2月6日発売のバンダイのソフビ人形『ムービーモンスターシリーズ』のウルトラマン(シン・ウルトラマン)です。2月9日にamazonに注文していたものが届きました。
全高約16cmのソフビ人形ですが、これは…もはや遊ぶための【玩具】というか、その辺に飾っておくのがちょうど良い佇まいですな。この不動の構えでは怪獣のソフビと戦わせてもテンション上がりませんよ(汗)。怪獣と戦うのは、前回当ブログで取り上げた【ウルトラアクションシリーズ】のウルトラマンに任せる事にしましょう。
それにしても、映画公開のだいぶ前から限られた映像、画像だけを基に、よくもまあ…あれやこれとフィギュアの類を発売しますね。映画を観てもいないのに買う方も買う方ですが…(笑)。
しかし、このソフビ、この態勢でよく自立できるなぁ…と感心しますね。脚を肩幅くらいに開いてるソフビでも製品によってはバラつきがあったりして、ちゃんと自立できないソフビがあったりするものなんですけど、こんな風に脚を揃えてちゃんと立てるなんてソフビという材質から見てもなかなかのバランスなんじゃないかと驚いています。
そして全体的な造形ですが、まるでウルトラマンがライザ〇プにコミットしたかのような駄肉が削ぎ落されたボディフォルムがソフビで再現されています。彫刻家であり画家の成田亨氏がデザインしたウルトラマンの基となるデザインにより近い存在となっていますね。成田氏がデザインしたウルトラマンは当初、カラータイマーが付いておらず今の様なマッチョ体形ではない、まさにこんな感じの【宇宙人】だった訳ですけど、それを具現化するために成田氏はスマートで手足の長い俳優、古谷敏氏にウルトラマンのスーツアクターを依頼した訳ですね。
成田氏はウルトラマンをデザインするにあたり、人の顔から余分なものを削ぎ落す作業を行い、口元の笑みを浮かべている様なデザインは弥勒菩薩像の【アルカイックスマイル】からヒントを得たと言われています。さらに、【能面】のような単純化されたマスクは一見無表情のようですが、見る角度や陰影によって様々な表情を見る事ができます。
そして、宇宙服とも裸の状態とも判別がつかないような身体のデザインも特徴的で、これまでに無いような斬新で新しいデザインと言えますね。銀色の部分は、【宇宙】や【宇宙ロケット】をイメージにしたものとされ、全身の赤いラインは火星の模様からの発想とされいます。
こうした成田氏のデザインを基に、同じく『ウルトラマン』の美術担当で造形家の佐々木明氏と共に立体化していき、成田氏が【不本意】とする目の部分の覗き穴やカラータイマーが追加されて現在のウルトラマンの姿へとなっていきます。
『ウルトラマン』の撮影が進むにつれ、スーツの至るところに傷みも出てくる事からウルトラマンのスーツは何着か製作される訳ですが、それぞれにマスクのデザイン、体形などに違いや変化が見られ、第30話から第39話(最終回)まで使用された【Cタイプ】と呼ばれるスーツが今日のウルトラマンとしての完成形として広く世間に認知される事となります。
一人のデザイナーとして成田氏は【覗き穴】や【カラータイマー】を大変不満としていた様で、次回作の『ウルトラセブン』のデザインを担当した際は、「後から付けられるならば…」と、カラータイマーの代わりとなるビームランプをウルトラセブンの額に配して全体的なデザインの中に上手く取り込むなどの工夫をしています。また、覗き穴もウルトラセブンの立体的な菱形の目のデザインに上手く取り込まれているのが分かります。
そして、今回公開される「シン・ウルトラマン」はそうした成田氏が元々デザインしたウルトラマンの原点とも言えるものを庵野秀明氏らが実写映像化するというものです。(まぁ…ウルトラマン自身はCGですが)
公開前にこのウルトラマンの姿が世間に公開され、こうしたフィギュアなどが商品化される事で、改めて成田氏のデザインした【ウルトラマン】というものが脚光を浴び、注目される訳ですが、映像作品そのものを観る前にウルトラマンのこの姿だけが独り歩きしてしまっている感じも否めません。やはり、このウルトラマンが実際に動く様子を見る事によってこのデザインの素晴らしさが活きるかどうかが分かるのではないでしょうか。
実際、デザイナー、造形家の手を離れ、覗き穴とカラータイマーが【付いた】我々がよく知るウルトラマンは、ストーリー(脚本)、演出などの質の高さによってその格好良さが更に増し、50年以上も多くの人に愛されるキャラクターになっていった事は紛れもない事実ですから、ウルトラマンとシン・ウルトラマンのデザインのどちらが優れているという様な議論や問いは正直【愚問】だと僕は思います。
僕の個人的な思いとしては、現在のマッチョで覗き穴もカラータイマーもあるウルトラマンの姿こそが【ウルトラマンの完成形】なんだと思っています。これは、デザイナーや造形家を含めたウルトラマンの制作に関わった数多くのスタッフの功績と言えます。
そしてある意味では「ウルトラマンとウルトラセブン以外のウルトラマンはいない。」とも言えるでしょう。ウルトラマンジャック(帰ってきたウルトラマン)以降のウルトラマン達はウルトラマンとウルトラセブンの【亜種】に過ぎないという事なんですよね。僕は長きに渡ってシリーズ化され多くのウルトラマンが生み出された歴史もそれぞれのウルトラマンのデザインも否定する気もなければ、むしろ大好きなのですが、やはりデザインという観点から見た時に、ウルトラマンとウルトラセブンのデザインに始まり、ウルトラマンとウルトラセブンのデザインで完成しているという事が言えるのではないでしょうかね。
それだけに、ウルトラマンとウルトラセブンのデザインは時代を越えたセンスの高さと説得力を持っているのだと思います。
右 : シン・ウルトラマン【ムービーモンスターシリーズ】
左 : ウルトラマン【ウルトラシーローシリーズ01】
成田亨作「真実と正義と美の化身」
成田氏のデザインを基に佐々木明氏が造形して製作されたウルトラマン(Aタイプ)のスーツ。中には古谷敏氏が入っており、まだ目の覗き穴やカラータイマーが無い状態の貴重な写真。
有名なウルトラマンの登場(変身)シーン。
このウルトラマンにはカラータイマーが付いていません。カラータイマーの設定が追加される前にこのカットが作られたのでしょうね。
Posted at 2021/02/11 13:49:08 | |
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