望んだ答えなんだけど…

　奈良市の小学１年生、有山楓（かえで）ちゃん（当時７歳）が誘拐され殺害されてから、１７日で９年となる。父親の茂樹さん（３９）は、奈良県警を通じて報道各社に手記を寄せた。手記には、生きていれば高校１年生になっていた楓ちゃんへの変わらぬ愛情と、今年２月２１日に死刑が執行された小林薫元死刑囚への思いがつづられている。手記の全文は次の通り。【伊澤拓也】

　事件から９年が経（た）ちました。

　時間だけが動き続け、決して止まることも戻ることもありません。

　事件の１０日前に母親も着た着物で七五三に行った時の嬉（うれ）しく、恥ずかしそうにしていた姿がつい先日のことのように感じます。

　２月には小林薫（元死刑囚）の死刑が執行されました。

　これが望み続けてきた刑なのかは分かりません。夢も希望も奪われた楓の大きな命、どん底まで突き落とされた恐怖、そして悔しさ。

　死刑を望んだことに後悔はありません。

　自らが犯した罪と向き合い、執行に臨んだことを信じたいです。

　刑は執行されましたが、残された私達（たち）はこれからも失われた命や思いを背負い、現実に向き合っていかなければなりません。

　楓の元気な声も聞けない、時間だけでは解決されない苦しさです。

　学校や地域、そして市や警察の安心・安全への新たな取り組みも絶えることなく継続されています。

　加害者がいなければ楓のような被害者はうまれません。

　人と人との繋（つな）がり、そして子ども達の笑顔のあふれる社会を心より願います。