今シーズン最終戦の最終ラップで見事ドライバーズチャンピオンを獲得したレッドブルホンダですが、色々な
雑誌で今シーズンのエンジンの特集が組まれてますね。
今シーズンのRA621Hエンジンは元々2022年シーズンに出す予定のものが2021年でのHONDAのF1撤退のため1年前倒しで投入されたものです。新骨格を採用しており前年のRA620Hとは完全に別物のようですね。
比較図からも分かりますが、RA620Hと比較するとカムシャフトの挟み角が狭まった上に吸気側のカムシャフトが下方にシフトしてシリンダーヘッド周りが更にコンパクトになっています。F1デビュー時に「サイズゼロコンセプト」と言われたRA615Hよりもコンパクトになっているのは驚きです。それでいてタービンのサイズは1.5倍くらい大きくなっている感じですね。
エンジンブロックに関しても、通常の砂型鋳造に対してアルミブロックからの総削り出し製法で、強度とコンパクトさの両立を図ったそうですが、かなりの手間がかかっていそうですね。
シーズン前の発表ではコンパクトになったシリンダーヘッドのためカバー形状もかなり変わったのが見てとれますが、
シーズン開幕になると更に徹底されて排気側(バンクの外側、上の写真だと右側)のブレースが省略までされています。これによってエンジンカウル内の空気の流通にも有利になるよう配慮されているようですね。
エンジンの燃焼面では2017年に採用されたプレチャンバーイグニッションに加えて高速燃焼技術も取り入れられ、最後の数年間は圧縮比が年に1ずつ上がる!!という大幅な進化を遂げてきたようです。RA621Hではレギュレーション上限の18に圧縮比が到達したようですが(推定)、この縛りがなくて開発が継続したらどこまで行ったのでしょうか。
こんな技術発表をしてしまうとライバルのメルセデス、フェラーリ、ルノー陣営の研究の的になって不利に思えますが、この時期なら情報が分かっても来シーズン用のエンジンに反映される時間も無く、2022年からは3年間開発が凍結されるので問題無いという判断なのでしょうか。
しかし、エンジン内部のコーティング技術である「熊製めっき」に関しては「耐久性の向上」という他には詳細は明かされていないので、やはり企業秘密もあるのですね(爆)。
今回に限らず、過去のF1でも1988年シーズンの終了時にHONDAはやはりターボエンジンのRA168Eの技術詳細を発表しています。この時も1989年シーズンからは自然吸気エンジンへのレギュレーション変更だったので問題無かったという判断でしょうか。
2輪レーサーの世界でも、GP500時代にはワークスマシンの試乗をジャーナリストにさせたり撮影も許可していたりと、割と情報公開に寛容でしたね。
レギュレーションが変更になり次期シーズンには800ccとなる2006年シーズン終了時には、MotoGPワークスマシンのRC211Vの技術発表をしています。
このシーズンはチャンピオンを獲得したニッキー・ヘイデン選手だけに全くエンジンも車体も別仕様のマシンが用意されたのですが、従来型の発展型のマシンと併せて比較展示したりしています。
ニッキー・ヘイデン選手用のエンジンは左側で右側の従来エンジンと比較してコンパクトかつ高出力になっており、車体側もそれに合わせた別設計でスイングアームが延長されていました。エキゾーストパイプの間隔からもボアピッチが狭い事が分かりますし、ヘッドカバーも肉抜きされて精悍ですね。
こんな手間暇をかけた専用マシンでニッキー・ヘイデン選手は2006年のMotoGPチャンピオンに輝いた訳ですが、一人で開発しながらのレースだったので色々苦労もあったのでしょうか。
HondaのF1撤退は残念ですが、こうした努力の成果を発表してもらえるのはモータースポーツファンに取っては有難い事ですね。この頑張りがHONDAの他の分野でも発揮されて企業の発展につながる事を祈りたいです。
Posted at 2022/01/12 00:44:56 | |
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