今日のお話はフィクションです。
登場する人物、地名、団体名等は全て架空なもので、間違っても筆者の悲しい体験談を書いたものではありません!
学生時代から旅が好きで、アルバイトをしてお金が貯まると、良く一人であてもなくぶらりと旅をしました。
ある時は、羽田空港から伊丹空港へ。
観光の前に弁当的なものを買おうと、伊丹に当時あった関西スーパーの伊丹中央店?で飲み物を選んでいた時の事。
まるで映画のワンシーンみたいですが、買おうと飲み物を、手に取ろうとした瞬間に、知らない女の子と、お互いに手を握り合ってしまった。
詳しく書くなら、飲み物をボクが握り、そのボクの手の上に彼女の手が被さった感じ。
目と目が合い。
「すいません。」と謝ると?
不思議なんです。
彼女、ボクを大きなつぶらな瞳で、見つめたまま触れ合った手を、決して離そうとしないんです。
そんな時は普通女性の方からパッと手を離すじゃ無いですか?
パッと頬を赤らめ、手を離すみたいなのをね。
手を離してくれないのでこう言いました。
「あの、、、、その手を離してくれませんか?」そうボクが言うと。
「おかしい、手がくっついて離れへん!手にアロンアルフアついとる!」そうボケて手が離れないクサイ子芝居をする。
周りを通るお客さんたちが、クスクスを笑っている。
で、そのまま彼女の手がボクの手の上に重なった状態で、いろいろたくさん質問され、
彼女はいない と言うとやっと手を離してくれました。
ここで飲み物とパンを買って市内周辺を観光するつもりと話すと、
なら観光案内してあげると。
やんわりと断るとまったく聞こえないふりをする。
「じゃぁまず、●●から行こうか、うん、そうしよう」
そこから更に宝塚線で宝塚駅へ。
そのまま彼女に宝塚周辺を案内してもらいました。
しかしふと気が付くと途中から、ほとんど手を繋いで歩いていた。
宝塚はそう言うフレンドリーな文化なのか?^_^
※けっしてそういう風習のある土地ではありません!
花のみちから宝塚音楽学校の傍へ
横を歩く宝塚音楽学校の生徒さんを羨望の眼差しで見つめる彼女。
「私ね、宝塚音楽学校受験するの。受かったらここに通うの、自宅から徒歩10分弱、近いでしょ?」
確かそんな会話もありました。
実はその時は宝塚歌劇団については、あまり知識がありませんでしたが、彼女はどう見ても宝塚歌劇団よりは、吉本新喜劇の方が似合う気がすると心の中で、そっと思ったのはナイショです。
途中にあったお店に入り
「ねぇ、なんか二人でお揃いの物を買いたい。」
1日観光案内してくれたお礼にお揃いのキーホルダーぐらいなら買ってあげようと思いましたので快く快諾すると。
服売り場でド派手な黄色いトレーナーを手に取って繁々と見て、ボクを上目づかいで見る。
「買わない!絶対に買わない、死んでもそんな服買いたくない!」
冷たいようですがボクはキッパリとそう言いました。
長い口論の末、ようやくお揃いのキーホルダーで落ち着きました。
で、夕方になりボクは近隣のビジネスホテルの予約を取ってあったので、宝塚駅の南口で、今日一日案内してくれたお礼を言って別れを告げたら?
「うちに来ない?」みたいに言われ
「君の家に?」
家がすぐ近くだから私の家で、晩御飯食べて行けと。
断ったのですが、全く聞く耳を持たず、彼女握ったボクの腕を離さないんです。(笑)
仕方なく引きずられるように手を引かれ彼女の家へ。
徒歩で5、6分歩いたかな?
そのまま宝来橋を渡り、武庫山へ。
少し小高い丘の上の一軒家。
(まさか晩飯代有料とかないよな?)
玄関を入ると。
「ただいま〜、友達連れてきた、晩御飯いっしょに食べていい?」
その声を聞いて、何故か玄関にご両親が出迎えに出てきた。
連れてきたのが男なので、ご両親の顔が一瞬固まる、、、。
一緒に食べた晩御飯の食卓はまるで針のむしろでした。
緊張のあまり何を食べたかまったく記憶が無い。
お父様は最初の挨拶以降ほとんど無口で苦虫を噛み潰したような不機嫌な顔をしている。
会話はもっぱらお母様と。
会話の中で、当然ボクの言葉が標準語なので
「どっから着たん?」みたいに聞くので
「東京の●●です。観光で2泊3日で来ました。でも父が東京で母は大阪の人なので、ハーフです。」
と答えるとご両親爆笑。
「お母様の出身は、大阪のどこなの?」
「行った事は無いのですが、確か生家があったのは、大阪女学院大学の傍って聞いたことあります。」
会話長いのでこの間割愛
「それで二人はいつから付き合っているの?」
彼女のお母さんが聞きました。
「今日のお昼頃から。」
彼女がそう答えました。
「・・・・・」
お互いに目を合わせ、絶句するご両親。
「あのですね、」とボクがいきさつを、言い訳しようとすると彼女が遮り
「一目ぼれしたんで、そのまま捕獲してきたんや」みたいな事をサラリと言う。
(捕獲ってゴキブリホイホイかい!)
食事も終わり、最後のほうではようやくお父様も機嫌が直り、和やかな会話へ。
共通の趣味のプロ野球の話で盛り上がりました。
ご両親に盛んに泊まってけと勧められましたが、流石に初対面でいきなり泊まるってのもなんなので丁重にお断りすると、親切にも車でホテルまで送ってくれました。
※本音を言うなら身の危険を感じたのも事実です。
別れ際にお父様がこそっと耳元でささやいた一言。
「可哀そうに、もっと自分を大切にな!」
(親のあんたに言われたくねぇ。)
さて捕獲されて以来、2か月後ぐらいからの毎月の月末には、決まって、彼女から現金封筒で1万円送金されました。
※正確に記述するなら現金封筒では無くて普通郵便です。
普通の封筒です。
コラ~!このドケチが!普通郵便に紙幣入れるな!
足りない分はバイト代も貯めて足して、新幹線で大阪駅か、飛行機で伊丹空港へ。
新幹線か飛行機かは金券ショップで安い金券があったほうを選択。
後半はチケットそのものが郵送で送られて来るようになりました。
遠距離捕獲恋愛の始まりです。
しかし翌年、彼女は東京の某企業に内定が決まり、東京に一人住まい。
遠距離恋愛はたった1年弱で終わりました。
つうか宝塚音楽学校受験はどうした?
就職先ってまさか松竹新喜劇か?
遠距離捕獲恋愛から近距離捕獲恋愛へ。
数年後のクリスマス。
実家に帰省する彼女を見送りに東京駅へ行きました。
ホームで別れを告げていると。
新大阪行きの東海道新幹線の発車のベルが鳴りました。
新幹線の扉の中に彼女。
目の前のホームにボク。
その当時はまだホームに扉が無かった時代。
彼女に手を振ろうと右手を上げた瞬間!
ぐっとその手を強い力で掴まれて、そのまま新幹線の扉の内側に引き込まれる。
プシュ~♪
無情にも閉まる新幹線の扉。
これ在来線じゃ無くて新幹線や!
途中下車無理!
そのまま再び捕獲されて彼女の実家へ行くのであった。
もしあの時、二度の捕獲が無ければボクの今の人生は大きく変わっていたと思う。
でも もしあの時、二度の捕獲が無ければボクの今の人生はもっと味気ないものになっていたと思う。
未来の地図 / Mi
お父さん
ボクはね、生きていれば あなたに是非言いたかった事があるんだ。
ちゃんと自分を大切にしていますよ。
今も十分幸せだし、あなたのお嬢さん。
チョッピリ怖いけど、いつも刺激的で退屈しないし。
素敵な女性に育ててくれて
ありがとう