
大きなおもちゃだったRX-8を売り払い、自転車をファーストカーにして無駄をとっぱらった生活に突入したわけなのですが、なにかこう、心の真ん中にぽっかりと大きな穴が開いてしまい、す~す~と風が通り抜ける感じがするのです。
そして3~4日が経ったころ、ふと気づくと車のカタログをめくっていたのです。
そうなんです、明らかに、禁断症状が出ていたのです。
いくら経済的な観点で車を手放すべきだとしても、心が病んでしまっては元も子もありません。
そこで止むを得ず、誠に残念ながら、極めて不本意ではありましたが、再び車を持つことにしたのです。
さあそうなると、何を買うかです。
RX-8を手放す前に、もはや試乗出来ることはあるまいと思って様々な車を試乗しました。
BMW、メルセデス、レクサス、アルファGTなんかも。
その中で、やっぱり身体に一番ピッタリ来たのがBMWだったのです。
BMWを買うとなると、RX-8で実行したオークション代行しかありません。
BMWやメルセデスは新車プレミアムが大きいですから、激安で買えるのです。
その結果、走行距離がたった7kmのHi-Lineパッケージ革張り内装の未使用車を、前回と同じHAA神戸のオークションで入手しました。
その日はラッキーにも6台もの3シリーズの未使用車が出品された為に相場より若干安く落札出来たとはいえ、290万円(消費税抜き)は新車価格の2/3という安さ。もちろん、新車メーカー保証付きですし、自賠責保険料も重量税も全く不要です。
このE90は、RX-8よりはもちろんのこと、E36よりも腰高感を感じ、高速コーナーの凹凸では大きく揺すられました。
しかし、ステアリングへのインフォメーションが豊かで、後輪の安定性も抜群でブレーキも秀逸なので、安心して限界まで突っ込んでいけました。
ハンドルさえしっかり握っておれば大丈夫という安心感が強い車でした。
さすが、ドイツ車という感じですね。
ダコタレザーのシートはRover75以来でしたが、素晴らしいかけ心地。
少し後に傾けてバックレストに体重を分散させたポジションにしておくと、長距離でも全く腰が痛くなりません。
さすが、長い椅子文化の国のシート。コストをひたすらケチった国産車とは大違いでした。
この安心感溢れる運転感覚と秀逸なシートのお陰で、無謀な北海道グランドツーリングに挑戦してみる気になったのです。
北海道が大好きで、それまで何度も訪れていたのですが、やっぱり自分の車で思う存分走ってみたい。
そんな思いが沸々と湧いてきたのです。
過去のブログで詳しく道中を記載していますが、舞鶴から新日本海フェリーに乗って小樽に上陸。
そこから一路南下して函館から津軽海峡フェリーで青森に渡り、大阪まで走って帰るという、無謀なプラン。
8日間、延べ1,949kmのロングツーリングだったのですが、腰痛持ちの身にとって帰宅後のダメージを恐れていましたが、全く問題なし。
E36に較べて明確に静かになっている点も、疲労軽減には効果があると思いますが、なによりも高いスタビリティのおかげでステアリングさえ握っておけばどんな路面でも大丈夫、という絶大なる安心感が大きかったと思います。
E36では散々悩まされた故障ですが、年月と共に品質がどんどん改善し、大きな問題はなし。
リアのウェザーストリップが何度も何度も取れてしまうことと、警告灯(シートベルトとエアバック)が点灯してオーディオが鳴らなくなったことくらい。
ただ、2回目の車検を受けた後になると、イグニッションコイルや集中ドアロックなどが壊れ出しましたが、満足して乗っていました。
しかし、想像だにしていなかった
ブログ「BMW F30 320dMスポ 試乗記 第2弾」の事件がきっかけとなり、大変気に入っていたE90を手放すことになりました。
さて、
ブログ「車乗り換え顛末記(ついに決着!)」に記したように、愛知県までBMWを飛ばして買いに行ったシトロエンC5。
4度目の正直となった念願のハイドロニューマチックなのですが、期待に違わぬその乗り心地には目から鱗が落ちっぱなし。
宇崎竜童さんもハイドロオーナーだったのですが、クルマ大好き人間にとって、ハイドロを経験できて本当に良かったとつくづく思いました。
高速道路などで段差に遭遇した際、上方に突き上げられた車体が強力なダンパーでグワッと強烈に引き戻されるBMWとは大いに異なり、ハイドラクティブⅢプラスのシトロエンC5では、ふた呼吸ほどおいてから、ゆっくり車体が下がってきます。
ちなみに、Rover75はその中間か、ややシトロエン寄りで、ひと呼吸おいてから車体が下がってきます。
そしてBMWとの決定的な違いは、段差に乗り上げた瞬間のショック。
E36はもちろんのこと、E90でもガツンッ!やドスンッ!という直接的なショックが車体を揺さぶりますが、C5ではタンッ!という軽い音を伴い、フワッ!と車体が浮き上がるだけ。
その際に、若干ピッチングも起こすのですが、その程度は軽くて動きもゆったりとしており、何回も繰り返すことはありません。
つまり、“大洋を突き進むクルーザー” あるいは “ウォーターベッド もしくは “空飛ぶ魔法の絨毯”そのものです。
この魔法の乗り心地に一番驚いたのは、山中の改修された道路の下り坂にある、黄色の縞々に舗装された部分を通り過ぎた時。
あの黄色に舗装された部分は盛り上がっているので、普通の車であそこを走るとドンドンと車体が激しく振動しますが、C5ではタンタンと凹凸を踏み越えている音が遠くから聞こえてくるだけで、身体に振動が伝わってこないのです。
まさに空飛ぶ魔法の絨毯。
フランス車は石畳の道路でも乗り心地を良くするために足回りが柔らかいと言いますが、このハイドロは全く異次元の乗り心地で、クルマに乗るのか、シトロエンに乗るのかと言われる所以に納得しました。
一方、
ブログ「ハイドロの車はニュートラルステア」で記したように、ハンドリングも素晴らしくスポーティーで、アルミ鍛造部品を使ったダブルウィッシュボーンという大変コストのかかったサスペンションのまさに面目躍如。
内装は安っぽいですし欠点も多い車でしたが、ボクスター同様に、走る性能に特化した潔いクルマでした。
フランス人は車に荷物をいっぱい積んでバケーションに出かけることに倣い、2度目の北海道グランドツーリングを敢行。
11日間、延べ2,778kmの超ロングツーリングだったのですが、全く疲れが残らず、やはり最上のグランドツーリングカーでした。
フランス車ということで心配していた故障は杞憂に終わり、助手席のモールがベロンと剥がれてきたことくらいで、E36の頃に比べると、欧州車の品質は本当に良くなりました。
ただ、4年目くらいになると、駐車しておくと車高が次第に下がるようになってきました。
自分の家の駐車場ならともかく、駐車場所がマンションの機械式駐車場なので、下血すると後始末が大変なことになります。
そこで手放すことを考え始めたのですが、北海道グランドツーリングで思う存分ハイドロを堪能した満足感があったのかもしれません。