
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
夏の甲子園地方大会が始まりました。時間が許す限り、母校の応援にいくようにしています。
今年は、母校の1回戦が土曜日の第1試合でした。「まだこの先の試合もあるから、今日はいかなくてもいいかな」という迷いもありましたが、早起きを拒む悪魔を振り払って、出発しました。
一塁側の相手校スタンドは、4ブロックのうちの1つさえも埋まらず、在校生を中心にした200人規模の入場者数でした。対照的に、三塁側を陣取る母校は、2,000人規模で満席になりました。
両校の歴史は、さほど変わらないのですが、母校では、野球人気の高さが伝統になっています。40年前に自分が現役だった時代の影響が大きいと思います。ノーシード軍団が奇跡的な勝ち上がりを続け、予選決勝まで進出したことがあったのです。当時の吹奏楽部は、全国3位の実力で、応援団も男子校ならではの力強さがありました。熱血劇場型のスタイルで、TVのディレクターが垂涎する画を提供し続けました。野球部だけが試合に参加しているわけではないところが面白く、それが今も続いているのを感じています。
自チームが得点すると、第一応援歌の大合唱になります。隣同士で肩を組む習慣があり、自分が現役のときは、それが最大の楽しみでした。見も知らない女子高生に、「肩組んでいいですか?」と堂々と訊ねることができました。男子校でしたので、それが唯一同年代の異性に触れられる機会でした。首筋をチラ見すると、陶器のように美しい地肌が見え、球場全体の景色が霞んでしまうほどの愉悦に浸っていたものです。
応援団員には、1人ずつ持ち場があり、その担当エリアの客席を盛り上げる使命を負っています。野球部のユニフォームを羽織った明らかなOBに対しても、現役高校生の団員が、「それでは、選手まで声援が届かないよ」と叱責するところが面白いです。
私のところにきた1年生らしき団員も、気合十分でした。「そのペースでは9回まで持たないぜ」といいたくなるくらい最初からエンジン全開でした。案の定、2回ダウンし、彼は、試合の大半を場外の木陰で過ごすことになってしまいました。体力のペース配分を考えるよりも、猪突猛進で飛ばすやりかたに、私は強い好感を抱きました。足りない分は、ほかの部活と同じように、走り込むなりして鍛えればよいのです。のびしろとして受け取りました。
試合は、不本意な劣勢が続き、9回裏を2-6で迎えました。ブラスバンドは、「プロミネント」というメインテーマを演奏し続けます。「エンドレス」という合図が出たのも見えました。延々と同じ演奏が続くことになります。
実は、この「プロミネント」は、高校のオリジナル曲ではなく、往年のスーパーアイドル、堀ちえみの「CHIEMI SQUALL」が原曲です。野球の応援なのに、音声的には、堀ちえみのライブ会場と化しています。
CHIEMI SQUALL効果もあって、一死一塁二塁の絶好機となりました。4点差あります。走者をため続ける状態を維持したいところでした。ここで、代打が送られました。3年生ですから、ほぼ確実に現役最後の打席になるシチュエーションでした。
彼の選択は、三塁線へのバントでした。初球で失敗し、3球目で成功させました。ナイスバントでしたが、相手校三塁手は予め読んでいて、難なくさばかれてしまいました。スタンドにいた野球部のOBからは、ため息交じりのネガティブな声も聞こえてきました。野球のセオリー的には、あり得ない策です。おそらく、監督の指示ではなかったと思います。本来は、勝ち試合や接戦の緊迫した場面での代打として送られる要員だったのでしょう。一番練習を重ねた、自分が最も得意なプレーをしたのに違いありません。そういう意味では、仲間につなぐ役割をまっとうした見事なラストプレーでした。二死二塁三塁の状態で、この日、4打数3安打と絶好調の打者に打順が回りました。

030 012 000=6
000 200 000=2
試合終了後、スタンドから二度消えたあの応援団員が号泣している姿をみました。上半身は起こせており、救急車を要請するほどの重症ではなかったようです。反撃態勢が続いていた終盤に応援団としての役割を果たせず、試合終了を場外で迎えたのは屈辱だったでしょう。
――来年も頑張ろうぜ。また会おう。
彼の背中に向かって念を送り、球場をあとにしました。
堀ちえみの「CHIEMI SQUALL」を応援歌に指定したのは、私と同学年の吹奏楽部員です。熱狂的なちえみ愛でした。さすがに、卒業式の退場曲まで、ちえみに染めるのは自粛したようで、ほかの曲が選ばれました。それが、奇しくも、菊池桃子の「卒業-Graduation-」でした。全国3位の吹奏楽部が演奏する大好きな曲で母校を巣立った思い出は、今も色褪せることはありません。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
――もしかしてだけど、桃子が愛する人のために、堀ちえみを通じて吹奏楽部に圧力をかけたんじゃないの~。
あれほど誰かを愛せやしないと。
Posted at 2026/07/18 13:32:20 | |
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