大盛況だった、先日の
道スイ春オフ。
その会場となった場所は、芦別市のカナディアンワールド公園でした。ここは1997年に閉園した、カナディアンワールドというテーマパークの跡地を、芦別市で公園化したものです。
カナディアンワールドは、産炭地らしく露天堀りの炭鉱跡を利用して、1990年に民間がオープン。当時はずいぶんテレビでのCMなども流れたものですが、しかしバブル期に企画されたとあって、もともとカナダを再現したテーマパーク自体に無理があり、赤字続きで閉園になったのですが、わたしはこれまで行ったことがありませんでした。
いや、正確には
この時に横を通ってはいるのですが、まだたっぷり積雪していたので、通過したのみ。
かなり広く、すり鉢状でそこそこ景観の良い立地だけに、きちんと整備して宣伝すれば、それなりに人気が出そうな気もするのですが、管理費用もまた莫大なものになるのも容易に想像できるように、テーマパーク時代の建物はほとんど閉鎖され、なおかつ管理もおざなりなので、廃墟の公園的な違和感を感じるのがもったいない。
せめて、閉館した建物の周りの廃品だけでも見えなくすれば良いものを、などと部外者は思ってしまうのですが。
閑話休題。
さて、オフ会場近くの公園入り口に、なんだかわけのわからないオブジェが置いてあるのが目に付きました。
蒸気機関車を摸したクルマで、もちろん不動車。テーマパーク時代には、どうやらこれにお客さんを乗せて、広い園内を走っていたらしい。
全体を真っ黒に塗装されてはいるものの、サイドに吐水口があることから、もとは消防ポンプ車だったものを改造したのは一目瞭然です。
ボンネット型なので、かなり古そうだなあと眺めてみると、先端に取り付けられたガードの向こうに見えるグリルが気になりました。
無骨なそのデザインは、もしかして、ランドクルーザーの前身、トヨタBJか…!?と思い、インパネを覗いてみると、ステアリングのセンターには、見たことのある「N」のマークが。
あっ、これパトロール(サファリの前身)だ、と思って写真を撮ったのですが、どうも違和感がぬぐえません。
インパネのデザインが、初期のパトロールにしてもずいぶんと無骨なかんじだし、外観もこいつは先端が細くなったノーズと、独立したフェンダー。外されていますが、そのフェンダー上にはヘッドライトがあった痕跡が。そういえばパトロールは、最初からグリル内にライトが埋め込まれたジープのようなデザインだったはず、と、帰宅して調べてみるとやっぱり違う姿をしていました。
ではパトロールじゃなければ、こいつはなんだ?
トランスファーレバーがあることから4輪駆動で、しかもフロントウインドウは垂直に切立って、両脇に独特の形をしたリンクがあり、可倒式になっていることから普通のトラックではありません。全体の大きさも、4tクラスのトラックにしては小さく、ジープタイプの4駆にしてはやや大きい。しかもホイールが軍用トラックのそれに酷似しています。
そういえば、大戦中から戦後にかけても使われていた、ダッジの軍用トラック、3/4tウエポンキャリアに似ているなあ、と思った瞬間、気付きました。
あ!こいつ、日産キャリアじゃないか?!
日産キャリアとは、上記の3/4tウエポンキャリアをベースに、戦後国産化したもので、日産のほかに、トヨタでも似たものを製造したようです。
元が自衛隊向けに造られたので、キャブオーバー化された73式中型トラックに代替される1970年代までは、比較的よく見かけたものでした。
調べてみると、日産による正式名称は「日産キャリヤー」でした。なので、以後それに倣います。
その日産キャリヤーならば、民生用としても流通しており、それをベースとした消防ポンプ車仕様もあったはず。
ネット恐るべし。民生用型式の「4W73」(ちなみに自衛隊仕様はQ4W73)で検索すると画像が出て来て、細部からこれが日産キャリヤーであることが確認出来ました。さらには、モデラーの方が軍用トラックモデルを改造して、消防車仕様に仕立てたものまであり、往年の姿を見ることも出来ました。(消防車仕様の画像は、個人HPのものなので、転載していません)
恐らくは、芦別近郊の消防団で使われていたものでしょう。グリルの形状から最初期の4W70ではなく、中期の4W72か、最も生産台数が多いとされる、最終型の4W73ではないかと想像します。
キャリヤーは、この時代にありがちな、自衛隊用、民生用であったり、年式によって細かく仕様が違い、謎の部分も多いらしい。が、とあるところで、後期型は、ペダル類が吊り下げ式になっている、との記述を見つけたので、それでもこの個体は1955~1960年頃の車両と推察されます。
消防車仕様ならば、後部に団員を乗せるために対面式シートが付いているので、それをそのまま利用したのでしょうね。でも、乗り心地は超絶に悪そう…。^^;
しかしこの扱いは、あまりにも酷い。
日産キャリヤー自体が、現存数もかなり少ないはずですし、それの消防ポンプ車仕様となれば、なおさらのこと。
このままここで野ざらしにされると、朽ち果てて、価値を知らない自治体によって、スクラップにされるのは目に見えています。
もちろん、これをレストアするとなれば、相当な金額と手間暇がかかることから簡単ではないことも承知していますが、乗用車と違って、現存数がただでも少ないトラックとあって、なんとももったいないですね。
もちろん、もう部品は手に入りませんし、上記のような誕生の経緯なので、使われているボルト類が、インチサイズでそれこそ現在では入手不能な貴重なものだそうです。
戦後、米軍車両のノックダウンから始まり、現在の自動車工業の黎明期に生まれて、発展の礎となった日産キャリヤーの経歴は、立派な近代遺産だと思うのですが。
画像のように、既に自重でタイヤがアスファルトにめり込み始めているので、オブジェとしてもいつまで置いてくれるやら。
また芦別に行く機会があったら、もー少しじっくり見てこよう。^^
※追記
この後、2014年に行ってみた折には、もう少し詳細な写真も撮ってきています。
ご参考までに。
日産キャリヤー
Posted at 2013/06/06 22:35:55 | |
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