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【トランスジェンダー】“風呂問題”を弁護士が徹底解説「手術なしで性別変更」判決から約1年も「かみ合った議論がなされていない」
「手術なしで性別変更」を日本ではじめて認めた広島高裁判決から約1年。トランスジェンダーを公表する仲岡しゅん弁護士は、戸籍上の性別と身体的特徴が必ずしも一致しない人と一緒に生きるうえで「かみ合った議論がなされていない」といいます。
※正しい情報を伝えるため、トランスジェンダーのみなさんに対して攻撃的なメッセージを例として取り上げることがありますのでご注意ください。
■戸籍上の性別を変更するため「生殖機能をなくす手術が必要」は違憲
報道局ジェンダー班 白川大介プロデューサー:
2023年10月、最高裁判所は、戸籍上の性別を変更するには生殖機能をなくす手術が必要とされている法律の要件は憲法に違反しているとの判断を示しました。
仲岡しゅん弁護士:
それまで手術要件が2つあったんですよ。「生殖腺を除去する要件」と、「性器の外観を変える要件」です。このうち生殖腺を除去する要件がなくなりました。これによって、手術要件の半分がなくなったと私は評価しています。
白川:性同一性障害特例法で、性別を変更するためにはクリアしなければいけない要件が5つありました。
(1)18歳以上である
(2)現在結婚をしていない
(3)未成年の子どもがいない
(4)生殖腺や生殖機能がない
(5)変更する性別の性器に近い見た目をもつ(外観要件)
そのうち(4)(5)の2つがいわゆる「手術要件」と呼ばれていて、1つは今おっしゃった生殖機能がないという要件。もう1つが、「外観要件」とも呼ばれている、変更する性別の性器に近い見た目を持つというものです。
■「手術なしでの性別変更」を認めた2024年広島高裁判決
白川:外観要件についてはこの時点では最高裁の判断が出なかったんですよね。
仲岡:差し戻しましたね。そして差し戻された広島高裁では、その方については「手術なしでも外観に変化が起こっている」と判断されて、その方については性別変更が通ったという経緯です。
白川: “手術をしなくても男性が女性のスペースに入れる”というようなメッセージがすごく多いと思うんですけど、実際には「その人において」判断が下されたということなんですよね。
仲岡:そもそも根本的な問題からいうと、戸籍上の性別を変えること=必ずしも変更後の性別のスペースを使えるというわけではないです。
戸籍の性別と身体的な特徴って、今現在、必ずしも一致しないっていう状況になっています。
先程の最高裁の判断も含めて、手術が必ずしもされていなくても法律上の性別が変更できる、つまり戸籍上の性別と身体の状態というのは一致しないケースが出てきているということですね。
戸籍上の性別って何かというと、公的な証明とかに載る「男」とか「女」といったものを指してるわけなんです。
他方で身体の特徴って裸にならないとわかりませんよね。裸になる場での運用は必ずしも戸籍イコールではないということになっていますし、今後もそうなっていくだろうと考えています。
■“風呂問題”のカギ「法律上の性別」と「身体的特徴としての性別」
白川:つまり、法律上の性別というのは、いわゆる社会生活全般において、その法律上の性別で暮らすことを保証するものではないということですか?
仲岡:例えば典型例がお風呂屋さんです。お風呂屋さんって裸になるじゃないですか。そうすると不特定多数の第三者から見られる。
女性用のお風呂に男性の身体のままで入ったらどうなるかっていうと、当然「あの人は何なんですか?」と混乱が起きますよね。ですから厚労省の通知でも、公衆浴場とかそういった裸になる場では身体の特徴をもって振り分けるといった通知も出ていますので。
刑法の問題になるんですけれども、侵入罪という罪名があります。何かというと、施設管理者の管理しているスペースに違法に入ってはいけないというものです。
白川:つまりお風呂屋さんが建造物で、そこに違法に入ってはいけないと。
仲岡:管理者が「この場はだれ用の場です」ということを定めているわけですよ。その管理に違反して入るということは、建造物侵入罪になり得るわけですね。
■戸籍上男性でも“生理”がある…そのとき生理休暇は?
白川:トランスジェンダーの当事者の方をめぐる、社会のルールとか基盤づくりというのは、どういう課題を今後解決していく段階にあると思っていますか?
仲岡:これから、もしかしたら戸籍上の性別と身体の特徴がかい離していく可能性があるわけです。
そのためには、関連する法律を修正していかなきゃいけないと。
白川:つまり、今は戸籍の性別と身体の性別というのは一致している前提で、いろんな法律やルールが作られていると。これまでの性同一性障害特例法で性別変更されてきた当事者の方たちも基本的にはそこをクリアした方々が性別変更していたけれども、今後変わっていくにあたって整備が必要ということですよね。
仲岡:例えば、労働基準法という法律がありますね。そのなかに、女性の従業員の生理休暇の定めがあるわけですよね。
ところが、さっきの最高裁判決によって、生殖腺が除去されていないけれども、女性から男性に変わっている方もいるわけですよ。つまり戸籍上の男性で、「でも私は生理があります」という人が起こり得るということですよね。
労基法上は女性は生理休暇を取ることができるシステムだったんですけれども、今後は男性でも生理休暇が必要な人が出てくるわけです。ですから、これまでの「女性」か「男性」かという記載を少し修正していく必要性があると考えています。
■「トイレが、風呂が、トイレが、風呂が」かみ合った議論がなされていない
白川:個別のケースについて課題を見てきましたが、広く社会全体として、当事者の方とそれを取り巻く周囲の方、社会全体がどうやったら摩擦とか衝突なくやっていけるのか。これからの社会での課題の解決のためには、どういったことが大事だと思いますか?
仲岡:2つありますね。まず1つ目。ちゃんと議論をすることですね。今話がかみ合ってないんですよ。片一方では手術要件をなくせと。
白川:違憲にならなかった方の手術要件である外観要件もなくしてほしいと。
仲岡:そういう意見もある。もう片一方で「トイレが、風呂が、トイレが、風呂が」。
ちゃんとかみ合った議論がなされていないわけです。しかし、私が申し上げたように、身体の特徴で分ける場だとか、身体的特徴によって起こる生理現象だとか、そういったところをちゃんと話がかみ合うような形で実務的な議論をしていかなきゃいけない段階に入っていると思います。
白川:手術なしでの性別変更を割とハードルなく広く認めるべきだという考えと、極端なことを言えば、生まれた時の戸籍の性別で分けようという考えの両極端なところが対話すらなされていないというのが、仲岡さんが見る現状ということですかね。
仲岡:やっぱりどっちもね、私は不十分だと思っていて。要件だけなくして、その後の運用を考えないのはおかしいと思うんですよね。法律が変わるということは、その後修正を入れなきゃいけない部分というのは必ず出てくるわけです。どんな法律でもそうですが。
他方で風呂の問題ばっかり取り上げて、トランスジェンダーへの偏見とかヘイトをあおる、これもおかしいんです。
ですから私みたいな法律の専門家とか、研究者、実務家が知恵を出し合いながら、合理的な修正の必要性がどこにあるのかよく議論しながら、必要なルールやガイドラインを作っていく。これが今必要なことじゃないかと考えています。
■仲岡弁護士がトランスジェンダー当事者に求めること
仲岡:それからもう1つ、トランスジェンダー当事者たち自身もですね、ある意味賢くならなきゃいけないというふうに考えています。
確かにこの社会はそのトランスジェンダーであるが故に差別や偏見があるわけです。
ただ他方でですね、トランスジェンダー当事者自身、今自分が今この社会の中で客観的にどういう目線で見られているのか、そして自分がどういう状態なのかってことをよくよく考えなきゃいけないと思うんです。
たとえば白川さんがある日突然「今日から私は女です。みなさん女として見てください」と言ったってそれは無理ですよね。
白川:かなりの摩擦が起きますよね。
仲岡:それで女湯とか女子トイレに入らせてくださいって言ったって「やめてください」と言われますよね。当たり前なんですよ。だからこそ私たちは長い時間をかけて、複数の治療を受けながら、そして周囲との関係も作り直しながら社会生活実態を築いていっているわけなんですよ。
自分が客観的にどう見られる状態なのかっていうことを見誤って、周囲の感覚とはそぐわない行動をとった時に一番恥ずかしい思いをするのは、やっぱりトランスジェンダー本人なんですよね。
白川:仲岡さんは当事者でもいらっしゃるから、当事者同士としてやや厳しい言葉にも聞こえますけれども、仲岡さんの言っていることを僕なりに翻訳すると、生活実態としてその性別としての暮らしをまず組み立てることなくして、その性別のみが入れるとされるプライベートなスペースに入っていくということは一足飛びには叶わないから、まずは生活実態としての望む性別での暮らしを1個ずつ組み立てていくことから始めましょうよってことですかね。
■Talk Gender~もっと話そう、ジェンダーのこと~
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。 “話す”はインクルーシブな未来のきっかけ。あなたも輪に入りませんか?
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噛み合ってない?、手術しないからでしょ。何故取っちゃいかんのですか、何故取る事が過酷な事なのですか。違う性になりたいんでしょ?
残念ながら此方の社会の女性には男性器は付いてないのです、此方の社会の女性の中に混じりたいのなら外すのが当たり前では?、其れを過酷な事と仰る、『性を馬鹿にしていないか?と』。
此れも以前から言っている、此方の女性には貴方(敢えて)のソレが機能していないと分かる筈が無いの、仮に絶対機能しません信じてくださいと言ったところで実際に付いていれば信用出来ない。
相手を信用させるには納得して貰う様努力をするが当然、なのに何もせず私は女性なのと言われて誰がはいそうですかとなるものか。
今一度問う、特にMtF、何故取ってはいかんのかね。女性になるのに必要か?、人権などと言ってくれるなよ、人権を持ち出すのなら付いたまま此方に来られる女性達こそ人権侵害ではないのかね。
女性になる事への真剣さが足りないどころか全く無い。