【ワシントン清水憲司】手際の良い新幹線清掃で知られるJR東日本のグループ会社が、米ハーバード大経営大学院(ハーバード・ビジネス・スクール=HBS)の必修教材として採用される。短時間で清掃を終える姿がメディアで「奇跡の7分間」と話題になり、HBSも「経営者のあるべき姿を示した事例」と評価、次世代のビジネスリーダーに学んでもらうことにした。
取り上げられるのはJR東日本テクノハートTESSEI(テッセイ)。東北、上越などJR東日本が運営する新幹線の清掃作業を請け負っている。
JR東の新幹線は、折り返しの東京駅で12分間停車するが、乗客の乗降時間を除くと、清掃に充てられるのは7分間。この間に従業員はテーブルや床、トイレの清掃、忘れ物の確保、座席の方向転換などの作業を終える。テキパキと作業する姿を米CNNなどが取り上げ、海外でも話題になった。
同社は約10年前まで苦情が多く、従業員の士気も上がらないなど問題を抱える企業だった。「きつい」「汚い」「危険」の3K職場で離職率が高く、トラブルを減らしたい上司は叱責で現場を押さえつけるばかりで、従業員が萎縮する悪循環に陥っていた。
それを立て直したのが、2005年にJR東から経営企画部長として送り込まれた矢部輝夫さん(69)だった。矢部さんは旧国鉄に入社後、約40年間にわたり運行の安全対策を担当。清掃は畑違いだったが、着任すると「現場が『自分たちはダメだ』と思い込んでいる」ことは分かった。そこで、制服をレストラン風の明るいデザインに変えたり、車両を従業員が清掃の技量を見せる「新幹線劇場」と呼んだりして職場の雰囲気を一新することから始めた。
「夏はアロハシャツを制服に」「帽子に花飾りをつけたい」と、現場で相談した提案には「ノー」を言わず、仲間の良いところを報告してもらい、幹部登用にも道を開くことで士気を高めた。一方、遅刻を重ねるとボーナス減額など信賞必罰も徹底し、サービスの質向上につなげた。
HBSは、テッセイの事例を、管理強化だけでなく、従業員の意欲を高めて生産性を改善させたと評価。昨年5月から選択教材として扱ってきたが、豊富な事例を通じた授業を重視する同校内でも学生の反響が大きく、必修化が決まった。今秋から約900人の学生がテッセイの事例を議論しながら企業経営やリーダーシップのあり方を吸収していく。
教材には、担当教官のイーサン・バーンスタイン助教授(40)が従業員から直接聞き取った生の声も盛り込んだ。
バーンスタイン氏は「入学してくる学生の中には単純に、リーダーシップとはコントロールすることであり、金銭的な動機付けでほとんどの組織の問題は解消できると考える者もいる。矢部さんはもっと進んだ手法を採用した。学生は多くのことを学ぶだろう」と期待している。
******************************************************************************* Yahoo! ニュース 毎日新聞 2016/09/02 *****
「JR東日本テクノハートTESSEI」は昔で言う「鉄道整備株式会社」のことなんですね。鉄道整備でテッセイってワケです。
作業風景を見ていると「掃除屋」というよりも「工場の流れ作業」のような動作です。ライン作業をやったことのある人はわかるのですが、最大効率を考えた動きのパターンを守らないと間に合いませんし、不具合も起きるんです。この仕事に就く前にここのところをよく説明していないとついてこられない人が出るんだと思います。
別記事によると
矢部氏は2005年に同社の取締役経営企画部長に就任した。当時のTESSEIは事故やクレームも多い、グループ内で「評判の悪い」企業だった。従業員のパート率58%。その半数は入社して1年未満と入れ替わりが多く、仕事のノウハウを伝え、サービスの質を保つことも難しかった。この状況を打破するべく、矢部氏は改革に乗り出した。
当時、同社で講じられていた対策は徹底した「管理」だった。ただでさえ人が好まない仕事に携わる現場の従業員を抑圧し、徹底したルールと規律を求める手法を繰り返していた。そこでまず、真の意味で従業員を大切にすることから始めた。
「よく『お客さま満足度を向上させよう』と言いますが、それを生み出すのは現場です。当社では清掃活動を『新幹線劇場』と呼んでいます。これはお客さまが主役で、私たち従業員が脇役となって、一緒にこの場所で素晴らしい思い出を作ろうという意味合いです。お客さまの満足感は従業員に満足感がなければ生み出せません」
「従業員満足とは従業員を甘やかすことではありません。どんな職業でも、そこに自分の役割、存在意義を見つけて、生き生きと働いてもらうことです」
矢部氏は従業員満足度を高めるためにまず、本社の「従業員支援力」を備えるところから始めた。従業員の身分保証、生活の安定を図ることを目的に20年までに社内のパート従業員率を30%にまで下げる方針を掲げる。JR東日本の反対を押し切り、1年以上のパート勤務を経た従業員は誰でも正社員登用試験を受けられる制度を導入した。現在パート従業員は全体の46%にまでなった。今でも厳しい職場環境に入社後すぐ脱落してしまう人もいるが、その数は少なくなってきているという。
ってことです。「よい仕事はよい職場から」ですな。
何処かのカイシャの自称エライ人たちもべんきょーしてもらいたいものですわ…。
しっかしまぁ、なんですな。
「やりがい」や「成長」でごまかさず、給与面や福利厚生も充実してやってほしいものですな。
Posted at 2016/09/07 07:29:35 |
トラックバック(0) |
所感・雑感 | ニュース