
そういえば、今回の正月は自宅で1本も映画を観てなかったなぁ…なんて思い、久々に東宝特撮映画を観てみる。昭和35年(1960年)12月公開の映画『ガス人間㐧1号』(製作 : 田中友幸/監督 : 本多猪四郎/特技監督 : 円谷英二)です。『美女と液体人間」、「電送人間」に続くいわゆる【変身人間シリーズ】の第3弾であり、人体実験によって【ガス人間】となった男による完全犯罪と、そのガス人間とヒロインとの悲恋を描いた物語です。
かつて生物学の権威と言われた佐野博士(演 : 村上冬樹)の人体実験によって身体をガス化させる能力を持つ【ガス人間】となった青年、水野(演 : 土屋嘉男)は、その自らの能力を使って都内で次々と強盗殺人事件を起こします。事件を捜査する警視庁の岡本賢治警部補(演 : 三橋達也)らは、事件直後から急に羽振りの良くなった日本舞踊の没落した家元、春日流の春日藤千代(演 : 八千草薫)が事件に関係していると睨み、彼女の屋敷を捜索すると盗まれた現金と紙幣版番号が一致する紙幣が発見された事で、藤千代は逮捕されます。
藤千代の為に強盗殺人を行った水野は警察に出向き、自ら自分がガス人間である事を明かして銀行の施錠された金庫室で身体をガス化し、犯行の手口を警察らの前で実際にやって見せ、自分が恋人の藤千代の日本舞踊の発表会を実現させ、世間に藤千代を再評価させる為に強盗を行ったのだと言い、無実の藤千代をすぐに釈放するよう言い残してガス化したまま建物の窓から去っていくのです。
その後、釈放された藤千代はこれ以上犯罪を行うのは止めるよう水野を説得しますが、自らの能力に全能感を抱く水野は説得を聞き入れず、逆に家元再興の為に予定していた日本舞踊の発表会を行うよう藤千代を諭します。一方、警察では発表会の会場となる大ホールに可燃性の【UMガス】を充満させ、大ホールごと爆発してガス人間を抹殺する計画を立てるのです。
発表会当日、警察から説得されるも藤千代と老鼓師(演 : 左卜全)は大ホールからの退避を拒み、藤千代はたった一人の観客、水野の為に演目『情鬼』を披露します。警察はやむを得ず起爆装置のスイッチを押しますが、警察の計画に気付いていた水野が事前に起爆装置を破壊していた為に大ホールの爆破作戦は失敗に終わります。演舞を終えた藤千代は客席に駆け寄り水野と抱擁を交わし、心中する決心をしていた藤千代は隠し持っていたライターで着火し大ホールは爆発し大業火に包まれるのです。
業火に包まれる会場を警察や群衆らが見守る中、会場から這い出てきたガス人間はその身体を緑色に発光させながらに水野の姿に戻り、そのまま焼死体となって息絶えるのでした。
ガス人間となった青年、水野を演じるのは東宝特撮作品や黒澤明監督作品にも数多く出演している土屋嘉男さんですが、土屋さんはこの映画の撮影の為に食事制限などを行い、瘦せ姿となって人体実験によってガス人間になってしまった犠牲者としての悲劇性を強調したとのこと。また、本作のヒロイン春日藤千代を演じた八千草薫さんは元々宝塚歌劇団出身であり、日本舞踊もこなせるという理由で起用されたとのことで、本作の終盤、大ホールで藤千代が披露する『情鬼』という演目は本作の為に創作された演目だそうです。
土屋さんの陰ある男を演じる演技はいつもながら素晴らしいですが、なんてたって春日藤千代を演じる八千草薫さんのその美しさは息を呑むといいますか、この作品の公開当時(昭和35年)八千草さんは29歳なんですが、美しさのレベルがちょっと別次元なんですよねぇ。まぁ…当時の東宝の作風としては【清く・正しく・美しく】といった感じで女優さんも清楚なイメージの方が多い印象ですけど、それでもこれだけ美しい女性なのに【色気】とか【妖艶】といった印象を全く抱かせないあの感じって一体何なんだろうなぁ…。只々、見とれてしまう女優さんです。

『ガス人間㐧1号』作品タイトルロゴ

人体実験によって【ガス人間】となった青年、水野(演 : 土屋嘉男)

ガス人間。
水野は一種の精神統一によって、自らの意思で身体をガス化してガス人間になったり、人間の姿に戻ったりできるのです。

没落した日本舞踊の【春日流】の若き家元、春日藤千代(演 : 八千草薫)
八千草さん、美しいので沢山貼っておきます(笑)。

藤千代はたった一人の観客、水野の為に演目『情鬼』を舞います。

演目が終わり、水野と抱擁を交わす藤千代の手にはライターが…。

可燃性の【UMガス】が充満した会場の大ホールが藤千代によって爆破され、這うように会場の外に出てきたガス人間、水野の哀しき最期の姿。
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Posted at
2023/01/09 12:50:26