
小生が子供の頃は、巨人・大鵬・卵焼き。
もっとも、大阪の子供にとっては巨人ではなく阪神でしたが、それでも長嶋は皆大好きで、銭湯の3番ボックスを奪い合ったものです。
そして車といえばやっぱりキャデラック。
物心ついたころには自宅に小さな小さなマツダのクーペがありましたが、あの大きな華やかなキャデラックは、雲の上の存在でした。
時は過ぎ去り、一昨年。
今のE90を購入する際に、例によってさまざまな車を試乗検討しました。
ニュルブルクリンクでチューニングしたという足回りと、シャープなスタイリングが気に入り、キャデラックCTSを試乗してみたかったのですが、なんと試乗車は東京に1台あるだけ。
こいつは売る気がサッパリ無いなあと判断し、諦めていました。
ところが先日の新聞大広告。よくよく見れば、大阪と神戸に試乗車が来るではありませんか。
GMが存亡の危機に立たされているにもかかわらず、よくまあこれだけ広告宣伝が出来るものだ、と感心しつつ、早速試乗を申し込んだのでした。
本来は大阪のディーラーが近いのですが、あいにく紅葉の撮影と時期が重なってしまい、神戸のディーラーまで試乗に繰り出しました。
ディーラーに到着して驚いたのが、CTSの試乗車が3台もあること。何れも豊橋ナンバーで、VWやメルセデス同様にPDIが豊橋にあるようです。
この試乗車の予定をウェブでみると町田と神戸を行ったりきたりで、3台を使いまわしていますが、東京に1台しかなかった以前よりは力が入っているようですね。
1、デザイン
力強い面が組み合わさり、気持ち悪い端面処理もなく、力感みなぎるデザイン。そこに大きなグリルが収まり、大変インパクトのあるデザインだと思います。リアスタイルは古き良きアメ車のモチーフを取り入れ、実物以上に大きく見えます。
好き嫌いがはっきりするデザインだと思いますが、こういうカクカクしたデザインは、小生は大好きです。文句なし。
外装色は、イメージカラーであるこのクリスタルレッドが綺麗ですねえ。
2、運転席に座ってみて
まず目に飛び込んでくるのがバックライトも明るい3連メーター。速度計を真ん中に、左がタコメーター、右に燃料、水温、油圧のコンビメーター。BMWの精密機械然としたメーターとは対照的で、文字のタイプフェイス含めちょっとおもちゃっぽい感じですが、視認性は良好です。
ちなみにこの試乗車は、まだ2710kmの新車ですねえ。
ダッシュボードは立体的なデザインで、スイッチがいっぱい。デザインのセンスと質感は、日本車の特に日産あたりと近いのではないかと感じました。
ちょうどセンターコンソールのトップからナビのモニターがせり出してくることからも、そういう感じを持ったのかもしれません。
一方、ダッシュボードトップの革シボは彫が深く、ステッチも決まってなかなか上質に見えます。
オーディオの方は、BOSEサウンドシステムが装備されており、やはりこいつは良いですねえ。特にダッシュボードトップの中央にスピーカーがあると音場が良くなって、臨場感溢れるサウンドで、BOSEサウンドシステムを満喫した前車のRX-8を思い出しました。
さて、シートポジションを調整しますが、これは残念でした。特に角度調整の幅が狭く、また標準的日本人の体形に合わせているため、フットペダルが近すぎます。ちょっと乗っただけで違和感を感じました。
さらに、座面の長さが短いことも助長しています。
天地が浅く、足を投げ出すようなポジションになりますので、上下方向がちょっと窮屈な感じです。
試乗後、左ハンドルに乗ると、はたしてシートの調整幅も広く、ベストポジションがとれましたので、もし買うなら左ハンドルですね。
サンフランシスコやサンノゼから、ナパのワイナリーやモントレーなどへ何度かレンタカーを走らせた頃の記憶をたどれば、アメ車はもっとペダルが奥深くてステアリングを抱え込むようなポジションでしたので、このキャデラックは欧州への輸出を考え、ペダルの位置を少し手前へ出しているのではないでしょうか。
3、走ってみて
さて、いよいよ走り出します。
軽~いステアリングを回して路上に出、アクセルをクッと踏み込みますが、我が320iよりもおっとりした加速です。試乗したのは2.8リッターなので、214psに対して車重は1760kg。
まあ、国産車のようにアクセルを非線形にして、いきなりグワッと加速するよりはよっぽどスムーズに走れます。
混んだ一般道を10kmほど走行しただけなので動力性能は試せませんでしたが、ちょっと低速トルクが細く、飛ばしたいなら3.6リッターでしょう。
一方ステアリングは遊びもなく適度に軽く、メルセデスと近い感じ。昔のアメ車とは、隔世の感ですね。ただ、ウッドとのコンビの革の部分が、まるで韓国車の革のように安っぽく、惜しい点です。
さて、乗り味です。
なんともいえないふんわりした感じ。ゆらゆらして安定しないほどでもなく、ギリギリのところです。市街地を流れに沿ってゆったり流す分には、まず最も安楽な乗り心地。何かに似ているなあ、と考えていて思い出したのが、ゼロクラウン。
おたがい、平均購買層が60歳を超え、何とか若返りを図って大きくモデルチェンジをしたことまで似通っています。
なお、3.6リッターはぐっと締まった足回りだそうですが、左ハンドルの試乗車しかなく、日本で左はやはり怖いので止めておきました。
やはりキャデラック本来の味は、この2.8リッターで出ていると思いますね。
BMW信者の方にはこの乗り味は許容範囲外だと思いますが、小生は充分OKです。もし仮に通勤で毎日混んでる道を乗るなら、会社の帰りに疲れ果てて乗ることを考えると、キャデラックの方が良いですねえ。毎日BMWに乗るのは刺激が強すぎるかもしれません。
4、コストパフォーマンス(CP)
ナビや革内装がついて500万円弱。320iのHi-Lineなら大して変わりませんし、値引きを考えると逆転するかもしれません。そう考えると、CPは良いでしょう。さらに、ドルは80円を切ると言われていますから、ますますお買い得になるのでは。
ただし、BMWも酷いものですが、きっとこのキャデラックの下取り値も二束三文でしょうし、会社自体が危なくてアフターパーツも心配ですから、そこをどう見るかです。
ところで、ディーラーで目に付いたのがこのハマー3。
なんと右ハンドルも出るそうで、興味津々。幅もE90と8cmしか違わず、駐車場所さえあれば、こいつも良いなあ。
あつかましく試乗まではしませんでしたが、運転席に座ると、左ハンドル版はポジションもばっちり。
ウインドウグラスが天地に狭く、穴倉に入った感じで独特。何かに似ているなあと思い出したのが、十数年前に米国で乗った古いカマロかコルベット(車名をよく覚えてない)。雨降る夜に、小さなウインドウグラス越しに小さなワイパーが頼りなげに動いていた記憶があります。
宝くじでも当たったら、セカンドカーに買うかもしれません。
以上、拙い試乗記でした。ヤナセグローバルモーターズ神戸支店さん、有難うございました。
PS.写真は全てGR Digitalです。ちょっとS5Proは持っていけませんでした。