スカイアクティブX搭載車のオーナーとしてあれこれ書いていくシリーズ第2回です。何回やるのかもわかりませんし、不定期で申し訳ありません。
今回は、国内仕様では初搭載となったM-Hybridについてです。
いわゆる"マイルドハイブリッド"なわけですが、i-ELOOP よりも多くの仕事を行っているそうで自分は興味を持ってました。
主にどんな仕事をしているかというと、
1)電装品への電力供給
2)エンジン始動および変速時の振動抑制
3)高効率なSPCCI燃焼の維持(補助)
4)停車前からのアイドリングストップ
です。
i-ELOOPでは 1)のみの機能でしたが、M-Hybridでは更に3つ増えてます。以下それぞれについて書いて行きます。長くなりますが、お付き合い頂ければ幸いです。
1)電装品への電力供給
これは従来から搭載されていた i-ELOOPと同じ機能です。主に加速時に貯めた電力を電装品に供給することで、エンジンの余計な負担を減らすという機能です。
2)エンジン始動および変速時の振動抑制
運転していてM-Hybridが搭載されていることを最も感じやすい機能です。これまでの i-stopでも振動が少ない方だと思っていましたが、M-Hybrid 付きのそれを知ってしまうと…。
信号待ちの停止から発進すると、気づかないうちにエンジンは起動していて回転数の上がっていく音がいきなり始まる、そんな感じです。Xのエンジンは2000rpmくらいまでは比較的静かでそれを越えて2500rpm付近になると(その辺りから回転数の上がり方が力強くなるのも手伝って)いきなり音が大きくなったかのように錯覚します。Xの試乗記などで「静かと言われるが意外とけたたたましくエンジン音が車内に入る」といった記述が見られるのはそのためかもしれません。
また変速時のショックは驚くほど少ないです。MTでの変速補助(変速時に回転数を合わせてくれる)が有名ですが、ATでは音と振動を大幅に削減することでスムーズな変速を実現しています。BMアクセラなどは特にシフトダウン時のショックをわざと強調(残して)いたのでは?と疑うほど大きかったのですが、このXでは逆に物足りなく感じるほど少ないです。
3)高効率なSPCCI燃焼の維持(補助)
自分はオーナーとして、この機能こそM-Hybridの最大の魅力だと考えています。それは、
貯められた電力がSPCCI燃焼を安定して行うために使われる
ということです。決して停止からの加速には使われません。
以下、そのことについて述べます。ここが一番長くなると思います。
X搭載モデルのマツコネには「システム作動状態」という画面が表示できます。
(外装のX専用装備は複数ありますが、内装のX専用装備?はこれだけ(涙))
この画面でSPCCI燃焼モードのときに右上の「SPCCI」の文字が黄緑色に点灯するのは有名?ですよね。
マツダは「こんなに凄い装備付けたんです!」というアピールはよくやるのですが、それがどう動いているかの表示はなかなかしてくれません。その意味でこれは重要な表示です!
M-Hybridで注目したいのはその左側。
マツダ3が描かれていてその中にエンジン、タイヤ、ISG、バッテリーのプレートが6枚描かれています。
そして運転の状況によって電力の流れを常時表示しています。また、バッテリーのプレートに電力が貯まると白く表示されて、無くなると灰色になります。
電力の流れは△の”流れ”で表されており、
①エンジン→タイヤ
②バッテリー→電装品
③エンジン→ISG→バッテリー
④タイヤ→ISG→バッテリー
⑤バッテリー→ISG→タイヤ、エンジン
の5種類があります。
①と②は常に表示されています。
③は白いバッテリーのプレートが2枚くらいになると表示されます。例えば平坦な郊外路を一定速で走っているといった場合、白いバッテリーのプレートが0~2枚だと充電を示す③の流れが表示されて、3枚くらい白くなると③は無くなって①と②だけになります。これを繰り返しています。また市街地を走っているときに加速が終わって一定速になると表示されます。
④はブレーキを踏むと表示されます。③よりも流れが速く表示され、より多くの充電がされていることを強調しています。
そして⑤はバッテリーの電力を使ってエンジンの負荷を減らしたりモーターで動力を補助するという流れを表しています。バッテリーのプレートが4枚以上白くなっていた場合に、中間加速や、坂を登るとき、停止には至らない減速からの加速時に表示されます。この流れは、白いプレートが2枚以下になるまで表示されます。
ただし、
停止からの加速ではたとえ6枚全部が白くても⑤の流れは表示されません。この場合はエンジンだけでの加速ということになります。M-Hybridは高効率なSPCCI燃焼で走っていて、路面状況などにより負荷が大きくなった場合に、少しでもその高効率な状態を維持(補助)するように働きます。
※上記①~④の解説動画は
こちらがおススメです。ただし市街路なのでバッテリーがなかなか貯まらず残念ながら⑤はありません。
さらに、マツダ3にも当然GVC+(Gベクタリングコントロールプラス)という車両運動制御技術が搭載されています。そのためにエンジンのトルク抑制を行うわけですが、これが安定したSPCCI燃焼の妨げになってしまいます。そこでエンジンそのもののトルクを抑えるのでは無く、ベルト駆動のISGを回生発電状態とすることでエンジンで発生したトルクの一部をISGに流しているそうです。いわばISGでブレーキをかけてGVC+を働かせているそうです。詳しくは
このサイトを参照してください。
世界で初めて量産化に成功したSPCCIによるリーンバーン。その今までにないほど高効率かつ力強い燃焼を少しでも長く維持する。貯めた電力をそのために利用しています。
4)停止前からのアイドリングストップ
これは機能自体は随分と前から知られていますが、スカイアクティブでは初ですね。マイルドハイブリッドが搭載されたからこそ実現した機能です。
機能の説明は、皆さんよくご存知でしょうから割愛します。ここでは1オーナーとしての感想なんかを述べます。
この機能、停止前にエンジンが止まって動力が突然切られることによる、いわゆる「カックンブレーキ」になってしまいます。これにより多くの体験者に批判されていて、無くせばいいのにとも言われています。自分も「必要無いかな」と感じる1人です。ただ自分の場合、少し理由が違います。
まず、自分は納車後2ヶ月で3,000㎞以上走ったのですが、この”停止前からのアイドリングストップ”に遭遇したのはわずかに5回です。
そのうち1回はみん友のpoyoyon2さんが運転していたときの助手席、もう1回はMRCC起動中でしたので、自分でブレーキを踏んで発動したのは3回しかありません。これは自分がサンデードライバーで、3,000㎞の多くは高速道路や信号の少ない郊外路を走っているからというのもあるかもしれません。
遭遇した回数が少ないうえに発動条件もわかりません。先に紹介した動画では1回だけ発動していますが、そのときのバッテリーの白いプレートが2枚だったことから充電の残量が関係しているわけでもなさそうです。
走っていて突然、信号で停止前に回転計の針がゼロに落ちていくのを見かけ、そこから慌ててブレーキを緩めるのですが間に合わず「カックン」。次はそれにならないように止まるぞ と思っても次の信号での停止では発動しない。そんな経験が3回ほどです。
一方で自分はカックンブレーキになってしまうこと自体そんなに嫌悪感を抱いていません。むしろ練習して少しでもカックンブレーキを無くしたい(抑えたい)と考えています。自分は身内のアクアを1日借りてドライブをしたことがあるのですが、最初のうちはカックンブレーキでしたが、練習をしていくうちにそれを段々減らして、最後にはカックンブレーキにほぼならないよう停止できるようになった経験があります。このクルマでも練習したいのですが、いつ発動するかもわからない、一度発動しても次は発動しないではそれもできません。
こういった理由で「だったら要らないかな」と思います。
4つの主な機能について長々と書いてきました。
日本仕様のスカイアクティブXがGより70万円高い理由の半分はM-Hybridが搭載されているからだと言われています。それゆえM-Hybrid無しの仕様を望む声もあります。
しかしオーナーとしてその仕事ぶりを知ってしまった自分としては、
M-HybridはXにとって必要であると考えます。
高効率なSPCCI燃焼の維持と車両を安定させるGVC+の両方をきっちり働かせるには欠かせない存在です。これがあるから力強くも気持ちのイイ走りが実現できているのだと感じています。また自分はマツダのビルディングブロック構想を支持してきましたが、Xは今まで以上にそれを実感できるクルマに仕上がっています。
M-Hybridは、mazda2 にも搭載されるという話も聞きますし、今後色んな車両に順次搭載されていくと思います。そんな中でマツダ車を選ぶときの参考になればと考えています。