
てなことで、わがエスクが長期入院となってしまいました。
しかしだからと言って、基地に篭っていると、悶々として精神衛生上よろしくないので、お休みにはやっぱりお出かけするのです。
向かった先は、十勝の南地方、道々987号線、通称豊似広尾線。そう、場所というよりこのルートを走ってみたかったのでした。
広尾市街地から、山中を豊似地区に抜ける、7㎞程度の、なんてことのない道々ですが、
この時まだ通行止めで走れなかったのが気になっていたので。
実は、9月はじめにも、シェルパくんでツーリングを兼ねて、再度行ってみたのですが、この時も事前の確認を怠ったので、大雨による通行止めだったのでした。今回は3度目の正直になるか。
昼食は最近、こちら方面へ来たからには寄らずにおれない、赤門のラーメン。今回は塩にしてみましたが、スープがウマウマで満足です。
旧車カレンダーは、ハンドメイド117クーペでした。(笑
そしてこれまた寄らずにおれない、十勝港。今回変わった大型船などはいませんでしたが、海保の巡視船「とかち」が停泊していました。
2017年に配備された、比較的新しい船です。
かなり大きく見えるのですが、調べると意外や650トンだそう。
目についた、このバウ側面に付いている装備が気になりました。どう見ても着岸時の防護装備ではなく、なにか戦車の防御装置を彷彿とさせますが、不審船に対峙する場合に、強制的に停船させるために、当てるのかもしれません。
スターン側を見て驚いたのは、ウォータージェット推進なこと。てことは、エンジンもタービンエンジンか。
この「とかち」について調べたけれど、海自と違って、海保はあまり船舶の情報を詳しく載せてくれないので、はっきりとしたことはわかりませんでした。体験航海は行ったことがあるようですが、おそらく青少年向けのリクルート用で、一般向けではないと思われるので、来年は、十勝港で一般公開しないか、チェックが必要です。
そんなこんなで近頃枯渇していた塩成分も補給したので、広尾の市街から、山へ向かってみますと。事前にもちろん調べていましたが、うん、今回はちゃんとゲートが開いています。
と。あれれ、ゲートを通過してすぐに、道はグラベルになってしまいました。しかも対向車があったら、離合できないほどの狭さです。
しかし道はフラットダートで、ほんの数㎞ほどでした。夏の大雨の爪痕でしょうか。路肩が崩れていたり。
もう少しちゃんとした農道だと思っていたので、路面と言い、これは全く想定外。
山は紅葉がきれいで、ちょうど見頃ですが、どんにょり天気なのが惜しい。
それにしても、事前にぐーぐる地図でも確認していたのですが、最近は、グラベルでもストリートビューを撮影するようになったようです。これまでは、舗装が切れたら乗り入れることがなかったので、ストリートビュー=舗装路と認識していたのですが。
狭く曲がりくねったグラベル路なので、ゆっくりと山を降りると、牧場が点在し始め、人里へ戻った感じがします。
こんな林道だとは思っていなかったので、かなり予想外の道で、あっさり通ってしまいましたが、走れたので満足なのでした。
峠を降り、国道336号線近くまで戻ったところで、トイレに行きたくなりました。
しかし国道沿いにはコンビニ等はなく、この後走る予定の東へ向かうルートも、何も設備がないところです。
海沿いの公園に、確かトイレがあったはず、と行ってみると、季節的なものか、それとも施設そのものが老朽化したのか、閉鎖されていました。
いったん、広尾の市街地まで戻るか、と思ったところで、道沿いの施設に、明かりが点いているのを見つけました。
そういえば、ここ海洋博物館だったっけ。時間もあるし、これまで入ったことがなかったので、ついでに見学することに。雨が本降りになっていたので、外観は撮り損ねました。
するとこの日が特別だったのか、なぜか無料開放中。
受付の方には「無料ですが、2時で閉館になりますので」と言われましたが、まあ時間も1時間近くあるし、どうせ大した展示でもなかろう、と入ってみると。
入口付近には、海洋系らしく、魚や漁業についての展示。
トイレは奥か、と、進んでみると、なにやら船関連の展示がずらりとあるではありませんか。
おお、これは、と、トイレを済ませてじっくり見てみると、数々の船の模型や、船舶関連の装備など、なかなかの展示内容です。
これは、先ほど十勝港で見た、巡視船「とかち」の先代です。
釧路に見に行った、「そうや」の精密な模型。船首のペイントは現在の「PLH」ではない、旧版の「PL」時代のですね。
そうか、砕氷船の船首ってこうなっているのか。
さらには、漁船用のディーゼルエンジンも展示してありました。
1960年代のもので、こういった地味な展示はなかなかされないので、逆に貴重。
三菱製の6気筒110馬力、5トン程度の漁船用とか。
それにしても、この6DR-10という型式、自動車用のそれと酷似しており、例えばかつてのパジェロなどに積まれていたのは「4DR5」という型式だったので、型式の法則は陸海共通なのか。
というか、これ、船舶専用ではなく、産業用や自動車用にも使われていたのでは、と思って調べてみたら、やっぱり同時期の三菱ふそうのマイクロバス、ローザなどにも搭載されていたようです。
前述の4DR5も、パジェロやジープのエンジンで有名ですが、自動車以外にも、建設機械などにも広く積まれて活躍していました。
船舶系展示の隣部屋には、生物コーナーがあり、主に剥製の展示。生物標本の中には、ウミガメもあり、これは広尾沖で採取されたものとか。いるんだウミガメ。暖かい地方の海にいるイメージだったので、ちょっと驚き。
さらに奥には歴史展示物も。開拓時代の古書など、珍しいものも数多くあり、中でも驚いたのがこれ。
明治時代の「地券」。現代で言う権利書です。こんなの、現物は初めて見ました。
戦時物資の展示も。
これも、太平洋戦争時のものかと思いきや、驚いたことになんと日露戦争当時のもの。
思うに北海道って、内陸は開拓が困難だったので、例えば帯広あたりが大きな町になったのは、昭和初期以降でした。明治、大正期は、内陸はまだまだ未開拓の空白地帯で、人が集まる「街」は、船で移動できる海沿いに限られていたのです。
なので、良港がある海沿いの地域が「街」であったわけで、その頃の広尾町は、さぞかし賑やかだったことでしょう。
そんな理由で、海沿いの地域ほど歴史が古く、また、ニシン漁などで富裕層も多かったであろうことから、古い展示物も多く残っているのだと思います。
かわねこ、大規模な博物館より、ちょっと変わった収蔵品があることが多い、こういう地方の郷土資料館が好きですが、広尾はこれまでノーマークでした。
しかし、大したことがないどころか、ここは他では見られない貴重な展示物が数多くあり、なかなかのものだったのです。
建物は、ドア取っ手の意匠などからも、おそらく昭和のものと思われ、今後の存続が少し心配ですが、素晴らしい展示物を引き継いでいって欲しいものです。
てなことで、ちょっと寄るだけのつもりだったので、上着を着ずに入ってしまったのは失敗でした。身体が冷えてしまいましたが、閉館間際まで、しっかり1時間堪能。
でもまあ、寒さを忘れるほどの展示品の数々を見ることができて、結果的には大満足な休日だったのでした。