リアタイヤも替えて低ダストブレーキパッドも馴染んできた新ミドリーヌ号(G21 D3S)、走行25000Kmでほぼ絶好調という感じですが初代ミドリーヌ号(E91 D3Biturbo)と比べるとどうでしょうか。
車自体を比較すると一番大きな違いは6気筒化と4駆化でしょうか。エンジンが6気筒になった事によってより滑らかさと吹け上がりの良さは増したので、この点に関しては新ミドリーヌ号は大進化ですね。パワーは100馬力、トルクもほぼ5割増しなのでパワフルです。
懸念していた燃費も2.47という低いファイナルのため高速燃費は初代ミドリーヌ号と大差なく、実際に
無給油で1000Km走れているので十分満足です。新東名高速での120Km/h巡航でも15〜16Km/Lくらいは走っているので航続距離も心配無しです。
乗り始めに「意外と硬めだなぁ」と思った乗り心地も20000Km走行くらいでやっとしっとりした当たりになってきており、アルピナの乗り心地としては合格点が上げられそうです。
高速道路走行ではACCとステアリングはレーンキープ制御任せでメーターもヘッドアップディスプレーを眺めていれば良いので長距離でもかなり負担は軽減されました。そしてアルピナ独自の走行モードの「コンフォートプラス」にしておけば乗り心地もまったりして快適です。
こうした点からは快適に高速移動が出来る手段としてはE91からG21へはかなりの進化になったかとは思いますが車を運転、操作するといった面からはどうでしょうか。
今まで何度も力説していますが(爆)、現行のB3/D3S/B4/D4Sに共通する特徴として極太のステアリングがあります。アルピナであればもっと細身のステアリングにして欲しい所ですが、センサーなどの関係上標準のBMWのものを使わざるを得ないという部分はちょっといただけないですね。
それが如実に現れているのはスイッチトロニックのボタンで、ステアリングが極太になった分位置が相対的に内側かつ下寄りになってしまったために手の小さい自分では中指で操作出来ず、薬指で押したりグリップを握り替えたりしなければなりません。これでは「ステアリングを保持したまま楽に操作出来る」というアルピナの趣旨から外れてしまっており、逆に標準のBMWのようなパドルシフトの方がやりやすいといった本末転倒になってしまっています。実際にスイッチトロニックは全く使わなくなりました。
それに比べると初代ミドリーヌ号のステアリングは適度な細身で握りやすくて繊細なステアリングさばきが出来てスイッチトロニックによるシフト操作もやりやすくて万全でした。またステアリングの握り心地もやや硬めで好印象です。
運転席メーターについても新ミドリーヌ号のメーターはタコメーターは逆回転の上に指針も見にくくて違和感バリバリです。青色のバックに赤の指針なので標準BMWのメーターよりは見やすいのが唯一の救いですが。結局この方式はプジョーが始めてBMWが真似しただけで他のメーカーは採用していないので、ダメなのは明らかですね(爆)。LCIでさらにダメさ加減に磨きがかかった印象がありますが、運転中はほとんどヘッドアップディスプレー任せでメーターは見なくなりました。
インテリアについてもG20/G21は運転席メーターやセンターメーター周りのトリムの面積が少なくなってしまったためにBMW標準かインディビジュアルのトリムしか注文出来ず、従来のアルピナが採用していたミルテのウッドパネルは選べません。仕方なしにピアノブラックにしましたがちょっと無味乾燥です。
それに比べると(好みの問題かもしれませんが)初代ミドリーヌ号は綺麗な木目のミルテウッドのコンソールパネルなので癒されますね。
カーナビなどの操作についてはやっとガラケーからiPhoneにしたおかげでハンズフリーの電話やオーディオは使えるのであまり不満は感じなくなりましたが、カーナビそのものは使えませんね。音声入力でもヒットしたのはモスバーガーだけです(笑)。それでもiDriveが残っていたり、ショートカットスイッチが残っている分はややマシです。シフトレバーもまだありますし(苦笑)。
それに比べると、初代ミドリーヌ号が搭載していたパナソニックのストラーダは優秀でした。さすが国産ナビだけあってルート案内も的確ですし、検索中のルート条件変更も出来ました。リモコン操作もタッチパネル操作もボタン操作も出来ましたし、CDやDVDも入りましたし、ガラケーとの連動も万全でした。無くなってみて初めて分かる有り難さでした。モニター別体式のカーナビを無理やりふたこぶラクダのコンソールパネルに付け替えて大改造の末に移植したのは大正解でした。
この辺りの操作性に関しては慣れの問題もあり重大な違いではないかもしれませんが、運転の感覚についてはどうでしょうか。
やはりE91からの変更で大きいのは6気筒化と4駆化、マイルドハイブリッド化ですね。エンジンの駆動系の進化は大きいですが、その結果として重量も300Kg以上増えました。新旧ミドリーヌ号はどちらも重量配分は前49:後51と優秀なのですが、さすがに300Kg重いとステアリングを切った時の挙動は新ミドリーヌ号の方が当然鈍いです。
もちろん標準BMWに対してはステアリングの感触も良く素直に曲がるのですが、4気筒で頭が軽い(前輪荷重はもっとコンパクトな135iと一緒でした)初代ミドリーヌ号の方が頭の入り方が素直で鋭く、曲がりも楽しかったです。
これは300Kgの車重差があるのにタイヤは初代のミドリーヌ号が前245/40-18:後265/40-18に対して新ミドリーヌ号は前255/30-20:後265/30-20と大差ない事、タイヤがミシュランのPS4SからピレリのPゼロに変わった事も大きそうです。脱出加速は当然新ミドリーヌ号の方がパワフルですがコーナーの楽しさは初代ミドリーヌ号に軍配が上がりますね。タイヤと言えば、ピレリのPゼロはかなり引っ張り気味のタイヤなのでホイールを2度かじってしまいました(1度は覚え無し)。これも印象が良くない原因ですね(爆)。
これに輪をかけているのが、ステアリングの手応えです。新ミドリーヌ号のステアリングも標準BMWに比べると十分しっかりして滑らかなのですが、細身のステアリングで後輪駆動の初代ミドリーヌ号の方が更に滑らかです。もう極太ステアリングにかなり慣れてしまいましたが、今初代ミドリーヌ号に乗り換えたら、ステアリングの滑らかさに改めて感動すると思います。
そして微妙に差があるのがシートポジションです。新ミドリーヌ号はシート調整はフル電動ですが、座面の角度調整は出来ず上下だけです。それに対して初代ミドリーヌ号は電動調整は上下とリクライニング、サイドサポートとランバーサポートですが、座面の角度調整は手動なものの別のレバーで単独に調整が出来ました。それに比べると新ミドリーヌ号は座面の角度調整は出来ない上に極太ステアリングなので運転姿勢が微妙にしっくりこないです。
時たま代車で標準BMWを乗ってから新ミドリーヌ号に戻ると出来の良さを改めて感じるのでアルピナとしての良さはあるのですが、年々アルピナの味わいが薄れていくのは残念ですね。ACCとレーンキープを効かせてメーターは見ずにヘッドアップディスプレーに任せてコンフォートプラスモードで高速を走っていると快適ですが、運転している実感は薄いですね。ベースとなる標準BMWの性能が上がっているので以前のような差別化が出来ないといった面はあるのでしょうが、アルピナ独自の部分は少なくなってきていますね。
そういう意味では、6気筒のパワフルなエンジンを積んだ上に後輪駆動で200Kg軽く、(多分)ステアリングの手応えも滑らかでインテリアトリムもミルテウッドが選択出来た先代のF30/F31のD3Biturboの方がアルピナの味わいとしてはベストなのかもしれませんね。
そう考えると2026年からデビューの新型アルピナはEVになるだけで最近のBMWの下品?な顔付きとしょうもない操作性のメーター類はそのままでしょうし車体の煮詰めも真正アルピナ時代とは雲泥の差でしょうから、何の期待も持てないですね(爆)。オーナーの方は今お乗りの愛車を大事にするしかないですね。