空海「幻の大日如来」500年ぶり再現へ コロナ禍「心一つに」
毎日新聞 2022/01/09 11:00
制作が進む大日如来像=讃岐国分寺提供© 毎日新聞 提供 制作が進む大日如来像=讃岐国分寺提供
空海が京都・東寺に造立し、約500年前に焼失した「幻の大日如来像」を再現する計画に、高松市の讃岐国分寺が10年がかりで取り組んでいる。
少しずつ寄付を集め、高さ約4メートルの木彫りの仏像は9割方、完成した。「仏様の力で人々の心を救いたい」と住職。制作のきっかけは、かつて寺を訪れたある親子の姿だった。
きっかけは讃岐国分寺訪れた親子
2012年の冬。四国霊場札所でもある讃岐国分寺を訪れた家族を大塚純司住職(49)は鮮明に覚えている。
車椅子の女の子と両親。大塚住職は「父親は眉間(みけん)にしわを寄せ、娘の障害について悩んでいるように見えた」と振り返る。
自分はこの家族に何を与えられるだろうかと自問したという。
その1年後、高松市内で彫刻家の大森暁生さん(50)=東京都在住=の作品に触れる機会があった。
実物大のチーターの彫刻は、命を宿したかのように生命感にあふれていた。
「この人に仏像を彫ってもらえば皆の心を動かせるのではないか」。大森さんに制作を依頼し、快諾を受けた。
讃岐国分寺は真言宗の寺院で、宗祖の空海は讃岐に生まれた人。
朝廷から東寺を託された空海は、密教の教えを広めるため曼陀羅(まんだら)を立体化した仏像群を構想。
大日如来像はその中心として講堂に安置され、空海没後の839年に開眼供養が営まれた。
しかし、1486年の土一揆で焼失。その後作られ、現在講堂にまつられている大日如来像(国重要文化財)は当初とは異なる姿だ。
「平和と人々の幸福への切なる願いが込められた仏像は、空海の精神の結晶」。大塚住職は大日如来像の再現を志した。
東寺に残された記録によると、仏像の高さは約4・8メートル(1丈6尺)で、全体が金色だった。
冠に五つの仏を十字に配し、光背には37の仏を表現しており、蓮華(れんげ)座を8頭の獅子が支えていた。
ただ、他は不明点も多い。大森さんと共に多くの彫刻や彩色の専門家が関わり、再現に取り組んだ。
22年中の完成目指す
今回制作している仏像は、安置する讃岐国分寺のお堂に合わせて高さ約4メートルとしたうえ、獅子など当初の大日如来像の特徴を再現。
木に漆を塗って金箔(きんぱく)を張り付ける漆箔という技法を用いた。
スタイルなど造形については、大森さんは「歴史や仏像の基本を取り入れ、自分のオリジナル性を組み込み、現代に照らして美しいバランスを考えた」と話す。
上部の仏像は重さが600キロもあり、獅子で支える構造を試行錯誤したという。
仏像の制作費、お堂の改修費など総費用は約1億5000万円。参拝客らに仏像制作の趣旨を説明して寄付を募るなどし、これまで1億円以上を集めた。
ただ、一昨年以降は新型コロナウイルスの影響で参拝客が減り、残る約3000万円はクラウドファンディングなどで募っている。
仏像は東京都足立区の大森さんの工房で制作しており、順調にいけば22年中に完成し、讃岐国分寺に奉納される予定だ。
大塚住職は「仏像は多くの人が力を合わせて作ることに本来の意義がある。
新型コロナで分断された人々の心を再び団結させたい。仏像の力を借りて、我々の思いを伝えたい」と話している。【喜田奈那】
諸国国府跡・国分寺跡・国分尼寺跡巡りをしています。
国分寺跡近くには、たいてい国分寺もあり、讃岐国分寺も行ってみたいとおもっています。
最近は、拝観や書籍の購入ではなくクラウドファンディングで寄付ができるので、いいですよね。
私も障害児に携わる仕事をしているので、この話に感銘を受けました。
今年は、どこの国分寺跡に行けるかな?
Posted at 2022/01/09 14:53:31 | |
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