机上のオリジナルマップを作製しましたが、その考え方の忘備録。
まず背景として、ガソリンエンジンのかなめは、「良い混合気に、圧縮と火花である」けれど、燃調の良し悪しは、最も重要。で、昔はキャブレターだったので、その調整は大変面倒で、いちいち物理的な変更を加えるために、止めて、開けて、替えて、また走る、、と言う作業でした。ただ、インジェクションと比べると良い点もあって、アナログのパッシブ制御であるから、アイドル付近、低速、中高速、加速時、、などパート分けした機構の一部を「点で変える」との周辺ポイントは吸気作業の中で自動的になだらかに変化する。
ある意味、エンジン自身が、欲するガソリンを飲み込むところが有った。ゆえに乗る方が、咽ないように開度をエンジン回転数に同調させて開けてゆく人間側が制御の補足に組み込まれた。
ところが、インジェクションでは、特に今回のパワコマ方式は、メーカのベースマップはデジタル的に、トリガー要因(回転数、吸気負圧、アクセル開度、気圧、水温、?)と言った補正係数を加えて連動する。そのベースをアクセル開度と回転数の2つの軸で、なん%増量、減量するか、ということを決めて補正するだけ。
なので、今回は250回転刻みにその周辺全部も「適当」に均して書き込む必要がある。言い換えれば、中心の山(谷)の場所を見つけることが重要になる。
そしてその山と谷は、エンジンの物理的構造(吸気管長、排気管による排気脈動、共鳴周波数、カム等によって、「混合気」を詰め込む自然吸気の充填率と、その時の「混合比」そして、点火タイミングによってエンジンの出力特性が決まります。
と言うわけで、燃調をいじるいくつかの異なる目的が見えてきます。
1.メーカ設計:エンジンの物理的構成によって決められたインジェクション噴射マップ
この部分を変えたい、という理由が有る場合は
①メーカ都合の調整を、燃費優先、パワー優先、加速の付き優先、、など特性を変えたい場合。
②エンジンの物理的構成を変えた場合、つまりマフラー、エキパイ変更や、カムを変えたなどによって、メーカ想定の燃調が変わってしまう部分を最適化したい場合。
③①と②の複合で代えたい場合。
こうやって、変更目的とポイントを明らかにして、思考過程をつづる目的は、今時実走では、広大な走行パターンを塗りつぶす走りが無理で、特に今回のGSXRでは、ほとんどの場面で20%以上アクセル開けた走りは現実的でないためです。そのため基本は「机上検討」で、大体のマップを作る必要があり、「不都合な部分だけを、補正してゆく」という流れになるからです。
1、メーカの基本マップの仕組みの推定。
基本マップは、燃料噴射量と点火時期を決めたものと推定。
アクセルの定量開度ポイントでの空燃比をベースに、過渡特性を作るために「何か」をセンシングフィードバック、あるいはアクセル開度の角加速度?のようなファクターをパラメータにした、基本マップ×補正信号フィードバック型と推定。雑誌などの情報から、
※この後登場した2006年モデルからはツインインジェクターとなった。2005年までは、ツインバタフライながら、シングルインジェクターで、基本はアクセル開度入力値をダイレクトに導いて、その信号と回転数および、吸気の負圧センサフィードバックでセカンダリーバタフライを自動制御、、というのがk5迄。だからこそ排ガスと燃費を気にせず、右手ダイレクトなフィールを得られるデジタルCVキャブ、と言われる所以。
で、当時だから、ベースマップをギア毎に持っていたのか?、というと恐らくそこまでやっていないと思う。なので初代隼もそうだったけど、キャブから、インジェクション化になって、自動車用をもってきても、負荷が軽すぎて過渡特性が作りこめない、、という問題が顕在化しており、唐突感、角が丸くないフィールだった。ツーストのちょっと濃い一息溜めてから更けあがるちょうど気持ちいい感じにならなかった。これは低いギアで顕著で、負荷のかかる高めのギアで低速時はそうでもなかった。
なので、自分的にはメーカのベースマップは1速から6速まで同一で、これにギア速、負圧(インダクションボックス内圧)を係数として掛けて補正するようなものだったと仮定。
これ以外にシリンダーNo.毎に補正も入れてあるはずで、中央の2-3と両端の1-4の2種で補正か、ベースか作ってあると思います)ファンネルが長短と異なるので、低速と高速でお互い欠点補うようにしていると思われます。なので、メーカのECUは、おおむね低速から高速、アクセル開度の過渡全てを網羅満足する(主に燃費、排ガスとドライバビリティの妥協点)ように仕上げてある前提。
これに、変更点(フルエキ+マフラー)の補正を入れることが命題なので、低速で排圧抜けすぎ(ガス薄い)と高速で抜けイイ(充填率向上分の燃料を入れてパワーUPかつ適正空燃比にする)の2領域の補正がメイン作業。加えてその比率がギア比毎に強弱作るということが私の作業内容になります。
机上検討できるのは、下記のノーマル時とフルエキ交換時でのトルク曲線が手に入ってるからです。したのグラフを上に重ねて、同じトルクカーブで見てみると、どの回転域がパワーアップ出来ているか、つまり吸気効率上がって、その分余計に燃料を送り込めるポイント。
これを見ると、4-2-1の効果も含め、低中速の谷がきれいに埋まっています。
メーカが埋めなかったのは、排ガスのせいでしょう。(なので、この谷は薄いからなのか、山が濃いのか?。ヨシムラの補正マップからは、谷は濃いめに吹いて補正しているように見えます。山もプラス補正。)
これはメーカが作ったすべての条件をほぼ網羅し作りこまれた基本マップに対して、、これに燃調補正コントローラであるパワコマで増量と減量を掛けるフィルターでは、メーカのノーマル条件に対して、1枚のレイヤーでフィルター掛けても、負荷の大小(ギア段xアクセル開度)でかなりズレが生じる。低速ギアでは回転上昇早く軽負荷で噴射遅れは少ないが、高いギアでは、アクセル開度は大きめとなり(遅れがおおきい)ため、同じマップでは、空燃比に差が生じるのでその辺を軽重変える必要があります。またメーカは排ガス、燃費とあるのでドラビリが悪化しない範囲でそちらに重点置く場合が多いので、フィール重視ならこれまた補正が有って良いわけです。
と言うわけで、いきなりではあるが、6枚のギア毎マップを作った方が、逆につぶしこみは楽だろうというわけです。キャブ車の特性をイメージしながら、エンジンの気持ちになって、乾いているのか、咽ているのか、感じながら「好い加減に」なまらしてやるのですね。キャブはその辺が逆にアナログな分自動補正されるので、点と点の間をうまくつないでくれるのですが、デジタルは空白は受け付けないし、センサーフィードバック有ったとしても、角加速度成分まで予測して、、なんてことが苦手なのはATの制御考えればわかることで、自然の関数は素晴らしい。
恐らく全開/全負荷と、オフ/パーシャル、とを補正したパワコマの吊るしマップでは、街乗りや軽負荷時の補正が同じと言うのは無理がある。なので、いきなりではあるがせっかく機能が有るのだから6速(6枚分)の補正マップを作ることにする。これにはほかに狙いもあって、作ったモード切替スイッチの接続によって、これは生きてきます。
いずれにしろ、メーカのベースに対して±20%をMAXにした補正なので、めったなことは無いでしょう。(オプションのオートチューンの機能が±20%までなのでね、この辺りが一つの限度だと思います。パワコマ5自体は最大250%まで行けるようですが、インジェクターが物理的に無理でしょうね、なのでこの年式以降はツインインジェクター化でややこしい(;^_^A
ベンチがあるなら、4気筒毎のEXにAFセンサーつけて、アクセル開度を定点でのデータと、回転を追従させながらの2-5-10-20-40-60-80-100%開度と、良く使うポイントの中間過渡を20-40とか、20-60とか、でのデータをログ取って作りこむのが正解でしょうが、そこまで追い込むほどの使い方でもない、道楽ですから、壊れないようにフィール重視で良いでしょう(;^_^A
<マップポジション1が現行、2がオリジナル6速分となります:写真ではちゃんと2が選ばれています。>
と言うところで、後篇に続く(ニッチ過ぎて需要は無いでしょうが、記録用としてあげます)