スカイアクティブX搭載車のオーナーとしてあれこれ書いていくシリーズ第8回です。
いつまで続くかわかりませんし、不定期で申し訳ありません。
さて今回は、マツダとスバル それぞれのリーンバーンエンジンについて。
この話になると難しい文字の羅列になって行くので、サクッと動画で理解したい方は
こちらの動画をオススメします(笑)
そうではなく、文字媒体が好きとかウンチク好きという方はお付き合い頂ければと思います。
まぁ、各種媒体にて2つの比較は数多くなされているのであまり詳しく書くつもりはありません。また両者を比較して優劣つけようなんて思ってません。
なので気楽に読んでいただければ幸いです。
マツダのスカイアクティブXは、世界で初めて圧縮着火によるリーンバーンエンジンの量産化に成功しました。
これが技術的に凄いことであるのは様々なメディアが報じている通りですが、それに対する市場の評価は良くないというのが現状です。
第一に高価過ぎると。
その理由は、「リーンバーン」を「圧縮着火」で実現して「比熱比を改善し」熱効率を上げる というそれぞれ実現が困難であった技術を見事にまとめ上げているからです。加えて電動化技術も盛り込んでいるので補機類やセンサー類のてんこ盛りとなっています。
…そのおかげで、SPIRIT1.1のようなアップデートを既存のオーナーに提供するなんてことが『技術的に』可能なわけですが。
これでは、せっかくリーンバーンを実現しても
「最新のリーンバーンて凄いみたいだけど補機類やセンサーがたくさん要るんだ。そりゃ高価になるよね」
なんてイメージを持たれかねません。
以前タッチ_さんが
このブログで指摘したように、「リーンバーン」をさせるだけなら必ずしも「圧縮着火」は必要はありません。
というわけで、「イロイロてんこ盛り」のスカイアクティブXオーナーとしては、CB18のリーンバーンがどのようなものなのかが気になるわけです。
かつて90年代後半に現れたリーンバーンエンジンは煤やNOxの問題からその姿を消していきました。その原因は大きくいって次の2点にありました。1つ目は当時のリーンバーンではまだまだ空気の量が少なくNOxが大量に発生したこと、もう1つは燃料噴射圧が低かったこと です。
これまでの研究成果から空燃比を30:1以上にすることでNOxを大幅に減らすことができるそうです。
このグラフは空燃比に対するNOxの濃度を表したものですが、理論空燃比(空気:燃料=14.7:1 これをλ=1で表す)の2倍(λ=2)になるとλ=1の10分の1以下になっているのがわかります。
スカイアクティブXではルーツ式スーパーチャージャー、CB18ではシングルスクロールターボによってλ=2以上という空燃比を実現しています。
燃料噴射圧は、スカイアクティブXで70MPa、CB18で35MPaとなっています。CB18の方が低いですが、一般的なガソリンターボエンジンで20MPaと言いますから、むしろスカイアクティブXが常識外れに高いといえます。
λ=2という今までに無いほど希薄な混合気をどうやって燃焼させているかというと、スカイアクティブXはマツダ独自の
SPCCI(火花点火制御圧縮着火)、CB18は、
点火プラグと直噴インジェクターを可能な限り近づける、燃焼室内のタンブル流の強化など、これまでの技術の発展形といった方法になっています。
ただ、CB18でリーンバーンするのは2,400rpm以下という80~100㎞/hでの巡行走行時に限られており、それ以上の回転数領域ではこれまでと同じλ=1以下の燃焼に「切り替えて」いるそうです。
一方のスカイアクティブXは膨張火炎球の大きさを変えることで、従来の火花点火と圧縮着火する割合をスムーズに変化させて、およそ500~5000rpmという幅広い回転数領域でリーンバーンしています。
もちろんNOxと燃料噴射圧という問題を解決しただけでλ=2のリーンバーンを実現したわけではなく、そのほかにも数多くの技術的向上やブレークスルーがあったわけで、ここにはとても書ききれません。
共通点として面白いなと思うのが、両エンジンのストロークとボアの比率です。スカイアクティブXが83.5㎜×91.2㎜で1.092。CB18も80.6㎜×88.0㎜で1.092と同じ数値です。特に水平対向エンジンであるCB18でロングストローク(上記の比率が1を越えること)にしたのは流石だと思います。
さらに両エンジンとも、組立時にスパークプラグの向きがキッチリ揃うよう管理しているとのことで、リーンバーンの難しさを物語るエピソードかなと思います。
イロイロ調べていくと、スカイアクティブXが非常に革新的な技術によってリーンバーンを実現しているのに対し、CB18のそれはとてもオーソドックスです。
そこには、両社のリーンバーンに対する考え方やどんなエンジンにしたいかなど様々な諸事情が絡んでいるのでしょう。
ただ世の中が電動化に突き進んでいく中、それでも「なるべく少ない燃費でクルマを走らせる」という課題にただひたすら取り組んでいる両社の姿勢は評価したいと思います。
Posted at 2020/11/29 23:39:36 | |
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