2018年02月03日
佐山芳恵再び、・・(^。^)y-.。o○(25)
「この女はどうしてこうもデリカシーがないのか知らねえ。よくもその勢いで食事なんかできるわね。あんなことがあった後で。」
クレヨンがつくづくと呆れたように言ったが、食事をして栄養をとらないと傷が回復しないではないか。
「じゃあ、私も。でもご飯はいらないわ。」
女土方がそういうとテーブルに着いた。女土方の前に飯抜きのとんかつ定食が運ばれてきた。考えてみればこんな時間に食事の用意など申し訳ないのだが、ここのお手伝いさんはプロ意識に徹しているというのか、食べた後を片付けるという僕たちの申し出を一蹴して、「お済みになったらお休みください。」と言って自分の部屋に戻ってしまった。
食事を終えると僕たちは部屋に戻った。どうもその頃から例の本能がかなり強くなってきていて落ち着かなくなっていた。今日は緊張したり興奮したりしたからだろうか、神経が興奮状態なのかもしれない。しかし、クレヨンがいるのでその湧き上がってくる本能をむき出しにするわけにもいかなかった。
「疲れたわ、そろそろ休みたい。」
僕はそう言うとベッドに行って転がった。クレヨンは女土方を振り返った。女土方がクレヨンに黙ってうなずくとクレヨンは、「いろいろと聞きたいんだけど今日は遠慮するわ。ゆっくり休んでね。」と言って部屋を出て行った。これでやっと女土方と二人きりになれた。
「ねえ、ちょっとこっちに来て。」
僕は体の奥から突き上げてくる欲求にもうほとんど耐えられなくなってきていたので女土方を呼んだ。そしてベッドのふちに腰を下ろした女土方を思い切り抱き寄せた。そう、何でこんな時にと思うが、僕は湧き上がってくる自分の性欲を抑えきれなくなっていた。大昔、性欲を運動や文化活動などに昇華させると良いなどと書かれている御大層な書物があったが、本来別物なのだからせっせと運動したり読書などしてもそんなものが昇華するわけもない。むきになって運動などすると却って性欲が強くなる時がある。まあ、男なんて生き物は即物的なろくでもない生き物なのだろう。
いきなり抱き寄せられた女土方は激しく抵抗してしばらくもみ合いになったが、力は僕の方が強い。傷が押されて痛みが走ることもあるが、男ならその痛みで興奮はぐにゃりとへし折れるかもしれないが、女にはへし折れるものがないのは好都合だった。でも女土方はどうも受け入れる気がないようで抵抗を止めようとしなかった。こうなりゃ力づくでもと思ったが、それもあまりにも強引だし、ばたばたしてクレヨンにでも踏み込まれてもばつが悪いので、「ねえ、どうしても我慢できないの。今、あなたが欲しいの。お願い、受けて。」と女土方に囁いた。その一言で女土方は力を抜いて身を任せて僕を受け入れてくれた。ああ、受け入れてくれたという表現はこの場合、やや語弊があるかもしれない。相手をしてくれたというべきだろうか。
しかし、こうした感情というのは男そのもので女土方には大いに違和感を感じるところなのだろう。それでもかなり真剣に受け止めて相手をしてくれたことは女土方にもそれなりの気持ちがあったのかもしれない。そうして一通りやることをやってしまうとやっと気持ちが落ち着いてきた。僕は女土方を抱き寄せると、「心配かけて本当にごめんなさい」と謝った。女土方は僕の胸で大きくため息をついた。
「あなたって本当に私には理解ができないところがある人ね。今日のことも今のことも一体この人どうしてって思うことばかり。でもね、社長も言っていたけどあなたはあなただけのものじゃない。あなたを必要としている人がたくさんいるの。そのことの重さは分かっていてね。」
僕はそう言われて何だか照れ臭かったが、少なくともこの腕の中にいる女と壁を隔てて隣の部屋にいるサルはそうなんだろう。もしかしたら社長や北の政所様もそうなのかもしれない。
「ちょっとシャワーを使ってくるわ。」
女土方はベッドから起き上がってシャワー室に入って行った。それと入れ替わりにクレヨンが入って来た。
「ねえ、こっちにいてもいい。何だか怖くて。あなたが刺されたことを思うと怖くて一人でいられないの。」
身支度は整えていたけれど、このサルはどうしてこういう時に入ってくるのだろう。 枕を抱えているところを見るとどうもこっちに寝るつもりらしい。もう欲望は収まっているのでいいのだが、さっきの状態ならこのサルでも餌食にしていたかもしれない。男の性としてやむを得ないところもあるが、本当に我ながら節操がないと大いに反省した。
「どうしたのよ、あんたは。枕なんて抱えて。子供じゃないんだから一人で寝なさいよ。」
「だって、もしもあなたが刺されて死んじゃったらどうしようと思うと怖くて怖くてどうしようもなくなって。良かったわ、何ともなくて。」
死ななかったことは確かだが、何ともなくもないんだけど、やったことの結果としては、まあかすり傷ということでいいのかもしれない。こいつもそれなりに心配していてくれたんだろう。
「あんたね、人を勝手に殺すんじゃないの。そんなに簡単に殺されてたまるもんですか。ここで寝たければ床にでも寝たら。」
僕はこのサルにも心配をかけたことをちょっと申し訳なく思ったが、あまりそんな態度を見せるとまたつけ上がるのでわざとぶっきらぼうに答えてやった。
「床でもいいわ。じゃあ毛布を持ってくるから。」
サルが立ち上がろうとするとシャワー室から女土方が出てきた。
「そんなに邪険にしてはだめ。この子もあなたのことをずい分と心配していたのよ。良いわよ、こっちで休みなさい。」
女土方のお墨付きでは僕には何とも言いようがない。もっとも僕にしてみればちょっとうるさいことさえ我慢すればこいつがここで寝ることには何の問題もないのだが、ちょっと女土方に気をつかっているだけだった。女土方のお墨付きを得たクレヨンは急に勢いづいて僕のベットに倒れ込んだ。
「ここで寝てもいいかな。」
クレヨンはベッドで飛び跳ねながらバカみたいな上っ調子の声を上げた。『お前な、そんなにはしゃいでいると思い切り弄んでやるぞ』僕は口には出せないので心の中でそう言ってやったが、女土方がいては何ともしがたいのでサルのように跳ね回るクレヨンを見つめていた。
「私は一人で寝るの。」
女土方がちょっといたずらっぽい笑顔を浮かべて言った。
「うーん、じゃあ三人で一緒に寝よう。」
本気とも冗談とも取れる女土方の物言いにクレヨンがちょっと困った顔をして答えた。
「彼女は怪我しているから一人でゆっくり寝かせてあげよう。今夜、あなたは私と一緒よ、いいわね。」
女土方に言われてクレヨンは黙ってうなずくと枕を抱えて女土方のベッドに移った。こいつが来なければ女土方ともう一度くらいできたかもしれないのに本当に邪魔なやつだ。
「ああ、疲れた。そろそろ寝るわ。あんたは静かにしていなさいよ、いいわね。」
僕はクレヨンにそう言うとベッドにごろりと横になった。今日は確かにいろいろなことがあり過ぎた。横になると切られた腕と足に鈍痛が戻って来た。特に傷の深い脚にはかなり強い痛みが規則正しく押し寄せてきた。
『傷が痛む時はためらわずにどんどん使ってください。』
医者にそう言われて鎮痛剤を処方されたが、特に使ってはいなかった。でも安眠のために使うことにしてベッドから起き上がった。経口と座薬の二種類を処方されていたが、両方使うことにして薬を手にすると洗面所に入った。
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小説3 | 日記
Posted at
2018/02/03 16:26:21
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