最近のアルピナの試乗記は残念なものが多く、
今月号のCG誌のアルピナB5の試乗記も期待せずに立ち読みで済まそうと思ったのですが、しっかり書いてあったので久々に購入しました(爆)。
アルピナの試乗記というと、アルピナの出自に始まってメーカーの性格などを延々と書いてある(ひどいのになると全記事の半分くらい)ものが多く、例えばポルシェでしたら911の新バリエーションの記事で『ポルシェ911のデビューは1963年で最初は2Lだったのが云々…』などとずっと歴史を書かれても「そんな分かり切った事どうでもいいから!!」なんて思うのと一緒ですが(爆)、今回の記事はそんな事は一切なく試乗だけのインプレッションです。
エンジンの感触に関しては微速低速域でのピックアップ特性の検証に始まり、減速側のエンジンブレーキの程度にも言及しています。この手のハイパワーカーのインプレだと「怒濤の加速」だの「背中がシートに押し付けられる」などの表現はあっても減速時の挙動にまで述べている記事はほぼ皆無ですね。
言われてみると
自分で試乗したB3でもスポーツモードではエンジンブレーキが素直に効いて、まるで自然吸気のスポーツモデルを走らせた時のようにアクセルペダルでコーナリングのリズムが取れる事に感心しましたが、同様の指摘ですね。
サスペンション回りに関しては、現行のB5には採用されている(先代のF10のB5には無かった)後輪操舵機構に関しても「M550i xDriveに比べるとはるかに繊細で階調が豊か」と違いを指摘していますし、四輪駆動に対しても「トルクステア効果への対応も織り込みながら軽やかなステアリングフィールを死守し、リニアリティを保つのは容易なことではないだろう。自分が開発する側に立たされたら、即座に逃げ出してしまうだろう」とまで述べています。
タイヤに関しても「P-Zeroだと思うと意外なほど路面への当たりが優しい。しかも驚異的に丸い。最高級のミシュランかと思うほどの体感的真円度の高さだ」とあり(笑)、従来のアルピナオーナーが感じている「なぜミシュランからピレリにタイヤをコンバートしたの?」という疑問にも答えています。アルピナ認定だとやはり特別製なのかもしれませんね(爆)。また、ピレリの供給タイヤに関してもサスペンションの設定など綿密に行っているのでしょう。
こうした違いを的確に感じ取ってインプレ記事に出来る方なら良いでしょうが、そうでない人だと同様のハイパフォーマンスカーとの違いが分からず、表現に困ってアルピナの出自や広報データのコピペで文面を潰した上に「内装が素晴らしい(アルピナは基本オプションなので別に標準装備ではないですが)」とか勘違いの部分で持ち上げたりしてしまいがちです。アルピナの担当さんによると『ジャーナリストの方には「忖度しないで好きな事書いて下さい」とお話しています』と言っているそうですが、そうなると本人の力量が問われますね(爆)。
CG TVで松任谷さんが多用する「うーん、何て言ったらよいんだろう(我が家ではギャグになってます)」では文面にならない訳で、ともすると同じ4LV8ターボで4輪駆動という、標準BMWのM550iやM5に対してアルピナの価値を的確に表現したインプレだと思えます。こうした記事ならお金を出して買う価値がありますね。松任谷さん自身もアルピナは好みで感触は当然分かってらっしゃるでしょうから、視聴者に伝わるような表現だといいですね(爆)。
アルピナってある意味高級腕時計や高級オーディオのようなもので、どんな特別な部品を使っていたり(最近のアルピナはそこまででも無いようですが)手間をかけて組み立てていたりするところが違いの分かる方達を引きつける部分がある訳で、ターボ時代になってからは加速や馬力のスペックそのものは他メーカーや本家のBMWとも大差無くなっているので訴求力は少なくなっているのでしょうが、購入した方にリピーターが多いのは乗れば乗る程味わいがあるという事でしょうか。
『公差ゼロを目指す』というのは普通の自動車作りを考えたらあり得ない目標な訳で、それを半年かけて形にするというのはベースがBMWとは言え大変なものだと思います。今や欧州ならどのメーカーでも開発は専業メーカーに丸投げでエンジンはモジュラー設計で単品毎の仕上げはせず、グレードでもジャーナリスト受けのする高性能グレードには力を入れるが一般的グレードに対しては市場に出してから年次で細かくバグ潰し、といった傾向が多数を占めているようですが(爆)、アルピナがこれからのPHEVやEV時代にどのように生き残って車造りをするのか興味津々ですね。社長が交代になっても年間の生産台数を増やす計画は無いようなので基本的な車造りに変化はないと思いますが、頑張って欲しいです。
そう言えば、CG誌のジウジアーロ御大の回顧録は今月は幻となったブガッティのEB112の記事でした。オリジナルのオマージュが非常に感じ取れる超高級セダンですが、もしこれが市販されていたら当時のブガッティも倒産せずに違う運命をたどったのでしょうか。
斜め上からのフォルムもクラシックのブガッティのリアウインドウグラフィックを模していてなかなか秀麗ですね。エンジンもEB110の排気量拡大バージョンが載っていたので優雅に速いのでしょうね。ちょっとパナメーラに似ていなくもないですが。
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試乗インプレ | 日記
Posted at
2021/07/13 12:26:48