
GWCAのJapan Cup / SUGOラウンドが終りました。
AMG GT4でGT4 Amクラス(Amドライバー2名で組んで出場するクラス)にエントリーしているABSSA MOTORSPORTからは片山究選手と豊田敬選手が出場しました。
Gentleman Drがいつか出たいと思うレースとしてやはり『GTカーレース』って目標にしている方が多いと思います。
日本ならSuper GTやSuper Taikyuがハコ/GTカー/ツーリングカーのレースのアッパークラスですがS-GTはプロ化し過ぎてよほどの経験値と酸いも甘いも分かり切ったGent Drでないとハードルが高すぎる、S耐は凄く良いカテゴリーだけど速さの違うカテゴリーと一緒に走る難しさやレースに拘束される日程、走行距離が長い事による車両消耗コストやランニングコストは馬鹿にならない、、、
そうなるとSROが開催しているGWCAは良い所を突いていて、今年からAsiaシリーズとは同会場だけど別時間に分けられて開催するJapan CupはGTカーレースデビューのGent Drには色々な面で最適な選択の1つと言えると思います。
ワンスマでサーキット走行を覚え、レースに出たいと目指した両選手ですが、生い立ちは別々でした。
私がワンスマの各種プログラムに参加される方々にレース参戦をお誘いする事ありますが、誰にでも声を掛けている訳ではなくて、一定の条件とかレースに出れる様になるまでに必要な項目があると思っています。
大きく分けると、、、
① 簡単に言うと『筋が良い』方
例えばパッと乗ってある程度まで直ぐ走れる方や練習方法が上手な方、練習熱心な方、直ぐに速く走れなくてもある程度見ていると直ぐに上手くなるかどうか?なんとなくわかります。
② フェラーリやポルシェ、マクラーレンなどの高性能スポーツカーでサーキットデビューをしてもちゃんとレースに出る為なら逆戻りして練習する
レースに出たいという方で、いきなりフェラーリチャレンジなどに出る方居ますが(それ自体は否定はしませんしフェラーリチャレンジはそんな方でも何とかなるようなクラス分けなど配慮されている部分は良い所です)やっぱり、86とかA-1Cupとかロードスターレースなどまずはローパワーの車両で競争をする(周りに車両が居て競争をする事が単独で速く走る以上にどれだけ難しいか?を知る)所から始めてほしいし、ワンスマでレースを目指す人にはほぼこの『まずは入門向けレースからスタート』をマストにしています。
混走の中でクルマの速さやドライバーのレベルが公式戦以上に幅がある参加型レース(非公式)レースに出場するのも、一定のリスクはあるけどいい経験値になります。
ローパワーのクルマで上手い人の1-2秒まで行ければいいけど、最低3-4秒以内で走れる様にしたい、でないとパワーがある車はもっと難しい!
③ タイヤを感じる、常にバラつきなく自分の走りが出来る、、、そういう根本的な大切さを理解している
例えばFSWを1分40-42秒で走るGT3やフェラーリチャレンジ、Porscheカップカーだと45秒以内位で走れないと、その車が設計されているタイヤの潰れ方にならないし、空力バランスにもなってないからタイヤはゴミを拾うし(ラインを走れてないか?仮にラインを走っていてもゴムを拾ってグリップダウンした状態になる)、そういう状態って逆に乗り辛いし、変なスピンをしたりするのも良くある、タイムで言うとその車の8~10秒差くらいの領域。
フェラーリチャレンジだと最高峰のPirreliクラスはプロ同等で走れているから問題ないし、PirreliアマクラスもGTカーレースに出場されてもいいレースが出来る、でもShellクラスは表彰台争いしているくらいが最低限、Shell Amクラスだったら新品タイヤにしてもタイムが変わらないか悪くなったりする事や、タイヤのグリップ減ると著しくタイム落ちたりする、つまり車やタイヤの性能で走ってない領域と言える。
そういう状態だと、自分がコース上に留まって走るのが精いっぱいだから周りと競争をするレベルには達してないと断言します。
④ レースは単独で速く走る先に大変な事がある事を知っている
ワンスマで言えば広場トレーニング等で基本をしっかり叩き込んで、レーシングコースに行ってもある程度出来る様になる、そこが第一ステップ
レース形式に身を置いて、練習で出来る事をレースで発揮するのは大変である事を知る、GTレースの場合はピット作業があったり、Dr交代があったりするし、満タンから軽いタンクまで、タイヤも新品だけでなく100kmや200km走った状態で走らないと行けなくもなる、、、無線でやりとりしながら走る、FCYやSCの手順も理解している、後方から速いクルマが来た時や遅い車に引っ掛かりそうになった時、順位を争うクルマとのバトルの時、、、お互いロスなく安全に走れるか?
ピットロード違反や作業違反、レーススタート違反などの経験を公式戦でする方も多いのはレースの経験はレースでしか出来ないから、です。
⑤ ある程度走れる様になったらレース経験で『自分に足りないモノ』を突き付けられるので、それを元にまた普段の練習プログラムを構築していくと、自分にあった車、レース、練習法が分かってくるはずです。
まずはそれらを自分のホームコースで構築し、転戦のあるシリーズにも出て他のサーキット行くと同じことを同じ様にするのはまた難しい事を知るハズです。
FSWや茂木は世界でも有数な安全なサーキットの1つなので、鈴鹿や菅生、岡山、オーポリなど行ったら思いっきり走る事自体が難しいのが良く分かる、そこでレースをする訳ですからね、、、(苦笑)
ワンスマを経てレースに出ようとする方は広場、Rコース、入門カテゴリーでのレース経験(国際ライセンス所持→そういった経験をしているからこそのライセンスであるのが本来の意義ですから)を飛び級で進めたいという方にも最低限やってもらわないと『私たちは関わりません』というスタンスです。
どこまで行っても責任は取れませんけど、何かあったら自分が怪我をしたり、相手を怪我をさせたりしてしまうのがレース、大切な財産である車両だって一瞬で無くなってしまう可能性も秘めているので、社会的地位のある方は余計に慎重に、じっくりと出来る様になってから出てほしいと思う。
いきなり飛び級ていっても、いつかはできる様になるものなのでしようが、そこまでの資金やリスク、巻き込む人の事を考えると『急がば回れ!』です。
でも今回のABSSA MOTORSPORTから出場してくれている2名、FSW戦から出場する3名目の方、そして予備軍の方々もワンスマの中にも多く居ると感じているけど、出て見て痛感して練習に励んでくれればいいとも思う。
周りに迷惑を掛けない為にも最低でもFSWなら47~49秒でプロが走るGT4なら、練習で条件ん揃ったら50~52秒位では走れる状態になっていればGOサインが出せます。それでも練習の時に出たタイムが出なくなる事もあるし、周りからも(皆さんも最初はそうだったでしょ?って思うけど)危ないって言われる事があるハズですからね。
そして、競技の中に身を置くと、自分の本性が出ます。
おっちょこちょいな性格の人はよくケアレスミスをするし、慎重な人は慎重すぎになってペースを乱す事もある、危険察知能力に乏しい人は、事前に言われていたのに、いざスピンした時に電子制御がしっかり働いているマシンだと速度センサーが誤作動して、次にブレーキを踏んだ時にABSが誤作動してABSが利かなくなって前の車に突っ込んでしまったとかもある。
スピンして再発進の際に後続の車両と当たったり、バトルの際に無理し過ぎたりラインを変えすぎて相手に見て貰える位置にいなかったり、ミラーが適切な時に見れてなくて当たらずに済んだ接触に繫がったり、本当に色々と起きるハズです。
ちょっとサーキット始めてみて『レース出ましょう!』なんて誰か誘われたら、何か困っている事があるか?裏があると思った方がいいです(笑)
本当なら下位カテゴリーでホームコースだけで最低1年から2年、ほぼ同じメンバーと同じチーム構成の中でシリーズを戦う事を学び、車両を変えてみる、転戦シリーズに主戦場を増やすなどして、車が変ったりサーキットが変わることによって変わる事、それでも変わらない事を知って貰う、、、そういうステップを踏むのがベストです。
時間がない、お金がない、、、何かの制約の中でレース参戦をするのは仕方ないけど、経験と練習がものをいうスポーツなのがモータースポーツ、テレメトリーシステムや同時配信車載カメラなどの進化、シミュレーターの発達によってドライバーサポートがサポートではなく『介護』のような形になりつつあったり、リアルとバーチャルが混同してしまっていると最近感じるので(シムでのトレーニングは本当に有効ですが、リアルとの差異を理解して実走行に活かすにはそれなりの手法や考え方が備わってないとリスクに繫がったりスキルアップになってなかったりする)、そういう環境が良くなっているハズの昨今、逆に自立して自分で戦う事が出来るドライバーになっていくのか?心配になる時があります。
普段の生活では味わえない位の刺激や心の揺さぶりがあるのがサーキット、レースをしたらそれがもっと強くなります。
長くやってきた自分だからそれは良く分かる(苦笑)
我々ワンスマとして、その受け皿としてのABSSA MOTORSPORTとして見た目の華やかさや結果に囚われず、ジェントルマンドライバーの皆さんがそれぞれのニーズや条件の中で長く安全にモータースポーツで楽しんでもらう為に、そこにはどこまで行っても残酷さや過酷さはあるけれど、それを越えた時に見える素晴らしい感動や景色も一緒に観てほしい!とも思う、その為にどうしていくか?は常に頭の片隅で考えている事、それが私がドライバーとして長く色々な経験をしてきたからこその還元できる環境だと言えます。