
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
日常的にスパムメールにまみれています。さらには、標的型攻撃メールの訓練も受けており、それなりに自己防衛に対する自信は持っていました。――意図的に、「持っていた」という過去形で記しています。
つい最近、かなり身近なところで、詐欺の被害者が出てしまい、その手口の詳細を聞かされて、他人事ではないと思いました。明日は我が身かもしれないと感じる巧妙さがあり、上述のとおり、自分は大丈夫だという自信が揺らいでしまっています。
被害に遭ったのは、知人の父親です。何度も家へ遊びにいっていますので、昔から面識があります。現役時代は、資本金300億円超、従業員数5,000人規模の大会社で重役をされていた方です。頭脳明晰のジェントルマンで、少々老いても、実業界の要人だった頃にまとった風格があります。「特捜最前線」に出演されていた時代の二谷英明似の二枚目です。
この方を襲った陥穽は、「スマホ、探す」のサイトでした。あるとき、スマホを落としたことに気づき、慌ててパソコンで検索したところ、安価な捜索サービスサイトが見つかりました。そこに、紛失した携帯の番号を入力し、結果を待ちます。この段階では課金はありません。結果を知るためには、登録が必要となり、ここで初めて数千円の課金が生じます。ビジネスの習慣で合い見積もりを取るべく、複数の業者にこの登録作業を行っていました。
本人は、スマホ紛失の動揺から気づいていませんが、仕掛けた側には、携帯番号とカード番号が紐づいた状態で渡ってしまっています。ときすでに遅しです。詐欺側も、いっぺんに大金を引き落としてはきません。真綿にくるんだ針でじわじわと深部を刺し続けます。
今回の被害総額は、1万円でした。引き落としは、何故か、オランダとカナダで実行されていました。
当事者は、「俺は、もう駄目だ」とひどい落ち込みようで、むしろそちらのほうが心配になりました。せめてもの反撃として、手口を紹介して欲しいと頼まれ、本稿を記しました。
これだけでは、読後感が悪いと感じていたところ、私の中にいるリトル桃乃木の持病が活発になってきました。
――ここからは、空想、妄想の話です。
桃子は、膝枕の態勢を作ると、耳かきを手にした右手で俺を誘ってきた。「この間してくれたばかりだぜ」と拒んでも、かぶりを振って許さない。必ず耳掃除は行われる。いつもその流れで顔のマッサージとなる。きっと、そういうスキンシップが好きなのだ。
アイドル時代からチャームポイントだった、ひときわ大きな瞳が、至近からだとさらに巨大に見える。その中心部に俺が映っている。
「私ね。なんだかずっと自分自身を詐欺に遭わせていた感覚なの」
「どういうこと?」
「だってね。初恋の(桃乃木)ケンジさんとずっと一緒にいたかったのに、自分の本心をだまし続けていたんだよ」
「待ってくれ桃子。詐欺という面では、俺のほうが重罪だ」
桃子が、興味津々の表情を見せ、顔を近づけてきた。「早く答えを教えないと、口づけお預けだぞ」という誘惑交じりのポーズを見せている。
直ぐに陥落し、種明かしをした。「俺は、こんなに桃子を愛しているのに、その気持ちの1%も伝えられていない。なのに、一緒に暮らし始めてしまった」と。
心なしか瞳が潤んだ桃子から、自分のどこが一番好きなのかを問われ、俺は黙考に入った。
――整いました。桃子のチャームポイントかけて、大好物の中華料理と説きます。その心は、熱々のしせんが一番好き。
桃子が嬉しそうに微笑んだところで、ホワイトアウトし、夢か現実か自分で認識できない状態に陥った。
1990年に公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「トータル・リコール」は、記憶を植え付けて妄想を体験させるサービスが物語になっていました。近未来で、AIを使ったそういうサービスが現実のものになりそうな気がします。本稿で記した妄想も、「トータル・リコール」のような会社で可能になることでしょう。必然的に、詐欺まがいの事件や事故も起こり得ます。
「1時間という契約じゃないか。ヒロインといい雰囲気になったところでホワイトアウトさせやがって」
「桃乃木様。お気持ちは分かりますが、ちょうど1時間経ったのです。追加料金で夢の続きは、いかがでしょう」
この会社では、本物と瓜二つのヒロインが出てきましたが、偽ヒロインしか出てこない悪徳プログラムもあるかもしれません。未来が訪れても、「妄想、体験」のキーワード検索で上位にヒットする怪しいサイトは、要注意だと思います。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
――もしかしてだけど、桃子の妄想と俺の妄想が一致してリアルな描写が生まれたんじゃないの~。
めぐり逢えた瞬間から、魔法が解けない。
鏡のような夢の中で、思い出はいつの日も雨。
Posted at 2026/08/09 14:25:19 | |
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