久々に小難しい話でも書こうかと思います。
実は2016年中に書こうと思っていた内容なのですが、ブログネタが無い時に書こうかと思って温存していたら思いのほかタイミングが無くて
下書き状態で放置・・・(笑)
いつの間にか2017年になってしまったので、
そろそろ書いておこうかと思います(爆)
さて、
トヨタのミライが一般発売され、
ホンダのクラリティが一般発売・・・はされてないのね。リース専用で販売され、水素を燃料に走る
FCV(燃料電池車)が実用段階へ入ってきました。
※現状でミライ:723万円、クラリティ:766万円という価格設定。
まぁ、実用段階というのは大げさで実用試験の開始みたいなレベルではありますが・・・。
従来の
化石燃料(ガソリン/軽油)で走る車から、昨今は環境性能という側面から、ゼロエミッションカー(走行中に二酸化炭素を排出しない車)である
電気自動車(EV)が国内では三菱と日産が力を入れています。
しかし、
EVは充電に時間がかかる。航続距離に難がある。という問題を抱えています。
そこで、
従来のように燃料をすぐに補給する事が出来るゼロエミッションカーである
FCV(燃料電池車)の開発をトヨタ/ホンダが進めていき、現在の販売開始(リースのみ含む)に至りました。
しかし、ぶっちゃけ私はFCVが走ってるのは見たことありません。
だって近くに水素ステーションがありませんから。
※現在宮城県には無い(※仙台市宮城野区に開所準備中ってなってますね)
そう。
水素はガソリンスタンドでは売ってません。専用の水素ステーションがないとFCVは
1/1スケールの車模型も同然なのです。
水素ステーションはガソリンスタンドを作るよりも
コストが大きく、ゼロから全国展開しないと水素が流通せず、FCVは普及できない。
そして燃料が化石燃料→水素に変わったところで、
全体図からみて何が環境にいいの?なにも良くならないじゃん。
って私はバッサリ切り捨てた意見を持っているのですが、深く考えもしないで否定的な意見を持つのも正直よくない。
さぁ、いつもながら前振りが異様に長くなりました。
今回の誰得な難しい話はずばり
「FCVの普及に伴う環境負荷の変移」です。
ちなみに今回の内容より少しライトな内容は以前のブログを見てね。
ブログ:
2015/01/21 FCVは究極のエコカーなのか?
まずは現状の自動車(内燃機関)と比べた
FCVの特色を見てみましょう。
①化石燃料を使用せず、燃料は水素。
化石燃料の将来的な枯渇に備えた代替燃料の確立の為、水素を燃料として使用する。
②燃焼を伴わないため、CO2を排出しない。
水素から電気を作り水と酸素を排出する。地球温暖化の原因と言われるCO2を排出しないゼロエミッションカーである。
③再生可能エネルギーを利用できる。
太陽光発電などの電気を利用して水から水素を精製する事で、環境負荷は限りなくゼロ。
④電気自動車と違い、迅速な燃料補給が可能
水素ステーションで従来のガソリンスタンドと同様の時間で補給できる。
ふむ、こんな所でしょうか。
さぁ、これら全てにいちゃもん付けられるでしょうか?(笑)
付けられます(爆)。だから私は水素社会に否定的意見なのですけどね。
ま、ざっくり言うと、
水素を燃料にしても石油の消費はなくなりません。なぜなら水素社会になったら
石油を使って水素を作る羽目になるからです。
水から電気分解で水素を作る?一体その電気は何処で調達するの?
電気は自然エネルギーで賄う?笑い話です。そんなことが出来たら今頃世界に
火力発電や原子力発電なんてとっくに無くなってますよ。
水素を電気分解で作ろうとしたら、
火力発電に負荷が寄ります。つまり発電に使用する石油消費量が増える。
そして、FCVからCO2を排出しなくなっても、代わりに水素を作る過程で代わりに莫大なCO2排出が増えます。臭い物にはフタにしかなってない。
自分に見えない所でなら存在しないという訳じゃないのです。
しかもFCVに使われる資源を採掘するために、途上国での重機稼動が増える=CO2排出が起きる。カーボンオフセットという言葉でお茶を濁しつつ、
先進国が途上国にCO2排出を移行してるだけ。
そして、水素ステ-ションは普及自体も問題ですね。建設コストも然る事ながら、高圧水素ガス(70MPa)なので、高圧ガス
(※)設備になると思います。(現状の法律から見て。)
※高圧ガス:常用の温度又は35℃で圧力1MPa以上となる圧縮ガス(詳細は高圧ガス保安法を参照)
ガソリンスタンドの人間は高圧ガスを取扱えない為、新規に資格を取らないといけないのでガソリンスタンドを水素ステーションに改造して建設コストをダウンという手段も取りにくいですね。
市街地等に高圧ガス設備を置くのも色々規制があるので法改正が必要です(これは進んでいるのか・・・?)
さぁ、
細かい計算抜きでざっくりでも私のイメージではこれだけ問題があります。
第一に石油消費量を減らしたいのに
石油消費量が減らない時点で水素社会は意味がないでしょう。
それなら、現存の内燃機関の効率を限りなく100%へ近づける努力をしたほうがよほど建設的でしょう。
さ、
ここから先は計算等を用いて裏づけをしていきましょう。これだけだと私の妄言と言われて終わってしまいますから。
まず前述した通り、
内燃機関自動車をFCVへ置き換えることの真意は「石油消費量の削減」にあるでしょう。ゼロエミッション(CO2排出ゼロ)なんてのはオマケだと思います。
(※石油消費が減れば必然的にCO2排出も減る)
ゼロエミッションなんてのは客へのアピールでしかないです。しかもその客にとってもゼロエミッションだからといって得する事は何もないという・・・。
”よく分からないけどなんとなく環境に良さそう”ってのが販売アピールになるのが今の日本です。
みんな死んでしまえ。
話が脱線していく・・・。軌道を戻します。
ずばり
「国内の自動車がすべてFCVに置き換わった場合、どれだけ石油消費量が変わるのか?」を
計算してみたいと思います。
[環境優しいクリーンエネルギー水素を燃料にしたゼロエミッションカーFCV。これが未来の車のカタチ。内燃機関は環境負荷の高い”悪”。]
そんなイメージ戦略が行われ、普及の糸口へとつなげようとしている現在。
それは
本当に正しいのか?皆「なんとなくそうなんだろう。」で終わっている。
水素社会が実現したらどれくらい石油消費量が下がるのか?そんなの国はとっくに試算している。でも公表はされない。
公表したらイメージとの乖離を突きつけられるから?
公表すると普及への足枷になるから?
どうなんでしょう?
ちょっと盛り上げ過ぎた気がします。
一旦クールダウン。
今更ながら、一応断りを入れておきますが、私はその手の専門家とかではなくて、一人の車好きとして考察や計算を行っているに過ぎません。
なので以上から以下まで、私の発言や考察/計算などには誤りがある可能性がございます。
また話の構成上、触れていない内容があったり偏りがある内容になっています。
なので「○○があるじゃね~か」とか「こいつ○○も知らないで話してやがるwww」等々の突っ込みはお馬鹿さんのする行為ですのでご注意を。私の判断で記載がいらないと思って省いてます。
その点をご理解の上でお読みになってくださいね。
※こんなブログを読んでるような人はこんなこと一々書かなくても分かっていると思いますが、たま~に居るお馬鹿さん用に記載しています。
さ、注意書きもしたところで、話を進めましょうか。
現状で内燃機関の車は大きく二つに分類します。
ガソリン車と
ディーゼル車です。
※LPG車は今回無視します。
ディーゼル車の多くはトラック/ダンプ等なので、FCVへの置き換えは最後になるでしょう。項目が多いと計算が大変なので、
ディーゼルは今回無視します。
なので
「ガソリン車が全てFCVに置き換わった場合。」を想定します。
まずは見るべきポイントを整理しましょう。
①年間ガソリン消費量
②年間水素消費量
③水の電気分解に必要な電力/それを賄う火力発電の石油消費量
④電気分解以外での水素生成方法。
さて順番無視でいっちゃいますが、
「④電気分解以外での水素生成方法。」水素を水の
電気分解以外の方法で生成するにはどのような方法があるでしょうか?
まず一つは
化学工場の副生ガスです。結構色々な化学工場から副生ガスとして水素が出来ます。ただし、あくまで副生ガスなので水素の
生成量を増やす事はできない。
また、FCVは高純度水素を使用するので純度の低い副生ガスはそのままでは使用できないという問題もあり、
高純度化処理が必要になる(※PSA、TSA、膜分離・・・等)
もう一つは
石油プラントです。上のヤツと違うの?って思うかも知れませんが、事情がちょっと違います。石油プラントは水素を使用して脱硫(硫黄の除去)を行うので、
水素を製造する装置を持っています。(水素純度も高い)
これは副生ガスではないので、
水素生成量を任意に増減することができます。(当然限度はありますが)
水の電気分解の他に、
石油プラントの水素製造装置が国の目を付けている水素供給源だったりします。
という事で、電気分解と石油プラントの二つの方法での水素生成にかかるコストを計算します。
さぁ文字ばかりで嫌になってきましたね。写真や図面でも入れて緩急つけたい所なのですが、いかんせん挿絵がない・・・。
・・・このペース、なんだか過去最長のブログになりそうな気配。無駄口叩いてる暇はない?
では続いて
「①年間ガソリン消費量」
これは簡単に出てきます。年間ガソリン販売量を見ればいいのです。
2015年の年間ガソリン販売量:
53112961kL/Year
※2015年のデータなのは、この計算してたのが2016年時点だからです。
ちょっと途方もない量なのでイメージが付きませんので、単位を変えましょう。
→6063kL/h
はい。一時間あたり6063キロリットルのガソリンが日本国内で消費されています。
さて次。
「②年間水素消費量」
これは計算が面倒ですね。当然過去のデータも無いですし。
ガソリン車の燃費と
FCVの燃費から
水素消費量を計算しましょう。
ガソリン車の
平均燃費を15km/Lとして置きましょう。
FCVの燃費はトヨタのミライをベースに考えましょうか。ミライのカタログ燃費は・・・記載されてません。オイッ!!トヨタさん書けや!?
仕方がないのでタンク容量と航続距離から計算しましょう。
・タンク容量122.4L
・圧力70MPa
・航続距離650km
なので、タンクに入る実水素量は「122.4×700=85680L」になります。
水素はLではなくm3で計算していきますので、「85680L→85.68m3」になります。
そこから燃費を計算「650÷85.68=7.59km/m3」
ミライのカタログ燃費は水素1m3で7.59km進める計算です。
今の段階だとガソリン1kLと水素1m3をだいたい同じ金額で販売になっているのでガソリン車の約半分の距離しか走れないFCVは
コストとしては割り高ですね。(しかもFCVの値はカタログ燃費なので実際はもっと低い)
※今後の価格推移がどうなるかわかりませんが・・・。
カタログ燃費を実燃費に換算すると
大体6割くらいになる傾向なので、「7.59×0.6=
4.55kL/m3」。航続距離は390kmになってしまいます。
さて、ここまで書いたら鋭い人は水素消費量が計算できるようになった事に気が付くはず。
・ガソリン車の燃費:15km/L
・FCVの燃費 :4.55km/m3
FCVがガソリン車と同じ15kmを走るには「15÷4.55=
3.3倍」の水素が必要。
つまり「6063kl/h×3.3=20008km3/h」。
水素消費量は20008km3/hになります。
ちなみに、カタログ燃費通りに走れると仮定して計算すると「15÷7.59=1.98倍」になる。
なので「6063×1.98=12005km3/h」。水素消費は12005km3/hになる。・・・これはないでしょうけど。
さて、これで
水素はガソリンの3.3倍です。・・・で結論付けてもいいのですが、カタログ燃費から実燃費への計算があまりにもテキトーです。
なのでもう少し違う計算でも確認しましょう。
燃料の持つエネルギーと機関効率から計算します。
・ガソリン車の効率:30%
・ガソリンの単位熱量:32.9MJ/L
・ガソリン6063kLの持つエネルギ:「32.9×6063000=199472700MJ」
・効率30%のエネルギ(実走行に使用しているエネルギ):「199472700×0.3=59841810MJ/L」
・水素の単位熱量0.0128MJ/L
・電気分解の効率:80%
・燃料電池の効率:30%
・FCVの効率:「80%×30%=24%」
・必要水素量:「59841810÷(0.0128×0.24)÷1000÷1000=19480km3/h」
・倍率:「19480÷6063=3.2倍」
ちょっと先取りで書きますけど、電気分解と燃料電池の効率は大体上記くらいになるので、水を電気分解して燃料電池で電気に変えて走行に使用すると効率は24%になります。
そこから、効率30%のガソリン車のエネルギと同等のエネルギの水素量(効率24%)を出すと、
水素はガソリンの3.2倍になります。
さて、二通りの方法で試算した結果、
水素はガソリンに対して3.2~3.3倍必要という結果になりました。
長くなったのでここまでを纏めると、
・年間ガソリン消費量は6063kL/h
・年間水素消費量は19480~20008km3/h(ガソリンの3.2~3.3倍)
となります。
さて、非常に長くなってますが、ここからがようやく本題といった所。
ようやく水素消費量が出ました。
(※以降は3.3倍の20008km3/hで話を進めます)
「③水の電気分解に必要な電力/それを賄う火力発電の石油消費量」を計算しましょう。
まずは、
水素20008km3/hを作るのに必要な水の量です。
水はH2Oですので、mol質量から計算すれば水素と酸素の発生量が出せます。
「水1L × 1000 ÷18mol = 水素55.56mol(1.244・・・kL)」
計算すると水1Lから水素は約1244L出来ます。
では20008km3/hの水素に必要な水は?
「20008km3/h ÷ 1244.44・・・ = 16078.1t/h」
時間あたり16078.1トンの水が必要です。
さぁ、水の量が出ましたのでこれを電気分解しましょう。
1molの水を電気分解するのに必要な電気は233kJなので換算すると
233kJ = 64.73W/h
では16078.1トンの水をグラムに直してモル数を出します。
「16078103910g ÷ 18mol = 893227995mol」
※トン表示時に丸めた数字も細かく入れてます
「893227995mol × 64.73W/h =
57816325.72kW/h」
さぁ、とんでもない数字になって分かり難くなってきました(笑)
電気分解の効率は
80%程度なので計算に入れます。
「57816325.72kW/h × (1÷0.8) = 72270407.15kW/h」
桁が大きいのでk(キロ)→M(メガ)に単位を変えます
→「
72270.41MW/h」
さぁ出ましたよ。
水素20008km3/hを作るのに必要な水16078.1t/hを電気分解するのに必要な電気は「72270.41MW/h」です。
メガソーラー
(※)何箇所分でしょう?
※1MW/h以上の出力を持つソーラー発電システム
これがメガソーラーで補えるのなら、今頃火力発電所はなくなってます(笑)
宮城県の火力発電所で想像すると・・・
・仙台火力発電所で44.6万kW/h(
446MW/h)
・新仙台火力発電所で98万kW/h(
980MW/h)
もうこの時点で
「火力発電所1つ=メガソーラー数百箇所」という桁違いな数である事が分かりますが・・・。
ちなみに日本の主要火力発電を合算すると・・・
・北海道電力 4213mW/h
・東北電力 12247MW/h
・東京電力 44979MW/h
・中部電力 24034MW/h
・北陸電力 4403MW/h
・関西電力 18955MW/h
・中国電力 7806MW/h
・四国電力 3736MW/h
・九州電力 10734MW/h
・沖縄電力 2129MW/h
・合計
133236MW/h
※値は総出力(100%稼動)の電力なので実際に使われている電力はもっと低いです
72270.41MW/hとなると、
日本の火力発電所の総出力の約54%分に相当します。
[太陽光発電で電気を作ってそれで水を電気分解して水素を作る?]
何言ってんの??
寝言は寝て言えってレベルですね(笑)
日本をソーラーパネルで埋め尽くす気ですか。
さて、
太陽光発電じゃまるで足りないので
火力発電で電気を作らないといけません。
燃料の発熱量と火力発電の効率から計算してみましょう。
(燃料は石炭、軽油、重油、LNG等と多岐に渡りますが、今回は代表で以下4油種を計算します)
・油種→発熱量(MJ/L)→電力換算(kW/h)→火力発電効率含み(50%)
・A重油 37.2MJ/L → 10.33kW/h → 5.1671kW/h
・B重油 39.4MJ/L → 10.95kW/h → 5.4727kW/h
・C重油 41.0MJ/L → 11.39kW/h → 5.6949kW/h
・LNG 49.1MJ/kg→ 13.64kW/h → 6.8200kW/h
各油種のリッター当たりの電力はこうなります。
※LNGはkgあたり
さぁ、必要な電力は72270.41MW/hですので、必要量が計算できますね。
・A重油 13986701.80L/h → 13986.702KL/h
・B重油 13205718.45L/h → 13205.718kL/h
・C重油 12690373.34L/h → 12690.373kL/h
・LNG 10596849.43kg/h→ 10596.849kg/H →※23036629.2kL/h
でました。
アホみたいな量が必要です(笑)
※LNGはkg/h→kL/hに換算し直すと物凄い量になります(爆)
A重油を例にして言いますと、
「ガソリン6063kl/h = 水素 20008km3/h = A重油13986.702kL/h」
が等価になります。
ガソリン車のかわりに燃料電池車が普及すると、
火力発電でA重油をガソリンの倍以上の量を消費する事になります。
つまりガソリン車が燃料電池車に置き換わると、石油資源の消費量が増えます!!
本末転倒もいいところ(爆)
[環境に優しい太陽光発電で電気を作る→無限にある水を電気分解→FCVでは水しか排出しない。]
[環境に超やさしい!!]
なんてのは
理想を通り越して唯のバカです(爆)
実際は環境負荷は増えるし、石油資源も余計に消費する事になります。
さて、③水の電気分解に必要な電力/それを賄う火力発電の石油消費量。の計算結果は以上となりました。
ではもう一つ。最後の項目です。
④電気分解以外での水素生成方法。
電気分解で水素を賄うのは意味が無いことが分かりました。なので
別の手段で水素を調達しよう。
長くなってきたこのブログのす~っごく上のほうで、ちらっと言いました
「石油プラントで水素を作る」という手段です。
石油というのは炭化水素です。C(炭素)とH(水素)の化合物。つまり石油中には水素が沢山含まれているのです。
石油プラントは主に脱硫(油中の硫黄分を除去)する為に、
水素製造装置を持っています。
そこを水素調達源にしようというものです。
今回は水素製造装置である水蒸気改質装置
(※)を例に計算してみます。
※超ざっくり言うと炭化水素とスチーム(水蒸気)を反応させて水素を取り出す装置です
原料油はライトナフサとLPGの2ケースで計算します。
※水蒸気改質反応式とシフト反応式から原料油からできる水素量を計算します。
●ライトナフサケース
ライトナフサはC5H12とC6H14が主です。
・水蒸気改質反応「C5H12 + 5H2O → 5CO + 11H2」
・水蒸気改質反応「C6H14 + 6H2O → 6CO + 13H2」
・シフト反応「CO + H2O → CO2 + H2」
→水素20008km3/hを発生させるために必要なライトナフサ量は8144.7kL/h
●LPGケース
LPGはC4H10とC5H12が主です
・水蒸気改質反応「C4H10 + 4H2O → 4CO + 9H2」
・水蒸気改質反応「C5H12 + 5H2O → 5CO + 11H2」
・シフト反応「CO + H2O → CO2 + H2」
→水素20008km3/hを発生させるために必要なLPG量は8752.0kL/h
細かい計算式は省きます・・・ちょっと書ききれない(笑)
こんな感じでエクセルでひたすら計算してます。エクセル便利(笑)
※素人計算なので無駄も多いでしょうが・・・(笑)
ということで大幅に端折って水蒸気改質装置で
水素20008km3/hを作るために必要な油量は
・ライトナフサで、 8144.7kL/h
・LPGで、 8752.0kL/h
となりました。
結局、
ガソリン6063kL/hより量的には増えてますね(爆)
もうねアホかと(笑)
油種が違うので量で単純比較するのもどうかとは思いますが、此処までの計算結果を一覧にしてみましょうか。
①ガソリン
6063kL/h
②水素
20008km3/h
③A重油(火力発電)
13986.7kL/h
④ライトナフサ(STM RF)
8144.7kL/h
⑤LPG(STM RF)
8752.0kL/h
これが等価です。
現状のガソリン車を燃料電池車に置き換えると、以上のような試算結果となります。
ガソリンを消費しなくなる代わりに
他油種の消費量がガソリンより増えます。
まったくもって環境がどうとか言える結果ではないです。
しかし、見方を変えれば燃料電池は技術的に伸びる可能性が大きいともいえる。まだ未熟な技術ですから。
今回は
燃料電池の効率を約30%で計算した結果になってます。
それが、
将来的に40%程度まで上がったら???
①ガソリン
6063kL/h
②水素(燃料電池効率40%ケース)
14908.3km3/h
③A重油(火力発電)
10421.5kL/h
④ライトナフサ(STM RF)
6068.7kL/h
⑤LPG(STM RF)
6521.2kL/h
こんな感じになります。だいぶ良くなったかと思いますが、
火力発電は相変わらず論外。
水蒸気改質の場合では良い感じになってますが、FCVが優位と言える程良くなった訳ではない。
しかも燃料電池の効率を10%上げるのに必要な年月の内にガソリン車の効率も上がるでしょうから実際ここまで迫れないでしょうね。
じゃあさらに10%アップで
50%だと?
①ガソリン
6063kL/h
②水素(燃料電池効率50%ケース)
11878.1km3/h
③A重油(火力発電)
8303.4kL/h
④ライトナフサ(STM RF)
4835.2kL/h
⑤LPG(STM RF)
5195.7kL/h
燃料電池の効率が50%くらいまでくると、水蒸気改質でのメリットが見えてきた気がします。ただし火力発電は相変わらず論外。
しかし、
問題は全国の水素製造装置を総動員(フル処理)してこの水素発生量が出せるのか?
・・・無理です。
現在の全国の製油所数は22箇所です。(石油連盟資料より)
製油所一つ当たりの
水素製造装置の最大処理(発生)量を調べてみましょう。
※2016年12月時点のデータ
※単位はすべて[kNm3/h]
●JXエネルギー
・仙台:73
・根岸:63.7
・水島A:63.6
・水島B:137.8
・麻里布:12
・大分:16.7
・鹿島:37.5
・大阪:20.7
●東燃ゼネラル
・千葉:33.5
・川崎:54.2
・堺:26.7
・和歌山:22.8
●コスモ
・千葉:100
・四日市:2.3(水素回収装置のみ?)
・堺:64.6
●出光
・北海道:記載なし
・千葉:40.8
・愛知:記載なし
●シェル
・東亜(京浜):記載なし
・昭和四日市(四日市):記載なし
・西部(山口):50
●その他
・太陽(四国);43.2
・富士(袖ヶ浦):15
全22製油所のうち[記載なし]を除いた19製油所の
合計は「878.1kNm3/h」
その
平均は「46.2kNm3/h」でした。
という訳で、全国の製油所の
水素製造能力は878+α kNm3/h程度。20008km3/hの
1/20以下しか水素を出せません。
しかも、石油精製でも水素を使うので最大発生量を全部製品としては出せない。更に言えば定期修理で装置が止まっている時期もある。
ざっくり50%と考えると、出せるのは450kNm3/hくらいかな?
なので20008km3/hの水素を供給しようと思ったら、やはり水の電気分解が必要になり
火力発電のお世話になります。
ガソリン車をFCVに置き換えると水素の必要量が多すぎるんですよ。
その事を鑑みると、
燃料電池の効率を頑張って上げても火力発電で石油を大量消費する事体は避けられないでしょう。
ちなみに燃料電池の効率が
100%の場合の試算↓
①ガソリン
6063kL/h
②水素(燃料電池効率90%ケース)
5844.1km3/h
③A重油(火力発電)
4085.3kL/h
④ライトナフサ(STM RF)
2378.9kL/h
⑤LPG(STM RF)
2556.3kL/h
効率が100%でも水素は5844.1km3/h必要の為、水蒸気改質装置だけでは供給不可能。
450km3/hを水蒸気改質で供給したとして、あと約5400km3/h必要。それを電気分解で供給すると火力発電でのA重油は3772kL/h必要。
LPG(STM RF)2556.3 + A重油 3772kL/h ・・・total 6328.3kL/h
これでもガソリンの量より多い(笑)
まぁ、燃料電池の効率が100%まで行く事は無いですが(笑)
とりあえず、現在の状況では燃料電池の効率が
100%を超えないと環境負荷は下がりません。(※効率が100%を超えることは物理法則的に不可能)
水蒸気改質装置が数百機増設されたり、火力発電の効率が驚くほど上がったり、もっと別の画期的な水素製造方法を確立したり・・・。
そんな大きなことが幾つも起こらないと、「ガソリン車→FCV」の置き換えなんて意味が無い所か環境負荷も石油使用量も悪化します。
※燃焼を伴う火力発電はもちろんですが、水蒸気改質も炭化水素中の水素を取り出して炭素はCO2として排出しますのでゼロエミッションなんて夢のまた夢。
※また、水蒸気改質装置で使用するスチーム(水蒸気)を作るのだって燃料を使用するので、ランニングコストは装置への供給油量だけでは語れない(そこまでの話は今回はしませんが)
しかも
今回はガソリン車だけでの試算ですから、これ以外にもディーゼル車やLPG車なんかもあるので
結果はもっと厳しくなります。
そして性能を上げるために燃料電池の開発に時間をかければかけるほど、FCV採用のメリットが下がっていく
(※)というマジック付き。
(※同時に内燃機関やEVの技術も伸びていく為。)
さて、超長くなりましたが
そろそろ閉幕へ行こうと思います(笑)
「FCVは環境に良い未来の車」そんな
イメージ戦略を進めようとしている世の中ですが、
フタを開けてみればこんなもんです。
水素社会になっても石油に依存し続けます。
というかむしろ今より増える。
なので環境負荷は増える。
「どこも環境に良くなる要素がないじゃん。」っていう私の意見をきちんと計算で出すだけという内容のブログでした(笑)
↓↓内容が長くなりすぎた(笑)ので、ざっくりまとめ↓↓
○各油種の等価エネルギー使用量
[
赤文字が年間消費ガソリン量(6063kL/h)と等価になる使用量]
○効率のまとめ。
[
電気分解80%、火力50%、燃料電池30%の場合の水素とA重油の消費量。]
最後にもう一度断りを入れておきます。
このブログの内容は、ただの車好きの素人が書いているものです。計算や考察などに誤りがある可能性を含んでいる為、その点をご容赦下さい。
以上。ここまで読んだ人は果たして居るのかどうかわかりませんが??
どうもご清聴(?)ご愛読(?)ありがとうございました。
††P.S.††
上の本文(文字だけ)で約11400文字ありました(笑)
※スペース、改行はカウントしない。
結構内容省略したつもりだったのですが、過去最高の長さのブログとなりました。
400字原稿用紙29枚分とかアホですね(笑)