2016年12月10日
太平洋戦争当時、日本にはM4シャーマン戦車の装甲を正面から確実に貫通できる火砲はなかった。
四式中戦車の話を書いたが、その四式中戦車の主砲だった5式75ミリ戦車砲は距離1000メーターで140ミリ(命中角度90度)の装甲貫徹力があったと言う。ただ、これは弾丸が装甲に直角に当たった場合の話で装甲に傾斜がついていると当然貫徹力は減殺される。
陸軍はM4中戦車の砲塔正面は45度傾斜した85mm、防盾部は85mm+39mm、車体正面は45度傾斜した51〜65mmと想定していたようだから1000メーターで貫通できるだろうけれど当たり方によってはダメかもしれないので側面や後面を狙うのが良いかも、・・と自信のなさそうなことを言っている。
この戦車砲はスエーデンのボフォース社製のものを鹵獲してコピーしたもので性能的には日本にはこれ以上の火砲はなかったようだ。沖縄戦などでは88式8センチ高射砲でM4を射撃して擱座させたと言うが、この砲は1000メーターで80ミリ程度の貫徹力なので5式戦車砲にはやや劣る。
海軍の98式8センチ高角砲なら初速が900メーターもあるので貫徹力は5式戦車砲よりも大きいだろうが、元々船に積むことを想定して作ったので連装で構造が複雑で戦車に積むには相当に軽量化しないといけないだろう。そうしてみると日本には1000メーターでM4の装甲を正面から確実に貫通できる火砲などなかったことになる。
それじゃあやっぱり戦争には勝てないよなあ。偉大なる凡作と言われたM4でさえこれだからドイツやソ連の戦車など持って来られたらなおさらお手上げだっただろう。90式戦車が世に出た時に、「よくぞ日本もこんな戦車を作ったものだ。これを持って行ってルソン島や沖縄でM4と戦わせたら、・・」と思ったが、同じようなことを思うのは他にもいるらしくてそんな空想戦記小説が出ていた。
90式ではM4など接近することもできないだろうけどもしも側面や後面を狙われたらやられるだろう。まあ急迫不正な侵略を受けて自存自衛のために戦う以外には戦争など無闇に仕掛けてはいけない。まして自分よりも国力も科学技術もはるかに勝る国には絶対にいけない。75年前にこのことを肝に銘じるべきだったんだろう。
ブログ一覧 |
軍事 | 日記
Posted at
2016/12/10 23:47:04
今、あなたにおすすめ