2023年のモトGPが始まって2戦を消化。今年は本レース前にスプリントレースが入る事で、本番のレースに向けての戦略も大きく変わっていくと言えそうだ。この変更は主催者のドルナの意向が大きいが、本番の前に小レースを見せる事で商業的にも人気をアップさせる意味合いが大きい。またスプリントレースは本レースの半分の周回数となるので、長い本レースではタイヤに問題を抱えるチームには期待できるとも言える。今年は全21戦。スプリントを含めると倍の42戦となる(但しスプリントでのポイントは本レースの半分となる)。まだ2戦を消化しただけだが、色々な問題が感じられたので考えてみたい。
今年、エントリーしているメーカーは日本からホンダ、ヤマハ、イタリアのドゥカティ、アプリリア、オーストリアのKTMとスペインのGASGASの6メーカー22台である。
去年のチャンピオン、ドゥカティはワークスはフランチェスコ・バニャイアとグレシーニから昇格したエネア・バスティアニーニ。サテライトチームのプリマプラマックからヨハン・ザルコとホルヘ・マルティン。VR46からルカ・マリーニ、マルコ・ベッツェキ。グレシ―二からファビオ・ディ・ジャンナントニオとLCRホンダから移籍したマルク・マルケスの弟のアレックス・マルケス。
アプリリアワークスからはアレイシ・エスパルガロ、マーベリック・ビニャーレス。去年はヤマハのサテライトだったRNFはクリプトデータRNFチームとしてアプリリアのマシンに変更、ライダーはKTMワークスだったミゲル・オリベイラと、KTMサテライトのテック3だったラウル・フェルナンデス。
KTMワークスはブラッド・ビンダーに加え、ドゥカティワークスからジャック・ミラーが移籍してきた。
初エントリーのGASGASはモトクロスやラリーで実績あるメーカーだが、モトGPマシンは基本KTMと同型である。チームはテック3、ライダーはホンダワークスからポル・エスパルガロと昨年のモト2王者のアウグスト・フェルナンデス。
ホンダはエースのマルク・マルケスに加え、2020年のモトGP王者のジョアン・ミルがスズキから移籍。チャンピオン経験者を揃える。サテライトのLCRホンダは中上貴晶とスズキから移籍のアレックス・リンス。
ヤマハは昨年の2021年の王者、ファビオ・クアルタラロとフランコ・モルビデリが継続。
では第1戦。今年はポルトガルのポルティマオサーキットからスタート。高低差の大きい起伏のあるコースだ。予選では何とホンダのマルク・マルケスがトップ。ドゥカティワークスのバニャイアとプラマックのホルヘ・マルティンが続く。トピックスでは予選でGASGASのポル・エスパルガロが転倒。グラベルエリアまで滑って行ったのだが、グラベルの小石が大きい(バニャイア曰く、「岩のようだ」)為、大ケガ(顎と脊椎を骨折。但し神経には異状ないようだ。またポルが妻に宛てたラブレターがネットで見れるが、これには涙)となり、入院してしまう。スプリントレースではバニャイアが優勝、マルティンが2位、3位マルケスとなる。低迷の続いたホンダにとってこのリザルトは嬉しい限りだろうが、残りの3名はリンス13位、中上15位、ミルはリタイヤだった。また、ルカ・マリーニの転倒が原因でエネア・バスティアニーニを巻き込み2人ともリタイアした。バスティアニーニは負傷して本レースには出られなくなった。次の日の本レースでは優勝バニャイア、2位アプリリアワークスのビニャーレス、3位はドゥカティVR46のベッツェッキ、日本勢最上位は8位のヤマハのクアルタラロだった。トピックとしては5週目に起きたマルク・マルケスの追突事故だろう。ハードタイヤをフロントに履いていたマルケスはフロントブレーキをロックさせ、ホルヘ・マルティンに接触後、コーナリング中のアプリリアのオリベイラに追突してしまった。マルティンは走行を続けたが、この接触が影響し後にリタイヤ。オリベイラは転倒リタイヤ。マルケスも右手親指の中手骨骨折のケガを負いリタイヤする事になった。この件は後でまた触れよう。
2戦目はアルゼンチンGP。予選トップはアレックス・マルケス。ホンダでの苦戦が続いた彼はドゥカティに移ってからは調子が良い模様。前戦でも本レースで5位に入る活躍を見せた。2位はベッツェッキ、3位はバニャイアとドゥカティが続いたが、4位にはヤマハのモルビデリが着けた。スプリントレース優勝は何と予選15位から14台のごぼう抜きを演じたKTMのブラッド・ビンダー。2位ベッツェッキ、3位ルカ・マリーニのドゥカティのVR46勢が表彰台に乗った。モルビデリは4位だった。雨中の本レースではベッツェッキが初優勝。鬼神の追い上げのザルコが2位、アレックス・マルケスが3位、4位ヤマハのモルビデリとなった。スプリント優勝のビンダーは転倒の為、17位完走。優勝争いを演じたバニャイアも転倒し16位でレースをノーポイントで終えた。この為、暫定ランキングトップは50ポイント獲得のベッツェッキがトップ、41ポイントのバニャイアが2位、3位は35ポイントのザルコとなった。また前線で負傷したポル・エスパルガロ、マルク・マルケス、ミゲル・オリベイラ、エネア・バスティアニーニの4名は欠場となっていた。また、スプリントレースで転倒したミルも欠場した。
2戦を終えて負傷者4名という激しい展開の今年のモトGP。中でも熾烈を極めるスプリントレースは接近戦の抜きつ抜かれつのバトルはヒヤヒヤもの。迫力という意味ではドルナの目論見どうりだが、スプリントに異論を唱えるライダーも多いようだ。
また第1戦のマルク・マルケスの追突ではブレーキの不調もあったとか、ハードコンパウンドのタイヤが温まってなかったとかのはなしもあるようだが、単純なマルケスのミスである。ただ彼のミスはギリギリの攻防戦でのミスだから、周りのライダーを常に巻き込んでしまう。前年でのアラゴンGPでホールショットデバイスの誤作動から、同じホンダの中上に接触、中上はその小指に負ったケガで同年の日本GPで執念の完走を果たしたが、その後のレースは欠場を強いられた。しかしマルケスのこのような行いは元はといえば、ホンダのマシンの開発が思う様に行っていない為だろう。ホンダは今年レース参戦51年目を迎え、最高峰クラスでも最多勝を誇るメーカーだが、マシンの開発は全てマルク頼みで何か違うと感じる。だからマルクしか上位に絡めないし、マルクも危険を冒して走っている(ホンダのマシンは追い込まないと速く走れないとか言われますね。昔からです。乗り易いTZ250、難しいがタイムの出るRS250とかね)。弟のアレックスはドゥカティ移籍後、好成績を早くも出している。マシンさへ良ければポル・エスパルガロもアレックス・マルケスも中上ももっと早く上位に行けた気がする。ホンダの何が悪いのかは勿論僕には解らないが、背水の陣でのチャレンジとなるのは間違いない。だからと言って、頑張れホンダと言えないのは何かおかしいんじゃない?と観る方が感じているからで、マルクの追突についてロングラップペナルティを2回、アルゼンチンGPですることになっていたが、マルクの転倒のケガでアルゼンチンは欠場。欠場したんだから、もういいじゃないか?とレプソルホンダチームのアルベルト・プーチさんは言ったとか。(この件はペナルティはペナルティで受けるべきだが、プーチさんは次戦がマルケス得意のアメリカのCOTAだから、一石二鳥なアイデアを考えたって事でしょ?→実は審判団がアルゼンチンでロングラップ2回と限定してしまった。だからプーチさんは他チームからの申し立てで裁定が覆った事に立腹というのが真実らしいが、さてどうなる?)個人的にはプーチさんより前任のリヴィア・スッポさんの方が良かったな。プーチさん嫌われる事にも慣れているよね。
アメリカGPではポル・エスパルガロの代役としてジョナス・フォルガー選手が走るそうですよ。マルケス、バスティアニーニ、オリベイラも復帰して来るようです。楽しみ。
ま、そんな訳でスリリングでデンジャラスな今年のモトGPを楽しみにしています。(僕は仕事柄、あまりケガするライダーは見たくないのだが・・・)
Posted at 2023/04/09 01:00:28 | |
トラックバック(0) |
レース | 趣味