どうも。SRマニアの皆さんこんばんは。
どうもこのブログを読んで頂いている方々は、キャッチーで有りつつもマニアックなネタの方が喜んで頂ける様でw。
ヘッドにバルブを組み込んでいたら丁度良さそうなネタを思いついたのでつらつらと書きたいと思います。
写真はSR400のピストンですが、皆さんこれを見て前々から不思議だな? と思っていた事がありますよね?
そうです。エキゾーストバルブ側の “リセス” がインテーク側に比べて2mm程深く刻まれているんですね。
今日はこの溝の深さの違いにはどんな意味が隠されているのかを紐解いて行きたいと思います。
何故ピストンにリセスが刻まれているかはご存知だと思います。ピストンが上昇して上死点に近付いた際にピストンとバルブの干渉を避けるためです。ピストンが上死点にあってもバルブタイミングにはオーバーラップがあるので、バルブは開いていますからね。
チューニングを行なって高回転高出力を得たエンジンを不注意で?オーバーレブさせた際に、バルブとピストンが干渉してエンジンブロー→お釈迦になりました。というのは内燃機関にとって起こり易い最悪パターンの故障だと思います。
何故ゆえオーバーレブをさせるとピストンとバルブが干渉してしまうかは、「バルブジャンプ」と言われる現象が発生してしまい、カムで設定されたリフト量を超えてバルブが開いてしまうからです。
バルブは開く方向には、 カム山→ロッカーアーム→と伝わる動力で押し下げられて強制されて押し下げられますが、
閉まる方向には “バルブスプリングの反発力“ のみで閉じる構造をとっている事が原因になっています。
想定された回転数よりも高回転を使用すると、開く作用は機械的に回転数に比例して高速にバルブを押し下げます。ですが閉じる作用はスプリングだけなので高速に押し下げられたバルブを受け止める事が出来なくなり、バルブの押し下げが最大点に達したあとも勢い余ってバルブが開いてしまいます。
バルブが開く方向が重力の働く下方向なので、それとも相まってと考えるとイメージが出来てわかり易いと思います。
バルブはインテークバルブの方が大きく重たいので、バルブジャンプに対しては「不利」な要素なので、バルブスプリングをレートの高い物を採用するなど対策が必要な筈ですが、SRではIN・EXH共に同じ物が使用されています。
何故そんな危ない設定になっているのか?とも思いますがこれでイイみたいです。
ピストンとバルブの動作を考えてみましょう。
先ずは吸気バルブ側から
(絵を描いたり動画だったりが大変なので写真で説明しますが、不完全なのでイメージで補完して見て下さい。)
吸気バルブの開き始めは上死点前。この辺りからゆっくり?インテークバルブが開き始めます。
インテークバルブが最大リフトになるのはピストンが1/2降下した所かな?
バルブジャンプが発生するのはこの辺りになるので、吸気が良く入るかも?なんて思いますが、ピストンとの干渉の原因にはならない様です。
続いて排気側
排気バルブが開き始めるのは下死点前
最大リフトに達するのはピストンが1/2上昇した所かな?
ヘッドに対して近づいてくるピストンに向かってバルブを開く事になります。
なのでバルブが最大リフトに達して以降、更にピストンがヘッドに近づいてくる時にバルブジャンプが発生していると最悪の事態、バルブとピストンの干渉が発生してしまうと言う事になります。
バルブスプリングはインテークバルブに合わせて設定してあるので、軽量なエキゾーストバルブの拘束に対しては余裕を持たせていると言えますね。これが IN・EXHのバルブスプリングが共通な理由です。
更に念には念を入れて「エキゾースト側のリセスは深く掘っている」。リセスの深さが違うのはこんな理由です。
(単にカムプロフィールとバルブ位置の問題ってのもあります)
どちらも推測ですが、理由がわかってスッキリしましたね?
バルブが開く動作に対してピストンが近づくのか?遠ざかるのか? インテークとエキゾーストバルブのバルブジャンプに対する ”緊迫感“ が違う事が分かったかと思います。
エキゾーストバルブは早くに閉めてしまいたい所ですが、オーバーラップがあるので上死点後まで開けておかなければならないし、バルブの閉まる側の動作はバルブスプリングが担っていて機械的に拘束されていない。。
エキゾーストバルブの動作は迫るピストンに対して挑発的?ギリギリを狙うので干渉のリスクを負うのですね。
バルブスプリングって大切なんですね。
いくつか動画の紹介です。
よくあるエンジン内部の動画ですが、エキゾーストバルブとスプリングの立場?で見てみて下さい。
ギリギリのところで働いているエキゾーストバルブにもう少しフォーカスしてあげて欲しくなっちゃいますね。
バルブ当たりそう、なんてヒヤヒヤしながら見るのが乙な見方です笑。
こちらはバルブスプリングの作動の様子をスローモーションで見られます。
各回転でバルブスプリングの挙動が違うのが見て取れると思います。
一度の開閉の中でバルブスプリングがビヨヨヨーン。と共振が発生しているのが見られたと思います。これ、バルブスプリングがアウターの1巻きのみだとバルブに掛かる反発力が大きく乱れる原因に成ります。なのでインナーとアウター、違う共振を持つスプリングをセットにして動的な反発力の安定化を狙っています。
ダブルスプリングにする理由まで分かっちゃいましたね笑。
コレだけ酷使されているバルブスプリングなのでエンジンのオーバーホール時の交換は必要と思います。
そんな重責のバルブスプリングですが、5万キロ走ると何回ストロークする事に成るんでしょうか?
そんな重責のバルブスプリングですが、重責の割に価格は大変抑えられております。なんか可哀そうになって来ました。
なんだか可愛く見えて来ましたね❤️ バルブスプリング
どおでしたでしょうか? バルブリセスから見るエンジンのバルブ周りの台所事情。
スプリングの反力でバルブを閉める機構が色々と不具合?の原因になっているんですね。
F1等は圧縮空気を使ってバルブを閉めていたり、ガチャガチャうるさいDOCATI(失礼しました)はデスモドロミックというスプリングでは無く機械的にバルブを拘束する機構を使っていたり、バルブ周りは内燃機関にしては機構のレパートリーがある珍しいパートに成っています。
燃費や出力を考えると低レート、バルブの正確な動作を考えれば高レートのスプリングが必要になりますが、最近では低レートのままバルブを正確に作動させるための特異なデザインのスプリングが流行の様です。(4輪での話。2輪は知らないけど同じだと思います)
イヤ~、エンジンってリセス一つ取っても、面白いですね。