2021年10月22日
いやはや、久しぶりの更新である。
時間がないというのは言い訳にならないが、どうにもならん物量。
今回の内容は『響け!ユーフォニアム』シリーズを聴いてみて、ということになる。文量も多め。
『おもいでミュージック』
ディスク1、劇伴から。
DP-1000+DC-1000で聴くと、一聴して、切り立つ音質だとわかる。空間の響きの定電圧駆動装置とでも言いたくなる。例えば八分音符と二分音符で構成される小節があったとして、二分音符の音の伸び、ここが凄まじい。
そしてやはりと言うべきか、DP-1000+DC-1000は聴き手に「ボケ~っと聞き流すなよ?」と緊張感を強いるタイプのようだ。凛とした静寂。あたかも1話冒頭でゴールド金賞が取れるかどうかを願う高坂麗奈(あえて久美子とは言わない)の気持ちか。でもリラックスもできる、一見(一聴)相反する要素を楽々と超えていく。
総数として楽器の数が少なくてもアンサンブルは良く出してくるし、むしろ佇まいは勝手に居座る。響きを含んだ楽器音以外は静かだ。ここでも『静か』が聴こえる。ふむ、意外やオーディオ機器で聴こえ方が変わるということで、「聴こえる、聴きにくい、聴こえない」を判断するのにオーディオテストで使えるディスクかもしれない。(今更)
トラック13『他愛ない悩み事』でマラカス(だと思う)のシャカシャカの最初のシャは少し強めに振っているが、その粒の音数の違いも聴き取れる。思わずメモを取ってしまった。マラカスの音だなというより『粒の音数の量と強弱の音』だなと感じる程に。
ディスク2。
2曲目からディスク1の劇伴より全体的に音が柔らかい。悪く言うと滲んでいる。しかし1曲目はフレッシュマン・ウィンド・アンサンブルとしての曲であり、『高校生(あるいは中学生)としての音』作りではなく、プロの卵たちの全力が溌剌としている。音も前面寄りだ。その差がはっきりとわかる。
トラック6『海兵隊(指導前 Ver.)』のやる気のなさっぷりが存分に発揮されていて、なかなか面白く、反面、どこまでこのグダグダ感で演奏できるのか聴いてみたくもなった。が、これは演奏を止めた滝先生の呆れる気持ちもわからないでもない。まさしく「なんですか、これ」。滝先生は苦笑いよりも、穏便に怒りが出た挙げ句の台詞だというのが改めてわかる。
トラック10『RYDEEN』は打楽器の小さいながらも細かな音が心地よい。こういうところに耳を奪われるプレイヤーだ。
トラック13『交響組曲「シェエラザード」より』の15秒のところで奏者がハープの弦にうっかり振れてしまっているのか、小さく音がすることに気が付いた。ファンの皆様はお手持ちのディスクでご確認下さい(笑) そしてなかなか動的に音楽を聴かせるプレイヤーということも再認識した。今だから言うが、好きだという理由でこの曲を選出した指揮者の大和田雅洋氏には失礼なことだが、このシェエラザードは退屈だなと思って今まで聴いていたが、聴かせる演奏だったからだ。
であればトラック14からは言うに及ばないだろう。
柔らかい音というのは変わらないが、楽器の分離感とまとまり感が一体となって彼(彼女)らの演奏が始まる。
トラック15『三日月の舞』、トランペットソロの音が弱い(優しい)なと思ったが、うっかりしていた。このトラック15、こちらは中世古香織Ver.である。つまりトラック16の高坂麗奈Ver.とは明確な音の違いを聴かせてくれた。これは多分だが、オーディオの音が明るい程、差がわかるのではないか? OMEGAだと「表現の違いで、ここはこういうもの(弱く優しく)なんだ」で納得できる演奏になるが、DP-1000+DC-1000は「ほら、演奏者そのものが違うと、この部分はこうなる(鳴る)んだよ」と言っているかのようだ。このことからDP-1000+DC-1000は「音楽より音」を分解能高く描き奏でやすく、「音より音楽」を心から楽しむには使いこなし(イコライザーやスピーカー位置調整)がある程度求められるプレイヤーだと思う。翻すと、分解能が出にくいならば「音楽」に耳が行きやすいわけだ。どちらが幸せか力量が試される。上手くいけば「高次元の分解能を伴いながらの音楽」となり、上手くいかないと「音そのものにばかり気を取られて音楽が聴こえない」ことになる。高価なオーディオ機器は癖が強い(製作者のやりたいことがコスト制限なくできるため個性が出やすくなる)が故に、一筋縄ではいかないと言われる由縁だろう。
『おんがくエンドレス』
ディスク1。
概ね『おもいでミュージック』と同じ感想になる。違いは音が太いことだ。図太いとか野太いの太いではなく、ふくよかなのだ。腰が座る分、優雅に聴ける。続編の場合ではこう思う。「さては手慣れたことと、製作費の余裕が出たな?」と。これはオジー・オズボーンの『BLIZZARD OF OZZ』と『Diary of a Madman』などでも聴ける現象だ。因みに過去のブログではこのことを「全体的に音が違う」と評している。
ディスク2。
案騒音がよく聴こえる。功罪半ばである。リズムが弾む。打楽器には良い傾向で聴いていて楽しい。ハーモニーが唄う。複数人の、お互いに奏でる音楽のために合わせようとする緊張感がわかる。チューバとコントラバスの低音も混濁しない。
それから、例えば……、右チャンネル方向で楽器の音が出る。その反響音がセンターと左チャンネル方向とで混ざって、ひとつの直接音と間接音としての響きとなっていた場合、スピーカーの間隔にもよるだろうが、その響きが濃密だ。濃厚ではない。密度が高い。隙間がなくひとつの楽器が響いているんだというのを強烈に意識させる。更にはその減衰加減も。
トラック10『響け!ユーフォニアム (朝もやVer.)』で冒頭、息を吸っている音が入っていることに気が付いた。
トラック11『プロヴァンスの風(関西大会突破Ver.)』はティンパニのロールのゴゴゴ……が一音一音ずつはっきり聴き取れる。OMEGAはややゴー……となる感じもあり、分解能の違いを聴かせる。
ディスク3。
情報は出来るだけ読み取ってそのまま変換……ではなく、左から右へではない、まとまりの良さもある。
唐沢美帆の声も芯が通っていて安定して声量の確かさを感じさせる。
トランペットソロの音の余韻が美しく、アキュフェーズらしく写実の色濃さで音を聴かせる。絵の具を薄めずそのまま使うような濃さではなく、伸び伸びと使いやすく、でもいつまでも途切れないような濃さ。絵の具そのままのような音質を求めると裏切られるだろう。言わば写真を撮るような、録音風景を動画にしたような、所謂、足さず引かずを目一杯行って再現しようとする。正確に言うと「録音時に出てた音楽ってこのままこうなんだろうな」と思わせる音。OMEGAも絵の具そのままの音質ではないが、より「引かず」の部分が強く、「足さず」も上乗せしてる感じはないように思える。まあ、最近のオーディオはほとんどこの方向に向いてしまっていて、絵の具そのままな音質を聴かせる方が珍しいのだが……。
『Tutti!』
グリグリ鳴るベースラインも混濁せず聴きやすくて良い。
『黄前久美子キャラソン』
前にも書いたが、妙に爽やかに聴こえる。空気が透き通っている。音が軽いわけではない。
『加藤葉月キャラソン』
低音にDP-1000メカニズムの底盤のような一定の分厚い安定がある。明るさがある分、葉月の声をもっとキャイキャイ聴かせるかと危惧していたが杞憂だった。滑舌良く歌詞が聴こえる。
度々書いているが「低音の安定感」というのは、いちベーシストという点からも非常に大事にしたいところで、周波数が変わっても音圧の変化はなるべく出したくないこだわりがある(例えばA音よりB音が大きかったり、C音が小さかったりするのは嫌。フラットに弾きたい)ので、録音編集で変なことになっていない(だろう)限りは、安定して低音を再生したいと常々思っている。だからこそ安定していると嬉しいわけ。リズムキープをするように音圧キープを。
『川島緑輝キャラソン』
このCDでも抜けの良さを感じる。音が「離れている」のではなく「分離が良い」と言いたい。コントラバスの旋律の質感が際立つ。
「高坂麗奈キャラソン』
トランペットのクレッシェンドする音のキメが細かい。シンセサイザーの音もらしさ全開と言ったところ。まとめとして四重奏は左から右へトランペット、コントラバス、チューバ、ユーフォニアムの音像と空間が並ぶ。CD単独では無理な話だが、デジタルファイル化させた再生ならそれぞれの曲を連続再生することも勿論可能。カーオーディオやPCオーディオではやっているが。
『ドラマCD』
聴きやすい。それに限る。声の質感、というか演技もよく伝わる。
トラック5の店員役の声は小笠原晴香役の早見沙織の素の声か(今更)
『ヴィヴァーチェ!』
賑やかな音数の多い曲(ポップス系)でも混濁しない。
『リズと青い鳥』
ディスク1。
静かだ。いや、ちゃんと音は出ている。アルバムが変わってもこういう同じ印象を何度も持つということは、この静けさはDP-1000+DC-1000の持ち味に違いない。未使用曲(あるいはボーナス曲と言いたい)の不気味さ加減に拍車がかかる。
ディスク2。
トラック3とトラック4、楽器が増えたことによる音の厚さの違いを、音が加わったな、ではなく、音が鳴っているなという的確な楽器の音の存在感で示す。トラック9、オーボエのセッションも儚く美しい。
『誓いのフィナーレ』
ディスク1。
トラック1やトラック8は中高音の明晰なしなやかさ、低音のドスが聴いていて聴き応えがある。トラック2、10、13、14などは単体楽器音はかなり生々しい。色々な楽器で聴けるウワ~ァンと響く音の減衰の仕方もスーッと落ちるのではなく力強い減衰。馬力を出さなくてもトルクフルでしなやかなのだ。あたかもターボ車のトルクに電気自動車の静謐さ、それに良くできたショックアブソーバーを組み合わせたような。これらはトラック21とディスク2で、楽器の数が多くても個別の音が混濁せず、音楽としてのまとまりをしっかり聴かせる特質と融合し結実している。
ディスク2。
トラック6の低音のグオォ……感は痺れるね。
『きらめきパッセージ』
ディスク1。
以前、声優劇と曲の音量の差が気になると書いた覚えがあるが、S/Nが良いからか?あまり気にならなかった。
ということで、「こう感じた」という言葉の使い具合でDP-1000+DC-1000の印象も固まってきた。
次は、その印象をひとつまとめてみようと思う。
誤字脱字あるかもなので、あったら見つけ次第修正するつもり。
Posted at 2021/10/22 20:34:21 | |
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