観てきました

〝ネブラスカ　ふたつの心をつなぐ旅〟アレクサンダー・ペイン監督作品です。モンタナ州に住む老人の名はウディ・グラント（ブルース・ダーン）。彼は歩いている。残雪のこる幹線道路。おぼつかない足取りではあるが、とうとう高速道路にまで入り込んで行ってしまう。彼の後ろにパトカーが止まり、ウディを保護しようとする。「何をしているんです？」と警官。「リンカーン（ネブラスカ州）に行く」とウディ。モンタナからネブラスカまではゆうに1500kmはある。たまらず警官はウディをパトカーに乗せ警察署で保護する。連絡を受けたウディの息子、デヴィッド（ウィル・フォーテ）が彼を迎えに行く。歩いてネブラスカに行くなんてバカげてる。デヴィッドは優しくウディをたしなめ、その理由を聞く。ウディは紙切れをデヴィッドに差出、100万ドルを受け取りに行くのだという。デヴィッドは失笑する。昔からよくある手口のインチキ。デヴィッドは説明するが、ウディは信じない。ウディを実家に送り届けると、ウディの妻、ケイト（ジューン・スキップ）はカンカンだった。大酒飲みで家族との日常を省みない。昔話やそれまでの出来事を引き合いに出し、ケイトの怒りは収まらない。ウディは数日前にその紙切れを受け取ると、その文言を一字一句覚え、常に持ち歩き身から離さないのだと言う。ケイトの小言を黙って聞くウディ。少し哀れんだ表情でそれを見つめるデヴィッド。ウディはそれでも信じている。100万ドルを受け取れることを。歩いて行けなければクルマで行く。ウディは免許を返納しているのだが、それでも行くと言い、もう暫く乗っていない自分のクルマを修理し始める。デヴィッドの兄でもう一人の息子、ロス（ボブ・オデンカーク）も実家に駆けつけ、ウディを説得するがもちろん通じない。ロスはあきれ果てるが、デヴィッドは何とかしようとする。数日後、母親のケイトからデヴィッドに連絡が入る。またウディがリンカーンに向け歩き出したのだという。デヴィッドはウディを見つけ出し掴まえるが、ウディの信念は強い。デヴィッドは経営しているAV機器販売店を何とか休み、ウディと共にリンカーンに行くことを決心する。リンカーンに行き、真実を知ればウディの気も休まると感じたからだ。ケイトは怒っている。あんたまでそんなものを信じているのか、父親を同じ。なじりを背中で聞きながら、ウディとデヴィッドの二人旅が始まったのだった・・・。


典型的なロードムービー。モノクロームの映像はこの世界観を引き立てます。100万ドルを受け取りに行く。ただそれだけのために、純粋に主人公のウディはネブラスカ州はリンカーンに向かうのです。それに付き合う息子のデヴィッド。最初は父親が心配なだけ、彼もまた、ただ純粋にその心配を安心に変える為だけに父親の旅に付き合うことになります。しかし頑固者で大酒飲み。家族をも省みない年老いた父親ウディの本質を知ることになる。昔付き合っていた女性からの話。パイロットとして従軍した朝鮮戦争では酷い目に遭った事。昔経営していた工場の話。どれもデヴィッドが初めて聞く話ばかり。今になって、今頃になってデヴィッドはウディの人間性をウディからではなく、彼を取り巻く人々から聞かされることになるのです。モノクロームの映像。シュールなアングル。そして演者の表情での演技。どれも素晴らしく何一つ欠けても成り立たない素晴らしい作品でした。