
先週日曜日に試乗車が来るとは聞いていたのですが、海外出張疲れで断念し、本日ようやく試乗することが出来ました。
セールス氏の話によると、先週末の発表展示会で相当受注があったとのこと。
ディーゼルを待ちに待った顧客とともに、ツーリングを待ち望んでいた人も多かった様子。
さて、ディーラーさんから届いたダイレクトメールには、洗車の無料サービスの案内も入っており、金曜の朝に予約して出陣。
どうも私が今週末のこのサービスの第1陣だった様子。
320dの試乗車は黒のMスポ。
こうやって我がE90と比較すると、キドニーグリルの位置が明らかに低く、全幅が広がったわけではないのですが、車体が低くワイドに、凄く精悍に見えますね。
ホント、BMWは新型ほどカッコよく見えます。如何にデザイン力が凄いかが良くわかります。
足元を見ると、Mスポでもオプションとなるメタリックブルーなディスクキャリバーが燦然と輝いております。
タイヤは、POTENZA S001 225/45R18 91Yですから、ちょっとハードな乗り味を予想していました。
早速エンジンをかけ、ボンネットを開けます。
音は紛うかたなきディーゼルのそれ。ガラガラ、ガラガラとそれはもう賑やかです。
でもまあ、E90の4気筒もディーゼルっぽい音ですが。
見るからにエンジン全体が揺れており、ガソリンエンジンのそれより、明らかに大きいですね。
ふとエンジン横を見ると、何やらダンパーのようなものが目に留まりました。

<写真中央の縦方向にあるシルバー色のダンパーがそれ>
まさかパフォーマンスダンパーでもなかろうし、これはきっとエンジンの振動を削減するために、エンジンマウントの一部となるものかと思ったのですが、セールス氏も詳細不明とのこと。
どなたか、ご存じないでしょうか?
【追記】
フランスから並行輸入されたE90 320dに乗っておられる
kuribaaさんより、ステアリングのシャフトだと情報を頂きました。どうも有り難うございました。
さて、ボンネットを閉め、車内に乗り込むと、それはもう何時もの静けさです。
ガソリンエンジンでの騒音と何ら変わりませんが、私にはやっぱりフロアから微振動が感じられました。
5月のタイの520dレポートでも触れましたが、フロアからディーゼル特有の微振動が感じられるのです。
今回は、それを一番気にしていたのですが、やはり感じますね。
神経質な性格なので感じるのかもしれませんが、走行中もやっぱりずっとフロアから感じましたので、この振動を許せるか否かが、320dの評価を大きく左右すると思います。
走行距離は237kmのおろしたて。
タコメータを見ると、5,400rpm位からがレッドゾーンです。
320iでも感じたことですが、スカットルが高くて、フロントウインドウの天地が浅いため、E90よりも囲まれ感が強く感じられ、E36の感覚に近いと感じます。
E90のちょっとのっぺりしたダッシュボードの造形に比べ、抑揚に富んだ立体的な形状なので、なにかしら新しさや新鮮さを強く感じます。このあたりも、デザイン力の凄さですね。
ただし、エアコンのつまみやドアミラーのスイッチが小さくて造りも安っぽく、おまけにクリック感も弱くてグレードダウンしているように感じました。
ステアリングやパドルは立派で、操作時の感触も良いのですが、ちょっと残念です。
こういった直接手に触れるスイッチ類の感触が高級感を醸し出すため、デザイナも相当時間をかけて実験と評価を繰り返しているのですが、コストダウンのために割り切ったのでしょうか。
また、ダッシュボード廻りの表面のシボや材質感も、なんとなく安っぽく感じられます。
ちょっと専門的になりますが、シボは革シボといい、天然の革を模倣します。
単純な模倣でなく、本革よりも革らしく見せるため、表面の光沢やシボの深さを試行錯誤します。
どのようにすれば、高級感が出るかをです。
一般的には、彫を深くし、トップ面の光沢を上げ、色は漆黒度を増して決して赤みを出さない、というデザインが最も高級に見えます。
最近、特にドイツでは環境に優しいことが企業の立場として大変重要な為、再生プラスチックを沢山使っていますから、やはりそのあたりが高級感を出すことに関して物理的に限界があるのかもしれません。
さて、ウダウダとウンチクを並べるより、走り出すことにしましょう。
ガソリンエンジン車の試乗では、やはりガバッと踏み込んでトップエンドの盛り上がりを味わうのですが、ディーゼル車の場合はパートスロットルでのトルクのツキを観察することにします。
乗車時間のほとんどを過ごす街中での乗車ではパートスロットルで加速していきますし、なによりもディーゼルエンジンのメリットは中低回転域の豊富なトルクです。
自動車評論家ですら、ディーゼルエンジンのトップエンドの挙動を書き連ねている輩がいますが、設計者からすれば笑止千万でしょうね。
で、結局どうだったかなのですが、はっきり言って、想像していたような豊富なトルクを感じることはできませんでした。
237kmというおろしたてのエンジンと、走行が23,000kmを超えてすっかり当たりがついた我が愛車の、しかもDSモードでの走行を比較するのには無理があるのかもしれませんが、2,000rpm位までのパートスロットルでは、明確な差を感じませんでした。
でも、普通の流れには楽々ついていきますし、Comfortモードでのパートスロットルでも全く不満はありません。
特に、2,000rpm位になると、何かこう前から引っ張られるような、一種の浮揚感のような感触が味わえますので、これはディーゼルターボ特有の動力特性でしょうか。
さて、試乗コースも花博通りから左折して中央環状に入ります。
ここで一発、Sportモードに切り替え、ぐっと踏み込んでみました。
期待通り、みるみる回転が上がり、速度も上昇します。
加速度は320i並みかそれ以上で、充分なことは間違いありません。
しかし、期待していたような、背中をぐっと押されるような強力なトルク感がありません。
むしろ、やはり前から引っ張られるような感触が強く、ガソリン車の加速感との明確な違いを感じることはできませんでした。
5月の520d乗車時も、想像していたほどトルクがないことを感じていましたが、車重がずいぶん軽い320dでは全く異なるだろうと期待していました。
しかし、結果はほぼ同じような感触で、期待はずれでした。
これは全くエンジンに当たりが付いていないことが原因ではないかと思いますので、数千km以上走行後の個体で再度試してみたいところです。
ただ、もしかすると、提灯記事だらけの雑誌やWebの試乗記に頭が洗脳され、真実より遥かに大きな期待を抱いてしまっているのかもしれません。
ところで、今回試乗して何より驚いたのは、その乗り心地の素晴らしさです。
タイヤは、POTENZA S001 225/45R18 91Yという薄くてファットなランフラットですし、サスペンションはMスポーツです。
E90のMスポは、明らかに日本ではオーバースペックなガチガチな硬さで非実用的なのですが、このF30のMスポは、素晴らしいの一言。
今まで、本当に沢山の車に乗ってきましたが、おそらく一番の乗り心地じゃないでしょうか?
グランツーリスモの登場時から宗旨替えしたかのようなラグジュアリーなサスペンションセッテュングになったBMWですが、先日試乗した320iではノーズダイブすら感じるフラットライドさの無さで、まるでクラウンになったと思いました。
このMスポでは、路面の当たりの柔らかさと突起に当たった時のハーシュネスをほとんど感じないまま、フラットライドは大変良くなっています。
つまり、あくまでしなやかでありながらフラットであるという、まさに理想的な足回りだと言えるでしょう。
エンジンはちょっと期待はずれでしたが、乗り心地にはとにかく驚きました。
恐るべし!BMWの技術力。
さて、その他でちょっと気になったことです。
今どきの流行で、アイドルストップ機構が付いています。
停止してブレーキを踏んでいる間、エンジンが停止します。
ブレーキを離したり、ステアリングを動かしたりするとエンジンが始動しますし、バッテリーの充電状態によっては、直ぐに始動します。
今日の試乗でも、動き出す前にたいていエンジンがかかりました。
で、その試乗するときの振動ですが、これはやっぱり頻繁になると嫌になりますね。
日本車の振動の少なさに比べると、雲泥の差ですが、道路環境と民族性の違いにより、この改善は望むべくもないでしょう。
また、エアコンの効きが悪かったですねえ。
セールス氏が20.5℃に設定していたのですが、風量が1~2段階のままで大変弱く、すっかり背中に汗をかいてしまいました。
E90でもそんな効きが悪いことは無いので、試乗車の不具合なのか、あるいはアイドルストップ機構のせいなのか、定かにはわかりません。
以上、簡単ですが、試乗記とさせて頂きます。
買い替える気になるほど魅力的ではありませんでしたが、客観的に見て、大変良く出来た車だと思いますし、競争力も凄いと思います。
すでに注文が殺到しているようですが、相当売れることは間違いないでしょう。
何方にでも、安心してお奨めできる車です。
ただ個人的に問題なのは、今のE90に不満がないことです。しかも、5年も経っているのに、一向に飽きません。
いつになったら、買い替える気になるような超魅力的な車に出会えるのでしょうか。。。