良く出来ていますね。
なのですが、掃気が発生するオーバーラップのクランクの「角度」は回転数によっても常に同じなので、エンジン回転の上昇と共にオーバーラップの「時間」は短くなってしまうと言う不都合に見舞われています。高回転ではエキパイの流速が好条件なのに何とも勿体無い。。なのでオーバーラップの角度は高回転に合わせて広く取りたい所です。
その逆もまた然りで、低回転ではエキパイの流速が十分に上がらず、負圧の発生が少ないときの方がオーバーラップの実時間が長くなってしまうという不都合に見舞われています。 残念ですね。
こういう事が有るので特に単気筒の排気系は2ストロークエンジンの排気チャンバーと似た様な効果が求められるようになるそうです。
SRのマフラーの設計は難しいとか言う話や、SRのノーマルマフラーに弁当箱が付く理由。ハイパワーを狙うアフターのマフラーに長くて太く容積を稼ぐ物が有ったり。
単気筒のエキパイに高圧の排気ガスが流れる時間を想像して見て下さい。3/4の時間は排気管の仕事はして無い?!マフラーの話はまた別の機会に。
ついでにエキゾーストポートに繋がれたAISですが、なんで排気圧力があるエキゾーストに大気圧の空気が入っていくのか?が理解できずに、逆に排気ガスをエアクリに導いて排気ガスを再燃焼させるなんて都市伝説が有りますが、これも掃気が出来る理屈と同じでエキパイ内の負圧を利用して排気管に酸素を含む大気を引き込んでいます。逆流はリード弁で防ぐ感じ。リッチな燃調で燃焼させた酸素不足の未燃ガスに酸素を混ぜて触媒で酸化させる(燃やす)事を目的にしています。でも掃気をするために使いたい負圧をAISに取られるとはフィーリングを優先したいサーキット走行?では理にはかないません。キャブ車でコンピューター制御との整合とか関係が無いのであれば、、。そういう事ですね。
FiでAISを止めるのはコンピューター次第で得る物と失うもの症状で決めないとダメかな? 昔に250TRでAISを殺しましたが制御と合わずイマイチ調子が上がらなく、AISは生かしておいた方がフィーリングが良かったです。これはコンピューターの制御次第なので車種毎に違うでしょう。
因みにの因みにですが、排気ガスを吸気側に環流して燃焼室に導くのはEGRといって、AISが触媒での排気ガスの浄化(CO、HCの酸化)を目的にしてしているのに対して、EGRは燃焼室に不燃性ガスとして排気ガスを取り込む事で混合気の燃焼温度を下げて窒素酸化物(NOx)の発生を抑えたり、吸入負圧を下げてポンピングロスを減らし燃費の改善などに使われています。再燃焼させて燃焼効率を向上させるとか言う理屈は都市伝説ですね。

ふたたび脱線してしまったので気を取り直して。w
開弁のタイミングが大分わかったと思うので、次はリフト量の感じもFIXしてみます。
吸排気の重なるほんの小さい三角形の面積がオーバーラップになります。


開弁時期の数値で見たオーバーラップのタイミングは割と長いのですが、カムプロフィールでのリフト量までを加味して考えるとノーマルのカムなので低速域のトルク確保のためオーバーラップとしてはやはりそんなに大きくは取られていない事が分かります。
リフトの高さを縦軸に取りましたが、サービスマニュアル表記は7mm弱の値ですが、10.2mm程のリフトで書いています。これはロッカーアームのレバー比がリフト量に影響する為です。リンク比と実リフト量はこちらの整備手帳で 実際に測って算出しました。実際のリフト量はサービスマニュアルの数値からは分からないんです。。
図の開弁の速さ(斜度)はサービスマニュアルからは読み取れないので適当に書いていますが、傾斜を立てて吸排気の面積を稼ぐようにすると弁の移動に強い加速度が付くのでロッカーアームなどの当たりが強くなり、摩耗や打音が厳しくなるので純正カムではあまり強い加速度は与えられていない筈です。


サービスマニュアルの数値からですが、もうココ迄でノーマルカムのほぼ全て?が把握出来ましたねW。




次に吸排気効率を向上する為に導入する「ハイカム」について考えてみましょう。



ヨシムラのHPから持ってきましたが、SR用としてはノーマルバルブスプリングが使える唯一の?ハイカムの ST-1Mです。商品説明をパット見ましたが、ク〇みたいなことしか書いてませんね。大事なのはこっち


MAX LIFT(mm) IN 11.30mm / EX 10.80mm
1mm DURATION(゜) IN 252゜/ EX 248゜


ですが、最大リフトと作用角の情報だけで他の大事な情報が欠落しています。くだらない商品説明を書く位だったらSPECをちゃんと載せて欲しいです。。
ある情報だけで図を作ってみます。



何処で開いているかの情報が無いのでとりあえず左寄せで図形化。大体IN/EXH両方とも250°位ですが、純正カムとは表記の方法が違う様です。ST-1の作用角の表記は1mmリフト時の値なので、1mmの所で250°の図にします。リフト量はINが11.3mm、EXHは10.8mmです。

中心角は情報が無いので、ノーマルに合わせて書き直すと、



こんな感じです。
リフトの高さは1マス1mmに成っているのでハイカムの方が少しリフト量が大きく成っているのが分かります。作用角は純正とハイカムであまり変わらない。。と言うのもSRのカムの作用角は現代のエンジン設計の思想から考えると、と~っても広く設計されているだそうです。その代わりバルブを開閉するスピードはあまり早くないと思われます。ビックボア2バルブの大きく重いバルブをあまり早く動かすことが出来なかったとか理由があったのでしょう。AAAさんのSRの開発陣との対談記事の中でも触れられていました。SRのエンジンが排気音がデカくて吸気音もデカい理由はこの辺からかな?



リンクはこちら

作用角としては4°〜8°の小さな変化ですが、オーバーラップの面積だけ見れば2割から3割は面積が大きくなったかな?さらにバルブタイミングをずらしたりすると大きく変わるかもしれないですね。
少しの数値の差ですが性能に与る影響は大きいのではないでしょうか?

ヨシムラのST-1はノーマルバルブスプリングが使えるとの事なので、ノーマルカムの勾配と合わせたイラストにしました。傾斜を強くしてバルブが開くスピードが速くなると、カム山の頂上に達した時に勢い良く開くバルブが自らの重量による慣性で止まれずにカム山からジャンプしてしまう現象が発生してしまいます。そうなるとピストンとバルブが衝突してしまうのでそれを防止する為に強化スプリングが必要になります。
この辺りはこちらのサイトがとても参考になります。
見えないバルブの見えない配慮
リンクの内容を一通り読むと、ヨシムラST-1のEXHカムは控え目にリフト量を増やして、比較してインテークは大きくリフト量を増やしている理由の台所事情が分かって面白いと思います。(EXHはピストンに当たるリスクが格段に高いんですね。)


次は純正のハイカムと言われる、'78-87年の車両に付いているカムのプロフィールを、ST-1と比較してみたいと思います。
実は上で比較していたノーマルカムは、’88-Final用のカムでした。それでも作用角はそれなりに大きい感じでしたが、'78-87のカムは純正ハイカムと言われるだけあってさらに作用角・リフトとも大きくなっています。(上の対談での作用角の話は純正ハイカムの話ですね)



'78-87カムの作用角の情報は88年のサービスマニュアル追補版にしか載っていないので調べるのに骨が折れました。


それを基に先程の整備手帳で推測した値を元に図を重ねてみると、、、



純正ハイカムとST-1で殆ど変わらなくなってしまいました。。。
流石純正ハイカムと呼ばれるだけはありますね。
何処ぞのショップさんのブログや、何処かのレビューでも純正ハイカムとST-1は同じ、とかフィーリングが似ている様なことが書いてありましたが、数値から見ると納得です。






純正ハイカムとソレに合わせなければならないメッキタイプのロッカーアーム。
カムは数年前は3万円台だったそうですが、今は価が落ち着いている様です。(チャンス!)

エンジンのオーバーホールのついでに如何ですか??

純正ハイカムの方が1mm以下のプロフィールがレーシングと言うよりかは安心品質の純正の作りで、ランプが多くとられていたりバルブの押し出しの加速度が適度だったりで、音が出難かったりロッカーアームに負担が掛からなかったり、ノーマルの安心とハイカムのhybridな印象です。
私の次のエンジンには、コレ使う様になるかな?

ハイパワー指向の方はトレッセルなどのカムを選択してリセスを深く掘る方向が良さそうですね。リフトや作用角が増えるとピストンとバルブが接触してしまうので交換しないとならないパーツの範囲が増えてしまいます。ロッカーアームの接触面の負荷とかも大変なんだろうな。



ここからはST-1の 商品説明での「次なるステージへのステップアップを目指す」を妄想ですが追ってみたいと思います。ST-1は開閉速度を早くするなどしつつ、頂点付近だけノーマルのバルブ速度に合わせるように傾斜を緩くするなどプロフィールを工夫して居るんじゃないか??と思います。



こんな感じで数値での表現以上に開弁面積を稼いでいるのでは? と思います。作用角やリフト量以外にも開弁スピードを上げることで開弁面積は増やす事が出来ますからね。この様な形状のカムを「肩の張ったカム」と呼ぶそうです。
少ない情報からの予測したカムの動きですが、どちらにしてもST-1は街乗りを意識した大人しいハイカム?
と言うのか純正ハイカムが余程なのか?
ですね。



これだとココで終わってしまうので、次にもっと普通イメージするようなハイカムっぽいオーバーラップを大きく取った図を作ってみます。作用角は290°にしてリフトは適当に大きくします。



ここまで来るとオーバーラップの面積が大きくなって掃気が有効に働きそうです。
排気工程は早くに有効になってパワーアップして増加した排気ガスの排出もスムーズに行われます。
遅くまで開いている吸気バルブは混合気が勢い良く入って来た慣性力で下死点通過後も慣性吸気の効果を積極的に受け入れます。
リフト量を増やした効果で面積にも大分変化が見て取れます。
これでかなりの高出力を手に入れる準備が整った事になりますが一点問題が発生しています。高回転で慣性吸気や掃気が強く働く時はすべてが上手く行くのですが、その力が弱まる低回転では事が上手く働かなくなってしまいます。特に吸気バルブの閉まるのが遅れているのは圧縮圧力の低下につながり、それは燃焼速度の低下となって悪循環が生まれてしまいます。

なのでハイカムを入れた際は、圧縮比を上げる部品選択をして実際の圧縮圧力が低下しない様に補う手法をとります。低速域のトルク低下は排気量で補います。逆説的な言い方をするとボアアップなどで圧縮比が上がってしまう場合は過激なハイカムを組む準備が出来ていると言う事が出来ます。
と、この辺はNAエンジンチューニングのセオリーとなっています。

理屈的にはこんな感じなのですが、実際にハイチューンしている方々は余りオーバーラップを意識しないそうです(DOHCの場合)。それよりも作用角とリフトのスペックを一番に選び、中心角を意識してセッティングを行い、結果的にオーバーラップが決まる感じの様です。でもそこ迄いくと低回転のトルクがぁ、とかの話のレベルでは無くなって、アイドリングは何回転で出来るか?みたいな話になる様です。

ちなみに可変吸気タイミング機構と言うのは4輪では当たり前で2輪でも最近取り入れられてきていますが、このカム山の図の位置を右に左にとエンジンの運転状況に合わせて自由に可変する事が出来るようにする物です。DOHCに成ればIN・EXHを独立して制御することが可能になります。

可変バルブで有名なV-TECなどはリフトの高さまでをコントロールできる様にした構造になっています。何故メーカーはこんな複雑でコストが掛かる可変タイミングや可変リフトを取り入れるか?。エンジンの外で可変マフラーや可変吸気では無いのか?
言わずもがな、エンジンの性能を変化させるにはカムでの開弁タイミングの寄与が大きいという事ですね。
高回転でパワーが欲し場合はカムの交換と言うのが本質的だと言えると思います。
抜け抜けマフラーでの高回転パワー狙いは失うモノが大きく得るモノが小さい。カムを替えなければ性能の変化は小さい。



結論としては、
STAP細胞は 掃気工程は ありまぁ~す!。」

4ストローク、5サイクルを意識するとエンヂンは更に面白くなる!


前回のブログでコメントくれた方、返事がタイミング逃して出来ませんでした。ごめんなさい。またよろしくお願いします。



今回も最後までお付き合いありがとうございました。


つづく。
Posted at 2023/02/03 16:23:19 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記

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