毎年1回くらいは「アルピナの立ち位置って何だろう」と言った趣旨のブログを書くのですが、今年はそれどころではない衝撃的なニュースが先週やってきましたね。
「BMWへのブランド譲渡」という表現がイマイチ分かりにくい感じもしますが、一番詳しい情報と思われるのは
こちらのサイトでしょうか。
要は、現在のアルピナ車の生産拠点であるブッフローエの工場は2026年以降は「ブルカルト・ボーフェンジーペン社」として旧アルピナ車のメンテナンスなどを行う新規の会社として出発し、新車としてのアルピナを生産する権利をBMWに譲渡するという事のようです。
そこらのインプレ記事のようにアルピナの歴史を長々と書いてもしかたありませんが(爆)、チューニングメーカーとして出発したアルピナの初期モデルは本家BMWには無いターボチューンをしていました。
本家のBMWがM1、M3を始めとしたMシリーズをリリースしてからも、本家とは一味違った高性能エンジンを搭載してきました。
例えばE36ベースのB8 4.6モデルですが、
なんと3シリーズのボディに4.6LのV8エンジンが搭載されていました。
E60ベースのB5では、本家BMWのM5が5Lの自然吸気V10エンジンだったのに対して4.4LのV8エンジンにスーパーチャージャーを装備してM5以上のパワーとトルク(537ps/725Nm)を叩き出していました。
本家BMWがターボエンジンを採用するようになってからは「パワーではMモデルに対してわずかに劣るがトルクは上回る」という不文律?に沿ったキャラクターに微妙に路線変更したようですが、それでもリミッターは装備されないので他社も含めて250Km/hリミッターに縛られない動力性能を享受出来ていました。
ある意味サーキット志向のMモデルに対してアルピナはあくまでも公道で疲れずに速さを楽しめるキャラクターと思われ、上質な乗り味を表現するために「公差ゼロを目指す」車造りをしているようです。その実現のために、ベース車両をブッフローエの工場で部品を組み直したり、精密な組み立てをしているのでしょう。
しかし、本家BMWのMモデルが電子制御によってコンフォート性能を高めてくる事によってある意味アルピナ寄りのテイストも兼ね備えるようになり、差別化や訴求力が薄れる傾向にあるのかもしれません。
こうした流れの中で、BMWは2025年までに大幅な電動化の計画を立てており、そうなると2026年以降は内燃機関の優位性は無くなり、車体周りでの差別化も難しくなるので、現状のような少量の生産体制よりは旧車のメンテや技術開発方向に特化するのが経営的判断として正しいのでしょうか。
電動化時代になって「6N銅線使用で伝導効率を上げました」だの、「手巻きのコイルで磁束密度を上げてパワフルなモーターになりました」だの謳ってもオーディオじゃあるまいし違いは分からないでしょうし(爆)。
しかし、アルピナブランドを吸収したBMW側が2026年以降どんな扱いをするのかが問題ですね。
現状のようなアルピナ車の造り方はBMW内部のラインでは不可能でしょうから、現在のBMW individualのような工程にならざるを得ないでしょうし、そうするとアルピナテイストを維持するのは困難な気がします。
乗れば分かる違いがあるからこそMモデルとの棲み分けが出来るので、そうでなくても見た目の控えめなエアロパーツや内装だけの違いであれば、「BMWのMスポーツ」や「メルセデスのAMGライン」や以前の「スマートのブラバススポーツ」と言った、実を伴わない「なんちゃってブランド」になりそうです。
それに比べればトヨタのGRMNや日産のNISMO、ホンダのモジューロの方が、きちんと実走を繰り返して吟味したパーツ装備なのでこれらの方がアルピナの造りに近い気がします。
BMWに限らないのでしょうが、モジュラーエンジンで開発はサプライヤーに丸投げ、プラットフォームも多企業で共用してコストダウン、売れ線の車種はそれなりに作って他のグレードは市販してからバグ潰し、と言った風潮ではアルピナのような吟味を重ねた物作りは生き残れないのでしょうね。
そういう意味では「アルピナ買うなら今でしょ!」という気がします。現行モデルの生産枠は今年はとっくに埋まっているでしょうから、2023年からの3年間で手に入れられるかどうか…ランクルだと手遅れですね(爆)。
そう言えば、同じような境遇と思われるイギリスのモーガン(こちらも新型車は奇しくも同じBMWエンジンですね)も同じ生産規模のメーカーですが、こちらはどこかに吸収される事はなく、我が道を行きそうですね。こちらは素直に応援したいです。
Posted at 2022/03/15 02:59:02 | |
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BMW | 日記